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武田教授が明かす、個人レベルの節約が環境破壊を早めている証拠

我が国では美徳とされる「節約」ですが、少なくとも資源やエネルギー面に関してはマイナスの側面が大きいようです。中部大学教授の武田邦彦さんは今回、自身のメルマガ『武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』で、「節約しているという人は、実はエネルギーを2倍消費している」と断言し、その理由を判りやすく解説するとともに、この程度の論理すら理解されない日本において、温暖化を議論することなど到底困難と結んでいます。

「節約は良いことだ」という言葉を鵜呑みにして本当にいいのだろうか?

年の初めにやや暗い話題ですが、この際「正直な自分になる」というのも今年一年の決意にはなると思います。

日本人は必死になって節約をしています。というより「節約をしているフリをしている」と言った方が良いでしょう。もともと「自由主義、資本主義」のもとで生活をしていると、「節約するというのは実質的に不可能です。

その理由をじっくりと説明します。

ごく普通の人は給料や毎月の売り上げを元にして、自由にできるお金で生活をしています。たとえば、それを一人暮らし月収が40万円としましょう。税金、保険、家賃、電気代、水道代、治療代、NHK、年金などの毎月の出費、老後に備えた貯金などを差し引いて、25万円が手元に残っているとします。

そこから、洋服代、靴代、家電製品、スマホ代、小物代、風呂や洗面、化粧などにかかるお金、さらに食事代、外食代、お酒代などに25万円がやや増えたり減ったりするお金として使っていたとします。その中で、政府やマスコミが盛んに「節約は良いことだ」といっているので、少しは節約をしようとするとどうなるでしょうか?

とりあえず、電気をこまめに消したり、風呂を毎日から1日おきにしたり、タクシーに乗るのをやめて健康のために歩いたりして、月に3万円ほど節約をしたとします。そんなに節約をできる人も少ないと思いますが、1万円でも3万円でも本質は同じなので、ここでは3万円ということにしておきます。

節約したのだからその分のお金は銀行に残っています。普通預金では利息が付かないので毎月、3万円を定期預金に入れていくと年に36万円になります。

確かに、「お金を余らせよう」という目的には沿っています。10年間節約を続け、360万円になったところで欲しかった車を買ったとします。こうしてある人が節約を心掛けたとして、環境にはどういう意味があったでしょうか?

「節約している」という人は、蓋を開ければエネルギーを2倍消費している

まず、電気を消したり風呂の間隔を広げたりした時点では、3万円分が節約されましたので、3万円分の資源やエネルギーが節約されました。環境省の役人や環境運動家は社会に向かって節約を呼びかけているのですから、自分も当然、毎日このような生活を送っているのでしょう。

余ったお金は銀行にたまっていきますが、銀行はそのままにしておくと利益がでないので、利子はもちろん、社屋の管理費、税金や従業員の給料も払うことができません。そこで必死になってお金の借り手を探し、企業に貸します

借りた企業は、そのままお金を寝せておくわけにはいかないので、さっそく資材を購入して生産をします。生産会社ではなくても食料品店でも同じことです。一般的には個人より企業の方が大量に買い付けたり、購入ルートを知っているので、同じお金で大量に買い付けます。だから銀行に預けると余計に資源やエネルギーを使うことになります。

10年間はそういう状態でしたが、預金している人は「自分のお金」なので溜まってきたら車を購入しました。つまり360万円を節約した結果、銀行では企業に貸して360万円を使い、個人としては360万円で車を買ったので、節約したことによって2倍の消費をしたことになります。

これは当然のことで、銀行の役割は同じお金を何回か使うことによって、生産や消費を増やすことがその目的なので、2倍の資源を使うことになるのです。もう少ししつこく言えば、この人は節約することによって無駄な出費をやめて貯金し、車を買ったので、車を買った後の生活はさらにガソリンとか修理費、高速道路代(高速道路の維持、管理、道路の補修などに使う)がプラスされますから、以前より多くの消費をすることになります。

これも当然で「節約」というのはより効率的にお金を使うことを意味していますから、国民経済を増大させ、資源やエネルギーが多く消費されるようになるのです。

つまり、日本社会が貨幣経済で銀行があり、お金が余ったらさらに買うことができる製品が製造されていますので、「節約」というのは原理的にできないのです。もし方法があるとしたら、会社に掛け合って給料を減らしてもらうことですが、これでも個人は節約できますが、会社はそのお金をほかの人に回したり、設備を買ったりしますからやはり同じことです。

それでは環境省の役人や環境運動家が「節約しよう」と呼びかけていますが、どうしているのでしょう?筆者はかつて環境運動家と公開の場で節約についての対談をしたことがあります。お相手は女性の大学の先生でしたが、筆者がここに書いたことと同じことを言ったら、答えに窮して、そこで対談が終わりになったことがあります。

おそらくは、この日本で誰も節約をやっていないと思いますが、それでも節約、節約というところに今の異常な日本があります。こんなことで難しい温暖化など考えることはできないと思います。(メルマガより一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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【著者】 武田邦彦 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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