中国は自ら「孤立化」の道を選択したのでしょうか。先日、英有力紙が「中国政府が政府機関からの外国製PCの排除を指示した」と報道しましたが、「すべての部品を内製化することは無理」とするのは台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』にその理由を記すとともに、政治外交において窮地に立たされつつある習近平政権が、「鎖国回帰」に舵を切り直したと分析しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年12月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【中国】竹のカーテンを引き始めた中国
イギリスのフィナンシャルタイムズ(FT)は、中国政府が公的機関や政府機関に対して、外国製のコンピュータやソフトウェアを3年以内に国産に置き換えるように指示したと報じました。
FTが専門家の話として伝えたところによれば、国産への置き換えが必要になる機器は2,000~3,000万台にのぼるそうです。
明らかにアメリカ市場からのファーウェイ排除を意識した動きですが、これでますます中国は世界の生産ラインから外れて孤立することになります。
最近は中国も自前のCPUやソフトウエアを作れるようになったといいますが、中国の独自仕様の機器をインターネットで世界とつなげるつもりなのでしょうか。もともとパソコンの世界はビル・ゲイツやスティーブジョブスがヒッピーだったように、オープンな環境を重んじます。
インターネットも、規制のない自由さが普及の原動力となったわけですが、中国政府に支配された、見たいものもろくに見られないインターネットで、中国のテクノロジーが発展するはずがありません。
現在、中国のみならず世界のパソコンやスマホメーカーでも、自社一社だけですべての部品を内製化することは無理です。
市場調査会社のIC Insightsによれば、中国の半導体ICの内製化は率は2012年に12.6%でしたが、そこから5年が経過した2018年でも15.3%で、3%しか伸びなかったと報じています。
この分で行くと、2023年に中国の需要を20.5%に高めても、世界の半導体IC市場も大きくなるため、世界で見た中国生産のICは9.2%にしかならず、「中国製造2025」(2025年までに中国が製造大国になるというスローガン)で掲げている2020年に内製化40%、2025年に70%などという目標には、到底届かないとしています。
「中国のフリコ」といわれるように、中国はよく左右に大きく振れ動きます。毛沢東時代に自力更生がうまくいかなくなると、トウ小平時代には180度国策を変えて「他力本願」に走り、「竹のカーテン」を開けてみると、世界最大の貿易国家になり、習近平の時代には、これまたもとの中国になって、鎖国時代へと先祖返りとなります。
外国産PC締め出し作は、まさしく鎖国回帰のシンボルです。新たに「竹のカーテン」を引き直そうということなのです。
「中国製造2025」や「一帯一路」などについて、最近、あまり習近平は口にしなくなりましたが、政治外交までうまくいかなくなった証明です。香港の反中デモの長期化もそのひとつでしょう。
20世紀に入ってから、中国は激動に次ぐ激動が起こりました。国体変更だけでも、辛亥革命をきっかけに、半世紀以内に帝国から民国、そして人民共和国へと変わりました。
しかも、毛沢東とトウ小平の時代ではやはり国体が異なります。毛沢東時代の人民共和国は左の全体主義としての社会主義社会建設でしたが、トウ小平以後は右の全体主義であるファシズムとなり、赤い資本主義とまで言われます。
習近平時代はどう見ても「伝統への回帰」という一言につきます。「中華民族の偉大なる復興」というチャイナ・ドリームが、まさしくそのシンボルです。
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