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子どもの前で親が絶対に見せてはいけない「間違った謙遜」の弊害

日本では「謙遜は美徳」であるという風潮があります。わざと控え目なつつましい態度で振る舞うことで、相手に嫌な思いをさせないようにしたり、場を和ませたりしますよね。でもこれ、大人の世界では当たり前ですが、子供の前で行うのは注意が必要。「うちの子なんて…」と目の前で言われた子どもたちは、どんな気持ちになるのでしょうか? 今回、無料メルマガ『幸せなお母さんになる為の子育て』の著者・パピーいしがみさんのもとに届いたのは、「謙遜をする親の言葉に傷ついてきたのに、同じことを自分もしてしまっている」というお悩み。パピーさんが子育て中の謙遜について、どのようなアドバイスを送るのでしょうか?

謙遜しがちな日本人

こんばんは。パピーいしがみです。

「あなたのお子さんは優秀でいいわね」「うちの子なんて××が××で、××なのよ!ほんと嫌になっちゃう!」なんて言われたら、あなたはどうお返事になるでしょうね?特に、そばに子供がいる時はどうでしょうか?もしかしたら「そんなことないわよ。うちの子も外面はいいけど、本当は××で困っているのよ」なんて答えてしまうかもしれません。でも、それを聞いていた当の本人はどう感じるでしょうね?今日はそんな風に言われて育ってきた…とご相談いただいた、新米ママさんのお話を紹介したいと思います。それではまずは、どんなご相談だったか、そこからご紹介しますね。

新米ママと申します。1歳になったばかりの息子がおります。

 

本音と建前、とよく言われますが、ママ友達や親戚、家族と、子供がいる場で日々の育児の大変さを喋ってしまったり、また相手から「うちの子はここがまだ出来ない、離乳食は座って食べないしイライラする。あなたの子はそんなことないでしょ?」などの話を持ち掛けられると、共感しながらも「いやいやうちだって…」とついつい話してしまいます。

 

しかしふと考えると、子どもはそれを聞いてどう思っているのだろう?と思う時があるのです。まだ1歳ながらにしても自分のことを話されているのがわかっている気がします。目を丸く見開いてこちらを見ている表情をする時があるのです。「あ、いけないな」と思いました。

 

というのは自分が小さい頃から言葉の裏を考えてしまうような子どもでした。私の実家は自営業で、飲食店を営んでおります。そのため沢山のお客様がいらっしゃり、沢山の人と関わる機会が小さな頃からありました。家が忙しいながらも私の両親は、私を大切に育ててくれました。

 

それなのに大人になった今でも、どうしても納得がいかないというか、許せない部分がありました。特に父親についてです。私の父親はとても社交性がある人で、色んなお客様と楽しく話していることが多かったのですが、お客様と話す中で子供についてへりくだった言い方をよくしていました。

 

大人になった今ではわかります。日本人ながらというのでしょうか?人前で自慢することはよろしくない、自分を下げて話すことが美とされるようなところが、あると思います。その方が相手にとっても好印象だからですよね。社交辞令とでもいうのでしょうか…。

 

でもそれが子供の時の私にはわかりませんでした。例えば「うちの子はだらしがなくてしょうがない。電気もつけっぱなし、やりっぱなしで…お宅のお子さんと比べたらうちはまだまだですよ」なんて、子供の私がいる前で楽しそうによく話されたものです。どうしてそういうことを言うのだろうとずっと思い続けていましたし、家では父は「いい子だいい子だ」と私のことを褒め続けてくれるのです。

 

しかしだんだんと自分が大きくなるに連れて「家でのことは嘘だったんだ」と思い始めました。「本当はだらしがないなんて思われていたんだ。褒めてくれながら、裏ではそんなことを思っていたのか」と思うようになりました。どれだけ笑顔をかけてくれても「本当はそんなこと思っていないんでしょ、馬鹿にしている」とも思っていました。

 

きっと小さいなりに傷付いたのだと思います。また同時に表でいい顔をする両親が憎らしく思いました。「どうしてそんな話をするの、私のこと愛していないのでは?」とも思いました。でもその事について直接両親に聞くことが出来ませんでした。良い子良い子と言われ育ってきたので、その点について聞くことが怖かったのか…。親に良い子と言われた通りに生きて我慢をしてきたように思います。歯向かう勇気がなかったように感じます。

 

ですから小さな頃から、現在に至っても相手の気持ちを考えるあまり自分の意見が言えなかったり、控えめだったり人見知りだったり…自己肯定力が低いように感じています。それに先日息子の1歳のお祝いで、両家交えてお食事会を楽しくしたのですが…。

 

「お宅の息子さんは本当にこまめで良い方だ。いい旦那をもらったなと思ってます。それに引き換えうちの娘は本当、動かないし怠け者だから…それなのに一度怒ったら根に持ってしょうがないんですよ」なんて両親同士で笑いながら話していたのを聞いて、やっぱりいい気持ちはしませんでした。わざわざ人前で言わなくても、まして義両親の前で言わなくてもと…やはりなんと言えばいいのかわからない感情が芽生えます。

 

そんな経験がありながら、今自分が子供に対して同じことをしてしまっていることに怖さを覚えました。自分はおそらく父親に似て外面がいい方だと思います。その場を楽しくさせることが好きです。そのため雰囲気に任せて自分のことや子供のダメなところを話して、その場を和ませたりすることが得意なのだと思います。しかしどれだけ家で良く褒めたって認めたって、人前で蔑まれたと子供に思われたら、親への信頼が崩れてしまいますよね…。

 

1歳だけれど、されど1歳だと思っています。きっと少しづつ心が成長して、大人が何を言っているのかわかってきた時、きっと自分はこの子を傷つけてしまうと思います。いくら家の中で愛情を持って接しても、私の外面によって信頼関係は崩れてしまうのではないか…子供への影響はやはりあるのではないかと不安を感じています。

 

息子はまだ話せませんので言葉も通じませんが、これから成長していく過程で今からどうしたらいいか、自分の子供への対応と、周囲の人との付き合いについて、パピーさんでしたらどんな対応をされますか。教えていただきたいです。また、自分の両親に対して今だにこの許せない感情をどうしたらいいのかわかりません…。こんな感情を持ったまま、自分はこの先、子育てをしていけるのか不安です。

家では「いい子だいい子だ」と褒めてもらっていたのに、人前ではけなされる。新米ママさんも書かれていましたが、それを子供が聞いたら「褒めてくれながら、裏ではそんなことを思っていたのか、馬鹿にしてる!」って思いますよね。でも、他の人が褒めてくださる言葉に「そうなんですよ♪うちの子はとってもいい子で…」なんて言えば、場が白けてしまいそうです。

謙遜も子どもの前では注意が必要

ではどんな風に言ったらいいのでしょうね?また、新米ママさんのご両親への気持ちはどう整理していったらいいのでしょう?私はこんな風にお返事しました。

 

新米ママさん、こんにちは。パピーいしがみです。メール拝見しました。

 

“「うちの子はここがまだ出来ない、離乳食は座って食べないしイライラする。あなたの子はそんなことないでしょ?」などの話を持ち掛けられると、共感しながらも「いやいやうちだって…」とついつい話してしまいます。”

 

はい、その気持ち、とってもよく分かります。でもそれは「本音と建て前」なのではなく、私たちが美徳として学んでいる「謙遜」だと思っての事なのですね。ご両親がまさに、そんな風に口にしてしまう方だったみたいです。でも私はそれは間違っていると思うのです。

 

自営業で飲食店を営んでおられた、という事なので、お客さんや地元の方々に嫌悪感を感じさせないように、謙遜の言葉(のつもりで)発しておられたのでしょうね。ですが、それを聞いていた育ったお子さんは当然、不信感を感じます。直接自分に褒めてはくれていたとしても、人前では悪口を言われている、と知ったら「どっちが本心なの?」と思いますし、裏表があって嫌な感じに受け取っていたと思います。

 

新米ママさんも「人前で自慢することはよろしくない、自分を下に下げて話すことが美とされるようなところが、あると思います。その方が相手にとっても好印象だからですよね。社交辞令とでもいうのでしょうか…」と書かれていました。

 

そうなんですね。私たちは「謙遜を美徳」とし、相手に嫌な思いをさせないように、わざと自分を下げ自慢をしない、という風潮があります。ですが、これって自分の事であれば「謙遜」ですが、自分の子どもであれば「子供を愚弄」するだけで、謙遜でも何でもないんですね。そして親が謙遜と考え、子供の至らない事を口に出し続けていると、子供はたとえ直接は褒められることがあったとしても、それに対して信用できないので自分に対して自信が持てなくなっていくのです。

 

新米ママさんが「本音と建て前」と仰っておられたり「でも色んな方と関わる上で、自分の子供のいいところばかり話せば、相手はいい気持ちはしないですよね」と書かれていたように、自分の子どもの悪口は(建て前では言うべきではないけれども)言わずにはいられない物だ、とお考えかもしれません。が、私はそうは思っていません。少なくとも私はこの「謙遜と考え子供を愚弄する」事がとても嫌いで、人前で自分の子どもを卑下することは絶対にしませんでした。別に人前で褒めちぎる必要なんてないのです。でも「子供を愚弄しない!」と決意すればできる事だと思いますよ。

 

例えば、誰かに褒められたときなどは「ありがとうございます」と感謝の言葉だけを使うようにすればいいのです。又「うちの子はここがまだ出来ない、離乳食は座って食べないしイライラする。あなたの子はそんなことないでしょ?」のように相手が子供の困った事を相談してきた時には、「あなたの子はそんなことないでしょ」に対して返事をするのではなく、「そうですよね。まだ年齢的にも難しいですよね」とか、「まだできない事も多いですよ」や「私もあまり上手に教えられなくて」のようになさればいいのです。そして子供に向かって「これから上手になるから大丈夫ね」と笑顔で話してあげても良いと思うのですね。

 

確かに「あなたの子どもと同じかそれ以上に、私の子どもも劣っているんです」「ダメな子なんです」と言えば、相手は安心します。でもそんな事を言っても良い事なんて一つもありません。結局、親が自分の対面を保つためだけに言っているに過ぎない!と私は思っています。

 

子供にも人格があります。感情もあります。「1歳で話は聞いていない分かっていない」と親は思っても、その雰囲気は感じていると私は思いますし、子供は親の言葉を聞いて育っていますから、蓄積されていくとお考えになった方が良いと思うのですね。ですから「子供への愚弄は“謙遜”ではない」「いつだってその言葉は子供が聞いている」とお考えになって、ご自分の発する言葉に気を使って欲しいのです。

 

お父さんの言葉にこうありましたね。

 

「お宅の息子さんは本当にこまめで良い方だ。いい旦那をもらったなと思ってます。それに引き換えうちの娘は本当、動かないし怠け者だから…それなのに一度怒ったら根に持ってしょうがないんですよ」

 

お父さんは、その場の雰囲気を楽しくさせることが好き、と書かれていましたね。相手を持ち上げて、逆にもう片方(自分)を下げれば、相手の気持はとても良くなります。笑いが起きるかもしれません。でも(たとえ身内であっても)誰かを傷付けてまで笑いを取るって、私はすべきではないと思います。ご自分の娘だから…と思う気持があって、比較して下げたのだと思いますが、「娘さんはあなたの所有物ではない!」とお父さんに言いたいぐらいです。

 

相手の良さを引き出して「お宅の息子さんは本当にこまめで良い方だ」と伝えれば、必ず相手も「いえいえ、お宅の御嬢さんこそ…」と言ってくださいます。その時に「ありがとうございます」とか「恐れ入ります」と言っておくだけで誰も傷つくことなく丸く収まるんですね。同じように、普段の会話で相手がへりくだってきても、それに応じなければ良いんです。

 

新米ママさんの親御さんが子供の悪口を言う状況に身を置いてしまったのは、ご商売で、できるだけ多くのお客さんに利用してもらう為だったのだと思いますよ。例えば、明石家さんまさんが、時々、大竹しのぶさんの話や、イマルちゃんの話をしますよね。鉄板のネタに場は盛り上がります。大竹しのぶさんは「うそばっかり」と笑っていますが、イマルちゃんは絶対共演NGというぐらい嫌がっています。それはそうだと思います。言われる方からしたら「なんでそんな事を言うの!?」と思いますもの。

 

でも今、新米ママさんは、ご商売をしている訳でもないでしょうし、沢山の人に好かれなければならない状況ではないですよね。でしたら褒められたら「ありがとう」を返し、本人が聞いていると思ってお返事に気を付けられたら?と思います(^^)。

 

そしてご両親には「そう言わなければならない状況だったんだな」って思ってあげる事は難しいでしょうか?きっと、お父さんもお母さんも、相手が安心してもらうために本心でない言葉を使っていたのだと思います。

 

ただ我が子であっても、人格もあり感情もある「人間」です。陰で悪口を言われていることを知ったらイヤな気持ちになります。ですから本心でなくともその場を盛り上げるための悪口は言わないでほしいし、子供が誤解してしまう可能性のある言動は慎んでほしいのです。いつか、落ち着いた時に「私はこう言われていたのが嫌だった」と伝える事として、親のよくない謙遜の癖は、ここで断ち切るようにされたらどうでしょう?

 

新米ママさんの言葉に「いくら家の中で愛情を持って接しても、私の外面によって信頼関係は崩れてしまうのではないか…」と書かれていました。その通りです。もしお父さんのように場を盛り上げる事が好きだったり、対面を保ちたい、との気持ちが強かったらお気を付け下さいね。息子さんも、新米ママさんと同じような気持ちを持って育つことが考えられますから。

 

ご自分の謙遜は結構ですが、子供への悪口は「謙遜」にはならないという事。それを意識するようになさったら子供に不信感を与えず育てられると私は思います。

日本には「愚息」とか「愚妻」などという言い方がありますよね(私は大嫌いですが)。日本人はそれを「へりくだっている」と考えて使っていたのかもしれませんが、現代はあまり聞かないとしても「自分の身内(の悪口)ならいいだろう」のように考えるところがまだあるように感じます。そしてそれが「謙遜」だと思っている人がとても多いです。ですがそれを聞いた本人は、間違いなく嫌な気持ちを抱きます。

子どもの気持ちになって考える

お子さんの1歳のお祝いで、両家交えてお食事会を開いたその時でさえ「うちの娘は×××…」と言われた新米ママさん。せっかくの楽しい時間が台無しになってしまいますし、残念な気持ちでいっぱいになります。でもそれは、お父さんがまだ「自分の身内を下げること=謙遜」とお考えで、そこに悪意がないことがやはり問題だと思うのです。

新米ママさんも親になり、ついつい口にでてしまった「うちの子も××…」の言葉。でもそこで気づけて良かったと思うのです。上記のお返事に新米ママさんは、このようなメールをくださいました。

新米ママです。お返事が大変遅くなってしまい申し訳ありません。また、こんなにも丁寧にお返事を頂けるとは思わず…とても嬉しかったです。本当にありがとうございます。

 

なかなか人には、まして身内には言えない悩みでした。でもやっぱり納得いかなくて、そんなことを感じているうちに自分の子供に対しても愚弄するような言い方を周りにした時、自分もしてしまった、と、はたと気づきました。褒められたら感謝すればいい。相手からへりくだられても自分に対してへりくだればいい。子供への愚弄はしない。そうですよね、パピーさんが教えてくださったように対応できたらいいんですよね。

 

また、自分の辛かったことに対して「とてもわかりますよ」とパピーさんが認めてくださり、とても嬉しかったです。“そして子供に向かって「これから上手になるから大丈夫ね」と笑顔で話してあげる”なんと100点満点なお返事の仕方!と思わず口にしてしまいました。私もそんなさらりと対応ができてしまうお母さんになりたいです。

 

親の言葉は子供に蓄積されていく。子供への愚弄は謙遜ではない。確かにそうですよね。心に刺さりました。(子供は)まだまだ言葉は喋れないですが、今から気をつけて行こうと思いました。

 

自分の両親を許せるかどうか。はまだすぐに出来るかどうかは自信がありませんが(どうしても、言われる度に今でもついカチンとしてしまうので)自分は嫌だったと伝えられるようになる日まで、まずは自分から改めていこうと思います。

今回、ご紹介した「謙遜」については以前に「私たちは謙遜だと考えて子供をけなしてしまうことがありますが、それって子供を傷付けますよ」とお話した事があったのですが、まさにそんな環境で育てられた新米ママさんの気持ちが赤裸々に綴られた内容でした。

特にご相談文にありましたように、子供時代の気持ちは、それを経験された方だからわかることで、私たちが謙遜を間違って使ってしまったら、子供はそんな風に不安になったり、不信感を持ったりする、という意味では非常に参考になるお話だったと思います。

私たちは、どうしても育てられた時の親のように振舞ってしまいがちですが、お子さんがまだ小さい今、そこに気づかれたこと。これはとてもよかったと思います。子供に対して裏表のない言動をされること。これはとても大切です。いつでも子供は聞いていますから、発する言葉に気を付けて日々を過ごしてくださいね♪

メルマガ紹介へのご許可、ありがとうございました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 石神明生 【発行周期】 毎週日曜

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