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ソレイマニ司令官の殺害が金正恩政権への決定的警告と言えるワケ

昨年12月28日から4日間にわたり開催された「朝鮮労働党中央委員会総会」で、金正恩委員長は兵器開発や核実験に関して強硬な発言を繰り返しました。これを「弱者の恫喝」ですまされず、北朝鮮は正念場を迎えたと断じるのは、メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で、北朝鮮研究の第一人者の宮塚利雄さんです。宮塚さんは、米国がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を空爆により殺害したのは、北朝鮮への痛烈な警告となっていると解説します。

ソレイマニ司令官の空爆殺害で金正恩政権は正念場

ことわざに「Better lean peace than fat victory(百戦百勝は善の善なるものにあらず)」がある。直訳すれば「太った戦勝よりもやせた平和の方がよい」ということであるが、北朝鮮の金正恩政権に与えたい言葉である。

北朝鮮は金正恩朝鮮労働党委員長の指導の下で昨年12月28日に「朝鮮労働党中央委員会総会」を4日間にわたり開催した。総会では「党の建設と活動、国家と国防建設における重大な問題」を討議するものと伝えられていた。4日間にわたる討議で、金正恩委員長は「北朝鮮が先行して非核化措置を講じたのにもかかわらず米国は相応の措置を果たしていない」と非難したうえで、「約束に一方的に縛られる根拠はなくなった」と述べ、2018年4月に中止を決めた核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の再開を示唆した。

金正恩は、米国の核の脅威が高まる中、「未来の安全を放棄できない」と述べ、「世界は遠からず新たな戦略兵器を目撃することになる」と表明し、「敵視政策を最後まで追求するならば、朝鮮半島の非核化は永遠にない」と強調し、米国が制裁解除や軍事演習中止などに応じるまで戦略兵器開発を続ける考えを示した。

「弱者の恫喝」と言ってすまされる発言ではない。金正恩政権は、まさに「土壇場」に立たされている。北朝鮮は、米朝交渉で一方的に昨年末を期限とし、米国側の譲歩を求めたが、米国は態度を軟化しなかった。窮地に陥った金正恩政権は「時間稼ぎだ」と批判したうえで、「人民が受けた苦痛の対価」を受け取るため「衝撃的な実際の行動に移る」とまでも言い放ったが、北朝鮮人民の人権迫害と恐怖政治を強いている金正恩政権が「人民が受けた対価」などという、片腹痛い表現まで口にして米国側に譲歩を迫ったものの今のアメリカは北朝鮮どころではない。それどころか金正恩に決定的な警告を発した。

それは新年早々にトランプ政権がイラン革命防衛隊の精鋭である「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を空爆で殺害した事実を公表したことである。

すでに韓国の『朝鮮日報』が、米韓両軍の特殊作戦部隊が11月に、北朝鮮の指導部の排除を目的とする「斬首作戦」を想定したとみられる訓練を行ったと報じたが、これは北朝鮮側が非核化交渉の期限を年末に控えて強硬姿勢を強める中で、このような事実を明らかにすることで北朝鮮側を牽制するものであったが、年明け早々にもイランでトランプ大統領は「攻撃は戦争を阻止するためだ。戦争を起こすためではない。米国民を守るためにすべての措置を講じる」とイランを牽制し、実行した。

どうなる?アメリカ北朝鮮関係

北朝鮮の金正恩政権も、いつか自分らが同じ運命を辿るかもしれないという恐怖感に戦々恐々としているだろう。金正恩とトランプの互いを罵る「痴戯」の段階はすでに終わった。

アメリカのエスパー国防長官は、テレビ番組で北朝鮮が核実験や大陸間弾道弾ミサイル発射の凍結を撤回する可能性に言及したことに関し「最善の方途は、朝鮮半島を非核化させる政治的な合意である。金正恩朝鮮労働党委員長および指導部に交渉の席に戻るよう促したい」と北朝鮮側に自制を求める一方で、「軍事的な観点に立てば、必要ならば今晩にでも戦う準備ができている。米国の即応体制は北朝鮮の悪行を阻止できる。仮に阻止できなかったとしても戦って勝つ自信がある」と語った。こちらは「強者の恫喝」である。

さらに、日米韓3か国の安全保障担当トップによる高官協議がこの8日にも開催される方向で調整に入った。「虎の威を借りる“張り子の虎”政権」の金正恩政権も、まさに正念場に立たされているといっても過言ではないだろう。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by: kirkchai benjarusameeros  / Shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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