MAG2 NEWS MENU

韓国の八方塞がり。GSOMIAの次の難題「徴用工問題」の落とし所

GSOMIA失効期限前日の11月22日、まさに土壇場でその破棄の停止を発表した韓国ですが、文在寅政権の「試練」は続くようです。これまでも「韓国に譲歩はNG。尊厳と国益を大きく損なうニッポンの甘い対応」等で、親北としか思えぬ動きを見せる文政権が韓国国民にもたらす「災厄」を指摘してきた津田慶治さんは、自身のメルマガ『国際戦略コラム有料版』で、仮にGSOMIAが継続になったとしても、韓国政府が徴用工問題の対応を誤った場合、韓国は北朝鮮の支配を受けることになると記しています。

香港問題と台湾問題

韓国のGSOMIA破棄回避で、韓国の悲惨な運命は一時的に回避したが、香港問題と台湾問題が今後出てくる。それを検討しよう。

香港人権法と米国株価

NYダウは、11月15日に史上最高値28,004ドルとなったが、11月22日27,875ドルと下落している。PERは17倍台でまだ、割高な水準である。そして、米中通商交渉が11月中に合意できるとしていたが、来年にずれ込む見通しとなり下落したが、米議会上下院で香港人権法が成立しても相場は楽観的な見方が出て11月22日には100ドル以上上昇している。

この香港人権法が米上下院で可決されて、大統領の署名を待つ段階になっている。中国は香港人権法が成立したら、米国に報復的処置を行うので、トランプ大統領は、署名をするかどうか明らかにしていない。しかし、署名をしないと連邦議会の開会中の場合、10日でその法案は、自然成立して法律となる

そして、トランプ大統領が拒否権を発動すると、再度議会で全会一致で再決議される。その上に、共和党での弾劾賛成議員が増えてしまうことになり、弾劾裁判が成立する危険もある。支持者のうち、中国強硬派は支持を止める危険もある。

トランプ大統領が、何をしようと法律は成立してしまう。このため、どちらにしても、今後、中国の米国への報復処置が出てくることになる。

しかし、ペンス副大統領が、弾劾後大統領になると、今より中国に対して強く出ることが予想できるので、中国はトランプ大統領の方が、交渉しやすい。

このため、中国の習近平国家主席は、珍しく「米国が誤った判断をしないよう、戦略的な問題で対話を強化すべきだ」と述べたと新華社は伝えている。また、米国との通商交渉合意について、「貿易戦争を恐れないが、合意に向けて努力したい」と述べ、安易な妥協はしないものの「互いの尊重と平等という基礎のもとに第1段階の合意に向けて努力したい」とした。

しかし、トランプ大統領は、「私は習近平国家主席に、平等な条件での取引はあり得ないと告げた」というので、難しい局面にあることだけは確かである。

それでも、トランプ大統領の元で、中国も香港人権法の成立を阻止したい意向のようである。香港理工大学への警察機動隊の突入は、習近平主席の指示であり、警察隊が阻止されたら、中国人民解放軍のテロ対策特殊部隊を投入する予定であったという。

これに対して、香港司法は「覆面禁止法」を基本法違反であると断定したことで、三権分立の基本法を止めて、香港の「1国2制度を廃止して中国に取り込むようである。

この時には米国の香港人権法が強力な対抗処置になる。しかし、既に四中全会で決定したとも推測できる。ということで、米中通商交渉の合意は、人権・民主化問題などで難しくなってきたように感じる。トランプ大統領は、人権も民主化も意に介さないが、米国全体では、いきり立つことになる。

12月15日に、1,500億ドル分への対中関税UPがあり、電子製品などに課税されることになる。アップルは、大統領にアップル製品への課税を免除するように誓願している。もし、課税されるとアップル株暴落の危険があり、市場全体での楽観論も破壊されるので、株価が全体的にも暴落する危険がある。

ということで、アップル製品への課税は見送りになる方向のようである。というより、12月15日分の課税は、交渉が進展しているという理由で延期する可能性が高い。

というように、株価暴落の危険性が徐々に拡大してきている。中央銀行バブル維持は、徐々に脆弱化してきて、維持コストが上がり始めている。

トランプ大統領は、米中通商交渉合意ができないときのために、株価維持で、FRBに対して、量的緩和のステルスQE4(POMO)を2月末まで行わせ、3回の利下げを行わせ、その上に、パウエルFRB議長にマイナス金利を要求している。景気後退時のFRBの政策手段を奪っている。その上に、来年は、景気維持のために中間層への大型減税をすると述べている。来年は、米国の赤字が120兆円にもなる可能性が高い。MMT理論で合理化するようであるが、あまりにも強引である。

一方、中国市場で、米企業の自動車も売れなくなり、トヨタが自動車販売台数で8%UPで2位になり、GMは15%減と落ちている。徐々に、米中間での経済分離が進んでいる。米国製造業の景気後退は、明らかになっているが、非製造業の景気は良いが、徐々に不景気の兆候も見え始めている。

中国の強権的な香港への処置を見て、欧州、日本、米国、アジアは再度、対中政策で共同歩調を取るのが重要なことになるが、この視点と違う考え方をトランプ大統領がするので、皆が共同歩調を取れない。特にアジアでは、中国の影響が強いために、米国との同盟関係を危険視している。それは米国と同盟関係にあったクルド人勢力を裏切る米トランプ大統領が信用できないからである。

そのため、強権的な中露の時代は、続くことになる。早く、トランプ大統領を止めさせないと、中国への対抗処置が取れない絶望感も増している。中国の強権的な外交が強くなると、日本にも大きな恐怖が押し寄せることになるし、東アジア情勢は緊張した状態になる。

日本の株価

日経平均株価は、11月11日に年初来高値23,520円になったが、以後米中合意に疑念が出て下落して、11月21日に22,726円と、23,000円台を割り込む場面もあった。

しかし、市場は楽観的な見方に変化して、11月22日23,112円となっている。まだ、日本株が割安に見えることで、海外投資家が押し寄せていることには変わらない。PER=14倍程度になり、割高感も出てきたが、米国のPER=17倍より低いので割安感がある。しかし、日本の景気動向は非常に弱くなっているので、景気回復のために補正予算10兆円という声も出てきた。

米国の相場に波乱が出ない限り、海外投資家は、割安な日本株を買うことになるとみるが、その米国市場の株価維持に脆弱感が出てきたように感じるし、その上に、日本の景気後退が重なると、何が起きるのであろうか?

非常に危険な状況になってきたように感じるが、多くの株式の評論家は、まだ強気を維持している。そろそろ、見方を変えるときではないかと見るがどうであろうか?

韓国のGSOMIA破棄撤回

韓国は、11月22日18時に日本との間のGSOMIA軍事情報協定の破棄通知を撤回すると日本に連絡してきた。このコラムでは、在韓米軍撤退の危険があると述べてきた。

事実、エスパー米国防長官は在韓米軍縮小の可能性を尋ねる質問に「我々がするかしないか分からないことについて予測したり推測したりしない」とし、場合によっては縮小することもあると言ったようなものである。

これは「在韓米軍の撤収はあり得ない」という米国の従来の立場とは完全に違うことになり、1個旅団の撤退との噂も流れ、その上に、米国上院外交委員会のジェームス・リッシュ委員長が「GOSOMIA終了は韓国に駐留した米軍の危険を増大させて韓米同盟を損なわせる」と在韓米軍の意見を代弁し、米上院でGSOMIA延長要求決議を全会一致で可決されたことで、韓国はGSOMIA破棄撤回せざるを得ないことになったようだ。

韓国には、国連軍、米韓連合軍、在韓米軍の3つの米軍隊が居て、この内、米韓連合軍のトップに韓国の将軍がなった。しかし、全体指揮は、依然、国連軍司令長官が持ち、この司令長官は米将軍である。この将軍がGSOMIA破棄であるなら撤退するしかないと見ていたのであろう。

トランプ大統領の関心は、在韓米軍経費の50億ドルの韓国分担金しかなく、GSOMIA破棄の影響を考えることもないから、文大統領は、強気で行動してきたが、米軍幹部と米上院が戦えないと最後になって行動した結果である。

朝鮮半島有事には、日本の自衛隊が兵站を担うことになっているが、韓国がGSOMIA破棄で、日本との関係を切ると、在韓米軍への兵站ができななくなり、国連軍などの部隊維持ができなくなる。

このため、在韓米軍維持には、日本の自衛隊が必要なのである。この部分を韓国は無視して、歴代日本叩きを行っていた。とうとう、堪忍袋の緒を切った日本に対して米国も同情的になっていた。

しかし、もし米軍が韓国からいなくなったら、北朝鮮は韓国に脅しを掛けて、支配権を奪い、韓国から上納金を大量にせしめることになる。そして徐々に、全土を金王朝支配にすることは確実である。

このため、韓国が北朝鮮と朝鮮統一する上で、金王朝にしないためには、在韓米軍の存在が重要なのである。この部分は、いくら親北朝鮮の文政権でもわかるはずであり、とうとう、在韓米軍維持のためにGSOMIA破棄を諦めざるを得ないことになったのだ。

しかし、徴用工賠償請求で日本企業の資産を韓国が売却すると日本も対抗処置を取る必要になる。このため、日韓関係は破局を迎える可能性もあり、結局、最後には北朝鮮の支配を韓国は受けることになり、多数の移民が日本に来ることになる。少しだけ延期したのである。次の焦点は、徴用工賠償請求の行方になる。

そして、韓国国民が日本の良さに気が付くのは、独裁金王朝の北朝鮮の厳しい支配下で、多くの命を失う事態になってからであろうと、絶望的に思ってしまうのである。

台湾問題

中国の習近平国家主席は、BRICS首脳会議でブラジル訪問時「台湾に1国2制度を引く」と発言した。香港は1国2制度を廃止して中国共産党支配体制にして、台湾を「1国2制度」にするというのだ。

台湾の蔡英文総統の独立志向が強いと見て、習主席は台湾を統一する方向で、軍を動かすことを覚悟した可能性が高い。このため、国産空母を台湾海峡に入れたり、爆撃機を国境近くに飛ばしたりなどの軍事的な圧力を台湾にかけ始めている

1月11日に台湾総統選挙があるが、香港の民主主義を止め共産党支配下に置くなどの中国の行為で、独立志向が強く出て、蔡英文総統の当選が確実視されている。このため、サイバー攻撃など中国の攻撃が続くことになると見る。ここでも米中対決は続くことになる。そして、中国が台湾に出てくるなら、台湾国民も日本への移住を考える可能性が高い

香港市民は、香港の自由を奪われて、台湾に移住する人が多いが、そこも中国から支配される危険性があり、最終的には日本への移住となる可能性も出ている。

香港の金融機関、ヘッジファンドなどに対して、東京へ来ないかと小池都知事を筆頭に都職員が勧誘しているというが、シンガポールに行くか東京に行くかは、その優遇処置いかんであると思う。日本に来るように小池都知事は、頑張ってほしいものである。

日本が安住の地

日本は古代から、中国や近隣地域の紛争や王朝滅亡時、その亡命先であったが、今後は、中国や北朝鮮などの独裁主義国からの攻撃で香港、台湾、韓国などの自由主義国から、多くの自由を愛する人たちが日本に移住してくる可能性が高いことになる。

今までも、日本の縄文文化に新しい文化を足してきたのは、この周辺諸国から来た知的水準の高い移民たちである。

昔は江南から呉の王族が呉服やコメを日本にもたらし、百済・新羅から秦氏や百済王族・貴族が土木建築技術、絹織物や仏教・書物をもたらし、高句麗から王族が開墾技術を持って、埼玉県の高麗に来たし、南宋の王族・貴族たちが鎌倉・京都五山文化として書院造り、精進料理やわび・さびの芸術を、日本にもたらした。このように、日本文化の多くは移民と共に入ってきたのである。

そして今、日本が人口減少時に、再度、中国の圧力で東アジアから多数の移民が来る可能性が出てきた。昔の状況と同じような時代背景になってきたようである。

このように移民たちが来るための安住の地にするためには、日本は、中国から攻めることができないような安全保障上の守りを確実にしておくことであり、もう1つが、移民受け入れ体制を整えることである。憲法改正も必要であり、軍事費増額も必要であろうと思うが、どうであろうか?

さあ、どうなりますか?

image by: 대한민국 청와대 - Home | Facebook

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け