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東大は違法団体?ニューヨーク・タイムズが東大を大批判した理由

我が国の「最高学府のトップ」は、ジェンダーフリーの潮流に逆行しているようです。今月9日、米有力紙「ニューヨーク・タイムス」は、女子学生比率が20%に満たないとして東京大学を批判する記事を大々的に掲載。これを受け、米国在住の作家で東大卒の冷泉彰彦さんは今回、自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』に、東大の状況を改善させるための「17の提言」を記しています。

女子学生比率20%以下、こうなると東大は違法団体

12月9日に「ニューヨーク・タイムス(NYT)」紙版は東大の女子学生比率が20%に満たないことを痛烈に批判する記事を掲載しました。A10面のほぼ全面を使っての記事ですから、何とも恥ずかしい限りです。大学の恥だけでなく、国の恥だと思います。上野千鶴子名誉教授が入学式で東大の女性差別体質を告発するスピーチを行ってから8ヶ月が経ちましたが、結局東大は変わっていないということだと思います。

この報道ですが、「外圧は不快」だなどとヘソを曲げずに、とにかく東大としてはストレートに受け止めて欲しいと思います。

では、東大はどうしたらいいのでしょう?東大には「男女共同参画室」というのがあるようですが、メッセージ発信はほとんどされておらず、特に「変わらなくてはならないのは男性という声が全く見られないのは本当にトホホとしか言いようがありません。と言いますか、共同参画の室長が男性副学長とはヤル気ゼロと言っているようなものです。

こうなったら徹底的な議論が必要と思います。以降は、実務的なものから過激なものまで様々なアイディアを箇条書きしたものです。

1.もう付ける薬はないということで放置するという考え方があります。優秀な女性は、私学か東北か、あるいは東工+一橋、更にはアイビー、南洋、精華などに行ってもらって、そこで奮起してもらうということです。学術の分野でもビジネスの分野でも、あるいは政治や法曹の世界でも、打倒東大の意気込みで戦って、本当に東大をコテンパンにやっつけてしまえばいいという考え方です。

2.それにしても、21世紀に入ってもう20年になろうというのに、20%というのは信じられません。正確にはこうなると、東京大学という団体は「特定男女差別指定団体」に指定して、とにかく違法性、反社会性を抱えた団体だということを国際社会として認識できるようにしたらいいと思います。

3.違法団体指定に伴うペナルティですが、例えば東大出身の男性は就職や院進の際に特別に誓約書を書かせ、宣誓させるというのはどうでしょう。「ジェンダー差別をしない、セクハラをしない」ということを宣誓させて徹底するのです。

4.新入生に対して徹底したカウンセリングとスクーリングを行うというのはどうでしょう。男女ともに、世界の、例えば欧米とか中南米、アジア圏の女性研究者やビジネスウーマンに来てもらって徹底的に意識教育を施すのです。

5.新聞やネットニュースなども、徹底して東大内のジェンダー差別について報道したらいいと思います。「東大のサークルが東大の女子学生を拒否した」という種類のニュースは、動物園にパンダが来たとか、電車がオーバーランしたという種類のニュース同様に、徹底して報じ続けるのです。

6.小学校入試などと同様に、入学試験の際に親や保護者の面接を行うというのはどうでしょう。そこに「ウチの嫁には家に入ってもらいたい」とか「息子を立てるような嫁がいい」という種類の発言があったら、その子供も不合格にするのです。勿論、親も含めて塾で想定問答をトレーニングしてくると思いますが、そのトレーニングを通じて「同権」ということを骨の髄まで叩き込んでもらえば、まあ多少の効果はあるのではと思います。

7.そもそも「共同参画室女子中高生へなどというメッセージ発信をしているのがピンボケです。男子に向けて、異性との共同作業経験が少ない人間、消極的な人間は「要りません。落とします」というメッセージを出すべきでしょう。多少論点がズレますが、女子中学生も啓蒙対象にしているというのは、一貫校がプレップ化している首都圏の発想です。地方蔑視であり、不愉快です。

8.NYT同様に、ガイアツを継続的にかけるというのはどうでしょう?例えば交換留学先となる世界中の大学から「改善が見られないと枠が危ない」と脅してもらうとか。

9.いわゆる世界ランキングの種類の調査レポートで、東大の場合は「異常な男女差別があり、改善が見られないということを特記してもらう、これは結構効くのではと思います。

10.入試の数値規制(アファーマティブ・アクション)が難しいのであれば、せめて教官は徹底して男女同数にするというのは本気になればできるはずです。

11.差別体質を後押ししている背景には、男子校出身者が多いという問題があると思います。そこで、指定推薦枠を、現在は「男子校1、女子校1、共学校2」としているのを、「男子校0、女子校2、共学校4」ぐらいにしてはどうでしょうか?男子校出身で校長推薦になるような「優等生」は少なくとも差別的な人物ではないかもしれませんが、改善へ向かって動くような資質は期待できません。ゼロでいいと思います。

12.現在、産学連携(本当は産学共同でいいのですが、昔これを批判した全共闘に仁義を切って、わざわざ産学連携と言い換えているのは気に入りません)でかなり民間から東大に寄付が入っているわけです。これも、東大が違法団体となれば止まる危険があるわけで、強烈な薬になるのではないでしょうか。どう考えても、女性比率20%というのは「中国人お断りと同じぐらい反社会的で罪深いと思うからです。

13.団塊世代が健在であるうちに、東大全共闘の幹部に集まってもらって最後の自己批判」をしてもらう必要があります。「自分たちは医局近代化、講座制度廃止などの意味のある改革に集中できず、共産革命とかアジア・アフリカとの格差懺悔などといった誇大妄想に至り、東京大学にとって必要な改革の足を引っ張りました。最大の汚点は、男女差別に対して自分たちが無自覚・無理解であったことです。東大解体を叫びながら、解体すべき最大の問題を見抜けなかったのです。女性比率20%という惨状の責任の一端は自分たちにあります」というような「自己批判」をして「東大全共闘ここに解散」という宣言をしたら、それなりに話題になり、多少の罪滅ぼしににはなるのではないでしょうか。せっかくですから安田講堂の時計台から放送したらいいと思います。そのぐらいやらないで、あの世へ行かれては本当にたまりません。

14.例えばですが、ミス東大とかミスター東大とかいう馬鹿なイベントは、機動隊導入してでも排除すべきです。その際に全共闘の老兵の皆さんが、機動隊と一緒に仲直りして戦ったらこれも罪滅ぼしになるのではないでしょうか。機動隊云々は冗談ですが、とにかくミスコンというのは止めて欲しいです。トランプじゃあるまいし

15.その全共闘運動の時代に、一部の教官が真剣に考えた案として「学部廃止」という案がありました。つまり、東大は大学院大学にして、1年生から4年生の「学部」は廃止するというものです。当時は、エリート意識の高い保守的な若者ばかり輩出するぐらいなら、研究機関に特化すべきという議論でした。それはそれで傾聴に値する考えですが、仮に、この女性比率20%という状態が改善しないのであれば、この問題も含めて「学部廃止」というのを真剣に考えないといけません。

16.その上でどうしても学部を存続させたいのであれば、女子大と合併するという手段もあります。例えばですが、お茶大とか、私学でも構いません。強引な対策ですが、昔ハーバードが共学化を進める過程で、ラドクリフという女子大と合併したことを考えると、そんなに不自然でもないように思います。

17.本当は、東大だけの問題でもないわけで、リケジョへの差別とか、「日本人の男性には、自分より優秀な理系女子と対等に関係を結べるような度量は期待できないし、期待しないのが『おりこう』な女性の『たしなみ』」といったカルチャーがあるわけで、これは日本社会全体の問題だと思います。ですから、学外へ向けて議論を開いていく必要も大きいと思います。

とにかく共同参画室なる組織を作って、その親分が男性副学長、やっていることは「女子中高生」に対して「大丈夫だからおいで」って、一体何なのでしょう?少なくとも上野先生は「大丈夫じゃない」という警告を発したわけで、その「大丈夫じゃない状況をどうやって変えるのかが問われているのです。

そもそもメッセージ性の高い「共同参画」のパンフを、「梁プランニング」という業者さんに丸投げって一体…?業者さんが悪いわけではないんです。業者さんだったら発注者の「身を切るような改革」にコミットできるはずがないからダメだと申し上げたいのです。それはともかく、表紙に登場している学生が、迷彩柄の短パンってどういうことなんでしょうか?

東大は、秋入学に失敗した前科があるのですから、今回この「NYTの20%問題告発への対応で失敗したら、世界ランキングのベスト100から転落すると覚悟したほうが良いと思います。

image by: EQRoy / Shutterstock.com

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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