先日厚労省が発表した2018年の出生数が過去最小を更新するなど、流れの止む気配のない少子化。小・中・高校生を主な顧客ターゲットとしている企業にとってはまさに死活問題ですが、このまま手をこまねいているしかないのでしょうか。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では経営コンサルタントとして活躍中の梅本泰則さんが、少子化時代における企業の対応策について考察しています。
少子化への対応策はあるか
「小学校がどんどんと無くなっていく」「地域の人口が減ってしまって商売が大変だ」と嘆いている地方の経営者にお会いしました。
人口減少の問題は、人口の少ない地方へ行くほど深刻です。確かに、日本の人口は確実に減り続けています。人口問題研究所によれば、2019年の1億2,600万人から2030年には1億2,000万人となる予測です。しかも、0歳~14歳の人口は、1,530万人(2019年)から1,320万人(2030年)にまで減るかもしれません。
多くのスポーツショップは小・中・高校生をお客さまにしていますからこの年齢の人口が減るのは商売にとって死活問題です。実際、すでに学校の数も学生も減っていますので、先の経営者の嘆きは当然だと言えます。
では、この問題、何か解決する手立てはあるでしょうか。大丈夫、あります。その方法は、簡単にいえば戦略を変えることです。どういうことでしょう。
今までと同じことを続けていけば、きっと商売はじり貧になっていきます。現状の商品やサービスを買っていただけるお客様が減っていくからです。それならば、今までとは違ったことを行えばどうでしょう。商売が伸びる可能性があります。
「そんな方法が分かれば苦労はしない」という声が聞こえてきそうです。そこで、私なりのアイデアをご披露しましょう。
さきほど戦略を変えると言いました。どのように戦略を変えればいいでしょう。その方法は3つあります。
- 顧客ターゲットを広げる
- ニーズをとらえ、商品/サービスを広げる
- 提供ルートを広げる
ということです。
戦略を変える
順番に説明します。まず「顧客ターゲットを広げる」です。
確かに学生さんの数は減っています。しかも、スポーツの部活が減少しているのも現実です。その一方で、国のスポーツ政策は地方自治体のスポーツ施設を大幅に改修しようとしています。そのスポーツ施設は、今までのような味気ない体育館やグランドではありません。大勢の観客が楽しめる施設を目指しています。そうなれば、その施設が部活に代わる受け皿になるでしょう。
それに伴って、民間のスポーツ指導ビジネスが盛んになる可能性もあります。そのとき、地域のスポーツチームを応援する人たちが新しい顧客となることはないでしょうか。いわゆる「応援者」や「観客」という顧客です。
またさらには、国はスポーツ指導者の育成に力を入れていきます。スポーツ理論や技術をしっかりと学んだ指導者が地域に増えていくことになるでしょう。すると、この「新しい指導者」もスポーツショップの「新しい顧客」です。
また、国は「スポーツツーリズム」に力を入れています。地方になるほど、スポーツツーリズムに適した環境です。これによって、スポーツツーリストが「新しい顧客」になります。
つまり、「顧客を広げる」というのは、国のスポーツ施策によって生まれる観客や指導者や旅行者を新しい顧客としてとらえてはどうかということです。今からその準備をしても、早すぎることはないでしょう。
次に「ニーズをとらえ、商品/サービスを広げる」を考えてみます。
いま「顧客」を考えました。今までの顧客と新しい顧客がスポーツに求めている事は何でしょう。例えば、
- 技術が上達する「喜び」
- 仲間とつながる「絆」
- スポーツで味わう「感動」
といったことが考えられます。これが「ニーズ」です。
商品・サービスと提供法
この「ニーズ」を満たす商品やサービスを考えましょう。例えば、スポーツ選手の技術が上達するための新しい商品やサービスはないでしょうか。市場にはすでに「センシング」や「トラッキング」を活用したスポーツテクノロジー商品が紹介されています。選手の「コンディション管理」に役立つITソフトやウエアも最近では珍しくありません。こうした新しい技術やソフトの扱いを広げることです。
そして、選手やチームの動きを分析する「スポーツアナリスト」も生まれています。そのアナリストとタイアップして、地域のスポーツチームに「戦術分析サービス」が提供できないでしょうか。
また、スポーツ指導者の育成を行うことそのものをビジネスにできないでしょうか。例えば、「スポーツ指導者養成塾」の運営です。さらには、スポーツ選手のための「メンタル強化クリニック」なども良いかもしれません。
もちろん、チームや選手を応援するためのユニフォームを提供したり、ファンクラブを作って運営することも良いです。それによって「絆」や「感動」を共有できます。
つまり、顧客のニーズを満たすことのできる商品やサービスを考えて、取り扱いを広げることです。
さて、3つ目の「提供ルートを広げる」に行きましょう。上の2つで、顧客と提供商品/サービスを広げました。それらの顧客に対して、商品/サービスをどのように提供していけばいいでしょう。
もちろん店頭でも可能ですが、カギは「ネットの活用」です。いえ、ネットショップを出店することではありません。そうではなくて、提供/サービスの専用サイトを作ることです。
例えば「○○地区スポーツ応援サイト」とか、「スポーツ指導者が集まる情報交換サイト」とか、「スポーツ選手のための最新IT技術紹介サイト」とか。それらに興味のある顧客に集まってもらいます。
そこから商品/サービス提供につなげるわけですが、それにはデジタルマーケティングを行うことが重要です。そして、そのためにデジタルマーケティングに強いスタッフが必要になります。そうすれば、きっと提供ルートが広がるでしょう。
いかがでしょうか。少子化への対策をいくつか考えてみました。少しはヒントになったでしょうか。
■今日のツボ■
- 今までの商売のやり方を続けても、じり貧になる
- 少子化に対応するには、戦略を変えることである
- 「顧客」「商品/サービス」「提供ルート」を広げると良い
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