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70歳まで厚生年金に加入して働き続けたら、その分はいつ貰える?

厚生労働省によると、60歳まに定年を迎えた人のうち約15%がそのまま定年退職し、約85%が継続雇用となっているそうです。もはや自分がこの先、何歳まで働くことになるのか、よくわからなくなってきましたね。多くの人が年を重ねても働く中、70歳まで働きながら厚生年金に加入できるようになります。しかし、老齢の年金を貰いながら働いている場合は、いつになったら厚生年金に加入したぶんの年金が増えるのでしょうか?無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、著者のhirokiさんが事例を挙げて詳しく解説しています。

年金貰いながら厚生年金に加入してきた分はいつ年金が増えるのか

現代は働けるなら70歳まで働けるようにしようという流れですね。さらに、今は501人以上の従業員がいて、月給与88,000円以上、1年以上の雇用見込み、週20時間以上の条件を満たすと厚生年金に加入するようになりました。

本来は厚生年金に加入する場合は、週労働は正社員の4分の3以上、かつ、月の労働日数が4分の3以上という目安があります。しかし、平成28年10月からは週20時間以上という短期時間雇用者でも厚生年金に加入するようになりました。

とはいえ、非正規雇用者や短時間労働者を多く雇っている外食産業などからの反発が強く、従業員は501人以上という場合にするというようにかなり厚生年金に加入する人を絞りました。その結果、ほんの25万人程度厚生年金加入者が増えただけでした。

ところが、このかなり大きい制約は近い将来的には501人以上の会社から、51人以上の会社とかなりの拡大の方向に進む見通しです。今、サラリーマンの扶養として第3号被保険者で国民年金保険料を支払わなくても支払ったものとされている約850万人ほどの人達の数がかなり減ってしまいそうですね^^;3号は保険料払わないからといって特別優遇されたものではないですが…

さて、そのように厚生年金に加入できる条件を緩やかにしてくるわけですが、これからはもっと老齢の年金を貰いながら厚生年金に加入する人が増えるという事ですね。

老齢の年金を貰いながら働くと年金停止される場合がありますが、今回は60歳以降に年金を貰いながら働いたらいつ年金が増えるのか?という事を考えていきましょう。

年金貰いながら、厚生年金に加入するという事は当然、加入した期間や加入中の給与によって年金額が増える事になります。でも毎月増えていくわけではない。年金受給者が3,000万~4,000万といる中で、一人一人にそんな処理してたら負担が大きすぎる。

年金貰い始めた後で厚生年金に加入した場合は、退職して1ヵ月待つか、65歳を迎えるか、70歳を迎えるか…という区切りで年金額を再計算します。なお、退職して1ヵ月経ったら年金額を再計算しますというのは、年金の退職改定という。この退職改定の基礎を学んでいきます。

具体的にはこうなる

1.昭和33年3月28日生まれの女性(令和2年1月現在は61歳ですが、令和2年中に62歳になる人)

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20歳になると国民年金に強制加入だったが、昭和53年3月から昭和55年3月までの25ヶ月間は4年制の昼間大学生だったので国民年金には加入しなくても良かった(任意加入)。任意加入しなかったので、カラ期間にはなった。

昭和55年4月から平成13年6月までの255ヵ月間は厚生年金に加入。なおこの間の給与(平均標準報酬月額)を29万円とします。

平成13年7月から平成28年9月までの183ヶ月間はサラリーマンの妻として国民年金第3号被保険者となる。一応、501人以上の会社で、週20時間以上30時間未満、年収110万円くらいでパートをやっていた。国民年金第3号被保険者の範囲に収まるために、年収130万円以内に抑えていた。

ところが、平成28年10月から501人以上の会社で、月給与88,000円以上等の場合は厚生年金に加入する事になった。よって、平成28年10月から厚生年金加入者(国民年金第二号被保険者)として60歳前月の平成30年2月までの17ヶ月間厚生年金に加入。平均標準報酬額は88,000円。

さて、この女性は60歳からは自分の老齢厚生年金が貰えるようになる。

この月額44,591円の年金を平成30年3月の翌月である4月分から貰うようになった。ところが、この女性は60歳到達月の3月以降も継続して働く事にした。年金が少ないから継続雇用を望んでいた。月給与はちょっと上がって104,000円(標準報酬月額)になった。

なお、老齢厚生年金を貰いながら厚生年金に加入すると月給与と賞与(月換算したもの)と、年金月額の合計によっては年金が停止される。でも、合計額は28万円以下なので停止はされない。


注意

28万円というのは65歳未満の人の停止基準額。給与と年金月額がこれを超えなければ年金は停止されない。これからは、この28万円が65歳以上の人の47万円と同じになって基準が緩くなる方向。ちなみに、厚生年金に加入せずに働いてる人はいくら稼ごうが年金停止されない。


だから、月の収入としては給与104,000円+年金月額44,591円=148,591円を得ていた。

平成30年3月からも働き続けて、令和4年7月30日に退職した。よって、60歳以降の厚生年金加入期間は、平成30年3月から令和4年6月までの52ヵ月となる。なお、この間の平均標準報酬額は104,000円とします。


補足

なぜ令和4年7月まで働いているのに、6月までの加入履歴なのか?これは7月30日に退職すると、翌日の7月31日に厚生年金資格を完全に失うから(喪失日という)。この喪失日が属する月の前月までを加入期間とするルールがある。

仮に7月31日退職だったら、8月1日喪失して、その前月の7月までが加入期間となる。時々、月末退職がどうのこうのと揉めるのはこういう事があるため(笑)。

7月30日退職なら6月分までの厚生年金保険料でいいが、7月31日退職だと7月分の厚生年金保険料も支払う必要がある。このルールは覚えておいてください。

年金受取額について細かく解説

いつから年金額が変更になるのか?これは退職日から1ヵ月経過した日の属する月から(回りくどい言い方ですが…^^;)。つまり、7月30日から1ヵ月経過した日は8月30日だから、8月分の年金から変更という事です。

令和4年8月分の年金から535,094円+29,641円=564,735円(月額47,061円)になる。

その後65歳を迎え、国民年金から老齢基礎年金と厚生年金から差額加算が支給されるようになる。


注意

老齢基礎年金計算する場合の厚生年金期間は国民年金強制加入中の20歳から60歳までの期間で計算する。なので60歳以降の52ヶ月間の厚生年金期間は含めない。52ヵ月は以下の差額加算計算の際に反映する。


よって、65歳時の年金総額は、老齢厚生年金(報酬比例部分564,735円+差額加算84,767円)+老齢基礎年金739,470円=1,388,972円(月額115,747円)

この女性は20年以上の厚生年金期間があるので、65歳時点で生計維持してる夫がいれば配偶者加給年金390,100円も付く場合がある。

ここでもう働く事は無いだろうと思っていたが、ちょっと気が向いて令和9年4月(この時69歳)からまた厚生年金に加入して働く事になった。給与(標準報酬月額)は20万円だった。

令和10年3月27日が70歳到達日。この70歳到達日を迎えると、退職してなくても年金額の再計算に入る。よって、令和9年4月から令和10年2月までの11ヵ月で、平均標準報酬額20万円で計算。

簡易に計算しますと、報酬比例部分20万円×5.481÷1,000×11ヵ月=12,058円増。差額加算は1,626円×11ヵ月=17,886円増。なので70歳時の年金額は、65歳の時の年金総額1,388,972円+12,058円+17,886円=1,418,916円(月額118,243円)となる。これを70歳到達時改定という。

なお、70歳以降は厚生年金に加入できないので、働いて年金を増やすのは70歳までとなる(現時点の法律では)。

追記

過去の給与(標準報酬月額)は年金計算をする時は、現在の貨幣価値に直すために働いた年度の標準報酬月額ごとに再評価率というものを掛ける。なので、計算する時に平均を出してますが、いつも事例は再評価した後のものとしてます。

ところで厚年加入は昭和60年改正までは制限なしだった。昭和60年改正から65歳まで加入できるようになった。平成14年4月から70歳まで加入可能となりました。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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