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現役アナウンサーが指南。3ステップで「会話への恐怖」克服術

アナウンサー歴30年の熊谷章洋さんが人前で話すあらゆるシーンに役立つプロの技を伝えてくれるメルマガ『話し方を磨く刺激的なひと言』は、今回が最終回。熊谷さんが最後に伝えたいテーマとして選んだのは、「人と話すことへの恐怖を克服するコツ」。会話をゲームとして捉えることで心理面のプレッシャーも軽くできると、3ステップでの克服術を伝えています。

対人関係でビビらない方法

人と接することが大好きで、人と話すことに全くプレッシャーを感じない人にとっては、不要な内容かもしれません…ごめんなさい。ただ、話し方の改善・向上を願う人のうち、かなりの割合で、必要とされているテーマですので、そういった人のお役に立てれば、と、最後に記しておきたいと思います。

といいますのも、この私自身も、人と話すのが苦手な傾向があるのですが、いっぽうで、考えたことを表明したり、テレビやラジオでしゃべったり、インタビューで質問したり…こういったことは大好きでアナウンサーという職業を長年やってきました。

ちょっと不思議なことかもしれませんが、仕事でトークするのと、日常的に人と接するのとでは、まるで別ジャンルなんですよね。子供のころから、群衆のような人に向かって話すのはなんてことないのですが、慣れない人との1対1や、2~5人程度のグループが苦手な傾向もありました。

ただ、人と接するのがダメダメ過ぎますと、仕事に影響してしまいますから、その部分を人並みぐらいにできるよう、自分で「エイっ」と、スイッチを入れられるようにしています。

では、人前で話すこと、そして、1対1を含めた対人関係の恐怖を克服するコツについて、まとめていきますね。

まず第一に言いたいのは、やれることはいろいろあるので、自分の精神的なコントロールばかりにとらわれ過ぎない、ということです。人が緊張するのは、「主語が自分」になった時、という話は幾度となく、してきました。うまく話したい、失敗したくない、嫌われたくない、すごいと思われたい、怖い…これらすべて、主語が私なんですよね。

自分のことばかり考えているから、精神的に追い詰められるのです。それは、対人関係においても、同じこと。自分の精神をコントロールしてやろう、と思った時点で、主語はもう、自分です。ですからこの、自分が自分が、の状態を、小さくしたり、他のことに散らしてあげるのが、精神のコントロールのコツなのです。

一番いいのは、相手のこと、相手の為を考えて、話の内容に集中すること、でしたよね。緊張と集中は紙一重ですから、いかに転換できるかが、カギになります。

ではその、緊張を集中に転換する方法についてです。上述のように、いきなり、精神をコントロールしようとし過ぎると、またしても、自分が、というプレッシャーが芽生えてしまいますよね。やれることはたくさんある、と申し上げましたように、精神をコントロールしようと思ったら、まず、

他のことから手を付ける

のが、ひとつのコツだと思います。

対人恐怖を克服する、精神のコントロール法、大きく3つに分けると、

が考えられます。

いきなり心理的アプローチにチャレンジしても、プレッシャーを助長する恐れがありますから、その前にできることを、まずやってみよう、というのが、私からのアドバイスです。

物理的アプローチによるコントロール術

まずひとつめ、「物理的アプローチ」について。これは簡単に言うと、話す自分を何とかしようと思う前に、話す自分の環境から、話しやすい状態にしちゃう、ということです。具体的には、相手との距離や位置関係、モノの介在などを変えてみること、などが考えられます。

一番簡単なのは、相手との距離をとることです。例えば職場で上司に、「〇×君、あの件、どうなってる?」と声をかけられた時。すぐ近くまで行って、上司の顔を間近に大きく見ながら答えるのは、プレッシャーになる人にとっては、かなりのプレッシャーだと思います。そんなとき、物理的アプローチをとるならば、ちょっと離れた状態で、話し始めてしまうのです。

もっともこれは、重要かつ詳細な内容を遠くから話すわけにもいきませんから、自分の感想、思い、感情、要するにこういうことという「ざっくり結論」など、ちょっと遠い距離にもってこいの内容から、話し始めるわけですね。

「〇×君、あの件、どうなってる?」
 ・「あの件ですか、もう、ばっちりですよ!!」
 ・「いやいやもう、きつかったっスよ~」
 ・「あの後、先方の誰々さんが大変だったんですよ~」

とかね。

こういう話し方に効果があるのは、何より、声をかけた相手方(ここでは上司)が、あなたが近づいて話す前に、柔軟な話し方を準備してくれる、という点です。

実は、あなたを呼んで報告させようとしている上司のほうも、かなり身構えた状態なんですよね。ところがあらかじめ、離れたところから、ざっくり一言を言ってもらえると、その身構えが解け、しかも、話を聞く論点が絞られるので、心理的にも、内容の面でも、やりとりがとてもスムーズになるのです。

「ばっちりですよ!」と言っておけば、「ほうそうか、うまくいったか!」。「誰々さんが大変だったんですよ~」と言っておけば、「誰々さん、どうなった?」などなど。これ、呼ばれて話さなくてはいけない、考えようによっては苦しい環境のはずなのに、完全にこっちペースになってますよね。

しかもこのような、ちょっと離れた距離で話すということは、ちょっと大きい声で話すことになるわけですが、このちょっと大きい声で話すのが、精神的にも肉体的にも、とても良い効果を生み、それこそ緊張を集中に転換させるきっかけを与えてくれるのです。

そのほか、物理的アプローチとしては、相手との位置関係を変えて、正対するのではなく、斜めや、できるなら横に並んでしまう、相手と自分の間にモノをかます、など。例えば、見てほしい資料を自分と相手の間に置いたり、相手と横に並べるなら、その資料を相手と一緒に見る、など。両者の間にモノを置くことで、それがワンクッションになりますし、横に並んだり、共に同じモノを見たりすることで、話す両者が、いってみれば「仲間化」するんですよね。

このように、話す自分と聞く相手、その物理的な関係性を変えるだけでも、自分が話す時の気分が、まったく違ってくることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

肉体的アプローチによるコントロール術

自分が自分が、と思い過ぎてしまうのが、精神的なプレッシャーになるのなら、その熱くなりすぎている頭部から、他の部位に意識を散らそう、というのが、肉体的アプローチです。

具体的には、

など。

もちろん、「〇×君、あの件、どうなってる?」と上司に呼ばれてから、柔軟体操をするわけにもいきませんから、その時々で、できることを、模索してみると良いと思います。

心理的アプローチによるコントロール術

ここまで述べてきた、物理的、肉体的アプローチによって、話す自分の状態は、ずいぶん楽になっているはずです。心の中に渦巻いていたプレッシャーというモンスターは、かなり小型化しています。モンスターは小型化させてから倒すのが、効率的ですよね。

そして振り返ってみますと、当メルマガでこれまで幾度となく述べてきた気持ちのコントロール法は、相手を味方だと思うこと、相手の為に話すこと、そして、相手が喜んでいる姿や、話したことで良い結果が出たことを画像化して、想像すること…このような内容でした。

ここでもうひとつ、さらに付け加えるならば、「相手と自分の関係の客観化」という表現ができると思います。さきほど物理的アプローチの項目の時に、相手の顔を近くで大きく見る前に…とお話ししましたが、これは心理的にも同じことが言えると思います。

つまり、自身のイメージの中で、相手の存在や、自分との関係を、大きくし過ぎないこと。そのためには、心理的なイメージの中で、相手の像を必要以上に大きくせず、例えば、相手と自分が並んでいる姿を、ちょっと引き気味で想像してみること。

写真で言うと、相手のアップやバストショットぐらいの大きさで捉えていたものを、自分と相手とのツーショット、ちょっと引いた、全身が見えるぐらいのツーショットでイメージすることです。この客観性が、ぐーんと、話す自分をリラックスさせてくれます。

そして、そのふたりの関係性において、話すことは、オセロや将棋のようなゲームだと考えてみてはどうでしょうか。たとえその2人の立場が、社長と社員の関係であっても、将棋盤を挟めば、両者とも、1プレーヤーですよね。そんなふうにゲームをしているツーショットを、画像で思い浮かべるのです。

そうすることで、言葉は、一手一手、打っていけばいいんだ、という心構えができます。ゲームで自分の番が来たときに、自分の駒をいきなり最後まで進めてしまう人なんて、いませんよね。話も同じです。

自分の話す番が来たときに、一気に最後まで話し尽くそうと思ってしまうから、苦しいのです。自分が駒を進めて、相手の反応を見てから、次の手を打てばいい。相手の反応を見る、ということは、その分、論点が絞れる、ということです。それはつまり、自分が考える範囲、言うべきことが、少なくて済む、ということなんですよね。

そういう意味においても、あるいは何につけても、話し方に悩む人の多くが、いきなり大きな対象に挑み過ぎているのではないか?逆に、上手に話せる人は、自分を楽にするように、楽にするように、考えている。

このあたりが、話し方の相談を受けていて日々感じる、「話し頭」の良し悪し、なのだと思います。

image by: Shutterstock

熊谷章洋この著者の記事一覧

アナウンサー歴30年、極限の環境で話し続ける著者が、実体験から会得した「話し方のコツ」を理論化。人前で話す必要がある人の「もっと〇〇したい」に、お答えしています。一般的な「話し方本」には無い情報満載。

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