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「幻覚も見えます」八尾市いじめ暴行事件、少女からの深刻な手紙

以前掲載の「探偵が見た八尾市小6女子いじめ暴行事件の大人達によるクズ対応」で、当事案に関する警察や学校サイド、教育委の呆れるほかない対応を暴露した、現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。今回阿部さんは自身のメルマガ『伝説の探偵』で、先日行われた「2度目の第三者委員会による報告」の内容を紹介するとともに、未だに誰も責任を取らないばかりか謝罪すらしない、事件に関わった大人たちの姿勢を改めて批判しています。

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再調査委員会が「学校のずさんな対応」を厳しく非難したことがニュースとなった。

本件については、2019年11月12日にMAG2 NEWS(まぐまぐニュース!)「探偵が見た八尾市小6女子いじめ暴行事件の大人達によるクズ対応」で記事を公開しており、被害側と連携しつつ、私は事件を追っていた。

八尾市いじめ暴行事件の概要

2018年2月14日、大阪府八尾市の萱振公園で当時小学4年生であった女子児童が、同級生の男子児童が螺旋状の滑り台の上で執拗な暴力を受け、指などを骨折する暴力被害を受けたというもので、もともと、この関係はいじめ被害者と加害者であったにも関わらず、喧嘩の延長と処理され、いじめとしての対応がなされず、結果、被害女児がPTSDや大人の対応から二次的被害を受けてしまったという事件である。前述の通り、「探偵が見た八尾市小6女子いじめ暴行事件の大人達によるクズ対応」で詳しくレポートした。

2度目の第三者委員会

今回は2度目の第三者委員会による報告が報道となった。よって、1度目の第三者委員会と区別するため「再調査委員会」で表記する。

1度目の第三者委員会は、被害側に知らされることなく立ち上がり、調査を開始してしばらく経ってから、もうやってますと被害者側は知らされた。これは、いじめ重大事態におけるガイドラインに違反するものであり、その調査も十分ではなかった。

いじめ防止対策推進法やいじめ第三者委員会についてのガイドラインなどでは、学校や教育委員会などによる第三者委員会の設置があり、再調査などではいわゆる首長(市であれば市長、県であれば県知事など)による第三者委員会を設置することができる。

今回は、八尾市市長も前任調査が不十分であろうことを認め、市長による再調査委員会を設けたのだ。

私が特に注目したのは、1度目の第三者委員会でも指摘されていた4年次担任教員が誤っていじめに関する指導記録などを廃棄していたことをどうするかであり、被害女児が相談し、その記録をノートいっぱいにつけていたスクールカウンセラーの記録や証言をどうするかであった。担任教員の誤廃棄は、隠蔽工作であろうと私は考える。その時期、そのトラブルの記録がなくなることはまず無い。ただ、こうした問題に報道は「誤って」なのだから、特別な問題はないのでは無いかと考えていたようで、これに触れる報道は当時なかった。

一方、スクールカウンセラーは確かに、当初は記録はあるとした。ところが、教育委員会を通じて、被害側が情報を求めたところ、記録はなかったことになったのである。

報告書について

2019年年末に私は被害側から年内に調査を終え、1月初めには被害側などへの報告と報告公開などの調整が行われると聞いていた。

再調査委員会は2019年7月に立ち上がり、わずか約半年で調査を終えることになる。第三者委員会としてはかなり早いペースでの調査であり、何らかの見落としはないか私は心配していた。

さらに、報告は1月20日に行われ、21日は記者会見が用意されるわけだ。わずか1日で、報告内容などを検討し、何らかの意見を一般人である被害側は求められる。

これは大変なことで、できれば検討する間を持ってもらえないかと打診をしたが、一切聞き入れられることはなかった。

被害側は、学校、教育委員会、1度目の第三者委員会、警察や児童相談所というように、あらゆる機関から裏切られてきた。そうしたことからも、再調査委員会がどのような結果を出すか不明瞭である以上、あらゆる結果を踏まえ、今後のことを考えなければならなかったのだ。

さて、報告書では、21日の報道のように、いくつかの注目すべきポイントがある。

1.加害児童は、2月14日暴行事件以前から、被害女児に対して、「メスゴリラ」「ババァ」「デブ」「アホ」「バカ」「死ね」「うざい」「きもい」「二重あご」などと暴言を吐いたり、複数の男子児童と共に、押さえつけ髪の毛を束で抜き取ったり、追いかけて暴力をふるっていた。

これについては、やっと再調査委員会はいじめとして認定した。

そんなの当然だろうと誰もが思うだろう。

しかし、多くの学校や教育委員会では、こうした行為に被害者がわずかでも抵抗すれば、喧嘩扱いとなり、「いじめ」ではなく「児童間のいざこざ」で片付けられる。

加害者の親がモンペ(モンスターペアレント)であれば、その抵抗をいじめだと主張し、被害側もいじめ加害者だとされることもあるのだ。

2.2月14日いじめ暴行事件については、ほぼ一方的に被害女児がぐったりし、指の付け根を骨折するまで踏みつけられたという行為上は傷害事件の態様と変わらぬものをいじめと認定した。

これは、所轄警察が加害児童らの訴えを聞き入れ、喧嘩で処理をしていることからも、恐怖やその場から逃げるためにしたわずかな抵抗もすれば、加害行為の1つとみなされるのかという問題が生じていた。

報告書では、20回程度踏んだことが認められ、その様子と従前のいじめ行為から、わずかな抵抗は当然の抵抗であると認められたのだ。

これについても、一般感覚があれば、当然認められるし、いじめ行為を越えてむしろ犯罪行為なのだと思うだろうが、前述の通り、被害女児も加害者扱いを受けた事実があり、記録にも残っている。

こうしたことは滅多に起こり得ないが、滅多に誤りを認めない省庁や行政機関という壁をさほど権限を有しない委員会が独自に判断をできるか、忖度しないかなどに注目していた。

また、加害児童はこの暴力を兄に咎められ、左目に青痣ができ、左頬に引っ掻き傷を負ったことも認めた。

3.4年次のベテランと言われる担任教員についても書類廃棄やその指導の誤りが指摘された。この担任は、進級後に学校を去っているが、その時に保護者らに手紙を出している。そこには、このいじめ暴行事件などを暗にさして「誰も悪くない」「みんなに私は愛されていて嬉しい」という主旨を記していた。トンデモ教員なのである。

さらに、この担任が、いじめと判断すべき基準にいくつも一致する現象が起きていたのにも関わらず、被害児童に「我慢」を求め、上司には「いじめではない」と食ってかかったことも問題として取り上げている。

また、被害女児から相談を受けていたスクールカウンセラーが証言拒否をしたことも記載された。何らかの力学が働いたのか、スクールカウンセラーは立場が弱く、教育委員会や学校に逆らえるような存在ではないが、どこまで真実を闇に葬り、子供からの信頼を裏切り続けるのだろうか。

4.当時の学校長が、いじめとしての対応を怠ったことも報告書では認められた。私が行った調査では、学校関係者は2018年3月にスクールロイヤー(弁護士)に相談した際に、いじめの対応をするように勧められ、それ以降はいじめの対応をしたのだと聞いていたが、実はその後もいじめの対応はせず、5月の段階では「もめ事」と扱われ、6月にスクールソーシャルワーカーが会議において、いじめの重大事態にあたると指摘をするもスルー、校長自体は会議にも出席していないことも明らかとなった。

まるで他人事であり、校長権限の会議などでも、指導や対応を指示するような記録はないことから、この校長に教育を任せられるのかという疑問すら生じることになろう。尚、彼は、以前の『伝説の探偵』でも示したように、八尾市教育委員会の中で「いじめ問題」を担当する課の課長であった経歴がある。当然持っているだろうはずの知識、専門知識や技能を持っていると信頼や期待が寄せられる存在が、いじめを放置し、被害女児に二次被害をもたらしたことは、あまりに酷いとしか言いようがない。

5.教職員や教育委員会のいじめについての知識が乏しいことも指摘された。そして、こうした学校側の無対応と評価できる状態や教育委員会などの動きの鈍さなどが、いたずらに時間を消費し、被害女児を苦しめたことが指摘されている。

概ね私や被害側が問題視してきたことは認められた結果となった。

一般に、そんなの当たり前だろということが、いくつも確認をして、調査をしなければ認めらない世界が、こうしたいじめにまつわる世界なのだ。

そして、やはり前校長や当時の担任、教育委員会などの問題は、被害女児に二次被害を与え、その家族を深く苦しめた。この再調査委員会の結果が出るまで、およそ2年。この間、被害側に救いはあったのだろうかといえば、ほぼなかったと言えるのだ。

無支援のまま、被害家族だけが取り残されるような形となり、一部では加害者扱いを受けた。子供を救うために声を上げれば、モンスターペアレントだと誤ったレッテルを貼られることもあれば、校外のことを学校に押し付けるなと、匿名の問題関係者からネットで叩かれることもあったのだ。

市長と被害側は面談

八尾市の大松市長には、私から本件に関して意見をさせてもらった。何をおいても、被害女児の支援をして欲しい、これが私からのお願いだ。一部は水面下で行ったことだ。

これに対し、無視をしてもよいものの、大松市長は応じてくれた。本当は、再調査委員会の報告の前にでも被害側との面談を持ってもらいたかったが、報告後、市長と副市長は被害側に申し入れをして、面談の機会を設けている。

再調査委員会の報告直後の話であったので、何かが決まったわけではないが、市長側が被害側と直接話をする機会を持ったことは一歩前進と言えるだろう。

今後、市として、そして市長がその責任者として、どのように本件と関わり、いじめ問題とどう関わるか注目したい。

誰も責任は取らない

本件においては教育者の問題がいくつも指摘された。行政機関の判断も然り、本来信頼すべき機関が誤った判断をして、より被害を深くして、問題を修復できないまでにしてしまった罪はあまりに大きいと言わざるを得ない。

そして、これは記者会見となり、ニュースとなって全国に放送されたわけだ(関西ローカルだけかもしれないが…)。

本件に関わっていない一般の方がこのニュースを受け取ったとき、「そうか、こんな酷い事があったのか」と一件落着のように思えるかもしれない。

しかし、よく考えてみて欲しい。被害女児は救われたのだろうか、現段階ではやっと2年も経って、大部分のいじめが認められたの過ぎないのだ。救われたわけではない、未だに苦しみ、深く負ってしまった心の傷は癒えることはないのだ。

もう1つ、貴方に子供がいるとして、その子が通う学校にこのレベルの教師が責任者として来たらどう思うだろう。確かに人は更生する、そして、その機会がある。ただし、その前には何らかの相当な処分があって然るべきではなかろうか。

今後、こうした処分は検討されるのだろうが(それすら疑わしいところはある)公の存在が無責任であってはならない。

今のところ、誰も責任は取っていない。少なからず、謝罪をすべきであろうと思う(それで済むことではないことは当然であるが)。

最後に被害女児には、11月に取り上げさせてもらってから、少しだけ勇気を持ってもらえたように思う。私のような者が存在するだけで、ちょっとだけでも心が動いたのであれば、私も「伝説の探偵」もその意義があったのではないかと思う。

(被害女児が再調査委員会に送った手紙:被害保護者提供)

編集後記

日付を書く書類などを書いていると、もう2020年なんだ、令和も2年だねと時が経つのは早いと感じます。

八尾市いじめ暴行事件も、もうおよそ2年。期間に期限のある学生にとって、この2年間はものすごく大きなものです。

私は名誉にも、手紙に名前を載せてもらえました。

私は約束をしました。「必ず被害を証明する」と。その約束は一応は果たせたかと思います。あとは、彼女に笑顔が戻るように、どうするかです。

1つ、この件に関わる教職員や教育関係者に問いたい事があります。

「あなたは彼女(被害女児)の味方になろうとしましたか?支えよう、何かの役に立とうと行動をしましたか?」

しているという方は是非とも声を上げて欲しい。

ただし、していないという方はその職責と初心を見つめ直してもらいたい。そして、これから何ができるか考え、行動して欲しい。

私は思うのです。一人でもまともな対応ができる教育関係者が、熱意と信念を持って奔走したならば、ここまで深い被害にはならなかったはずだと。

そして、これで終わりではありません。これからが大切です。まだ足りないところもありますが、もう結論は大体出ましたね。

あとはどう行動するか?それしかありません。

私は寄り添います。

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阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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