2025年は「50歳以上」「黒字リストラ」がトレンドワードになり、明治製菓の希望退職募集が大きな話題となりました。しかし、暗いニュースばかりではありません。50代で転職後に年収が増加した人の割合は42%に達し、45〜60歳の転職者数は過去最高を記録。ベテラン社員の経験知を評価し、積極的に採用する企業がじわじわと増えているのです。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では、著者で健康社会学者である河合薫さんが、「超中年社会」を生きる50代以上の可能性と、2026年への期待を語っています。
2025年は「ミドル・シニアの分岐点」
また、一年が終わります。あっという間です。師走感がないままに師走で少々焦ります。
2025年を振り返ってみようと思うのですが、今年はさまざまな問題の分岐点になったように思います。その中の一つがミドル・シニア社員の「働かせ方」です。
コロナ禍以降、広がっていた50歳以上を対象にした「黒字リストラ=希望退職」は相変わらずでしたし、とりわけ注目を集めたのが「明治製菓」でした。2025年3月期連結決算で847億200万円の黒字をあげたにもかかわらず明治ホールディングスは、事業子会社の明治で満50歳以上の管理職、および総合職などを対象とした人数を定めない「ネクストキャリア特別支援施策」を発表。「50歳以上」「黒字」はトレンドワードになるほどで、私もウェブメディアに呼ばれ、解説やらコメントやらを求められました。
わずかに見えた、小さな「光」
しかし、今年は「黒」ばかりじゃありませんでした。私が注目したのは小さな「光」が見えたことです。50歳、60歳のベテラン社員の経験知を評価し、積極的に採用する企業がじわじわと、そして、ゆっくりとではありますが、増えてきたのです。
エン(旧エン・ジャパン)の調査では、2024年に50代で転職後に年収が増加した人の割合は42%に達し、19年と比べて10ポイントも上昇。ある民間企業の分析では、50代後半〜60代前半の男性社員の場合、大企業から中小企業に好待遇で迎えられるケースが多いこともわかりました。
また、大手転職サービス「doda」によると、2025年4〜9月期の45〜60歳の転職者数は、19年の2.49倍と過去最高を記録。特に50代前半の転職が目立ち平均年収も上昇傾向が認められました。
捨てる神あれば拾う神あり、です。
日本は「超中年社会」であるという現実
そもそも「人手不足」と言いながら、50歳になった途端「在庫一掃セール」にかけるのはおかしい。「我が社の大切なリソース」であるベテラン社員の暗黙知を「用無し扱い」するのは愚策以外のなにものでもない。
しかも、日本は「超高齢社会」ではなく、「超中年社会」です。拙著「『老害』と言われたくない私たち」の5章で詳しく説明したように令和を生きる40歳以上は、全人口の6割を占めます。50歳以上にしぼっても5割で、高度成長期社会の主役だった49歳までの「働き盛り」とほぼ同じです。
つまり、50歳になってやっと、本当にやっと人生の佳境に入る時代なのにその「社会の主役」の力を信じないで、企業の発展などあるわけないのです。
2026年は「飛躍の年」になる
むろん「社会の主役」たちが、自分が築き上げた「心の土台」を信じ、自分の価値の最適化をはかる必要があります。是非とも、来年は一歩踏み出してほしい。燻ってる気持ちを前に進むエネルギーに転換してほしい。私も同年代の一人として、もうひとふんばり、いや3ふんばりくらいがんばります。
ちなみに、2026年は六十干支で「丙午(ひのえ・うま)」の年。火のエネルギーが重なり「情熱と勢い、大きな飛躍のチャンス」が期待され、努力が実を結ぶ年だとか。
「威厳なし、拠り所なし、小銭だけはある!新世代型中高年」が輝く年になりますように!
みなさんのご意見、この一年の思い出など、お聞かせください。
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