いじめによる不登校を裏付ける診断書を握り潰そうとした校長や、いじめ被害生徒が訴えた暴行内容を意図的に公文書に虚偽記載した警察署…。本来、生徒や市民を救うべき公的機関が、隠蔽工作を働く事例が後を絶ちません。なぜこのようなことが平然とまかり通ってしまうのでしょうか。今回の無料メルマガ『いじめから子どもを守ろう!ネットワーク』では、いじめ事実の組織的隠蔽に関する2つの事例を紹介、その呆れた実態を批判しています。
学校に付き添いました
先日、いじめの相談者と学校を訪れました。その子は、6月から不登校になっていて、もう既に11月の末。保護者からは、「転校を認めて欲しい」と学校、教育委員会に何度も申し出ていたのですが、そのたびに「転校の前例がないので認められない。お子さんがどうしたら学校に来られるようになるか、学校と話して欲しい」との回答でした。どうしようもなくなって、こちらにご相談いただきました。
教育委員会は、学校との話し合いに立ち会うつもりもありませんでしたので、お母さんと相談し、私たちの方から教育委員会に直接電話をし、「もう既に重大事態である。診断書も出ている。放置しているのは学校と教育委員会ではありませんか」。
結局、当日は、学校、教育委員会、保護者、そして私をいれての話し合いを開催することができました。保護者としては「転校を認めて欲しい」ということなのですが、相変わらず学校は「前回、ご質問いただいたいじめの原因と学校の対処について説明します」との言葉で始まりました。このことは保護者から見れば、学校から何度も聞かされていた話の繰り返しでしかありません。
保護者と私からは、「電話でも話しているように、30日以上休んでいるし、医師の診断もある。重大事態だとわかっていますか」「首長への報告義務もありますし、第三者による調査委員会も開かれて当然の案件である」「本人は、今の学校は怖い、行ったらいじめられると登校を拒否している」「本人の心身の症状は改善されていない」「文科省からの通知は、いじめによる転校には対応すべきであること」「重大事態は、保護者からの訴えがあれば『疑い』の段階でも、重大事態として扱うこととなっていることはご存じですよね」「したがって、早急に転校を認めて欲しい」との申し出をすると伴に、回答の期限を決め、連絡をするように要請いたしました。
話し合いの結果、保護者の要望である「転校」が認められる方向で進んだのですが、その中で、お母さんが「診断書、何通もだしましたよね」と話したところ、校長は「私は受け取っておりませんし、見てもおりません」とのたまわったのです。驚きました。さらに教頭も「記憶にありませんが」と話し始めました。お母さんは、担任、教頭に手渡しをし、この話し合いの前には教育委員会にも送っていたのにもかかわらずです。このことを指摘された後、校長も教頭も、まったく黙ってしまいました。ここまでくると意図的な「隠蔽」そのものです。ここまで隠蔽する学校が、いまだにあることが残念です。
さらに、こんなニュースも流れました。元、埼玉県川口市立中の男子生徒(現在は高校生)が、損害賠償を求めて裁判を起こしています。その裁判で、市がさいたま地裁に証拠として提出した武南署の捜査関連書面に「虚偽の記載」があったことが判明したのです。同署と埼玉県警本部少年課、文書課の担当者らは2日、母親と面談し、虚偽を認めて謝罪し、訂正を約束しています。
元生徒はサッカー部に所属し、部活動中に他の部員に引きずられるなどのいじめを受けて、不登校になりました。市側が今年の9月の裁判で提出した県警の内部文書には、「元生徒が、2回足蹴りしていた事実があり、原因を作ったのは被害生徒自身と考えられる」と記載されていたのです。警察署は「記載者の主観が入ってしまった」との説明していると言うのです。
結局、警察が「いじめられた生徒に原因ある」と言っていたのです。しかも、母親にはまったく別の内容で説明していたことがわかっています。これは「故意」、つまり意図的に行われた報告といえます。警察が加害者側、あるいは学校の意向に沿って、つまり「忖度(そんたく)」して、虚偽の公文書を作成したと言えます。
私たち一般の人間は、警察が真実を明らかにしてくれるということを、当然、期待してしまいます。だからこそ、「警察」には権威や権力があるのです。そこが虚偽報告をするなどあってはなりません。それでは、いじめ被害者やその家族が助けを求めることができなくなります。当然、虚偽報告をした担当者や責任者は、懲戒処分がくだされるべきです。社会を不安定にさせるようなことを、そのままにしてはなりません。
本来、学校が「隠蔽する」、あるいは「嘘を付く」、「証拠を破棄する」などあってはなりませんし、ましてや「警察」が加担するなど「もってのほか」としか言いようがありません。
まもなく今学期も終わります。学年末になってからのいじめは、学校側の対応がにぶる傾向があります。何か、気になることがございましたら、ご遠慮無くご相談ください。
一般財団法人 いじめから子供を守ろうネットワーク
代表 井澤一明
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