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不祥事置き去りで野党への注文。呆れた読売社説の安倍応援団ぶり

1月20日に行われた安倍首相の施政方針演説を受け、22日から始まった各党の代表質問。野党の質問は、「桜」「IR汚職」「公選法違反」と数々の不祥事に集中しましたが、首相から明確な回答は得られませんでした。このやりとりを新聞はどう伝えたのでしょうか。ジャーナリストの内田誠さんは、自身のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』で、各紙の論調を詳しく解説。政権批判しながらも踏み込みの弱い朝日、安倍応援団ぶりをしっかり滲ませる読売の姿勢に苦言を呈しています。

安倍首相「施政方針演説」に対する代表質問を新聞各紙はどう報じたか

ラインナップ

◆1面トップの見出しから……。

《朝日》…「首相、「桜」名簿の調査拒否」
《読売》…「米弾劾「証人」判断先送り」
《毎日》…「新型肺炎 変異の可能性」
《東京》…「浅草スマートボール 打ち止めへ」

◆解説面の見出しから……。

《朝日》…「首相 繰り返す 当てこする 核心かわす」
《読売》…「野党「IR・桜」に照準」
《毎日》…「就学不明「国が対応を」」
《東京》…「基軸通貨 覇権争い本格化」

立憲・国民両党への期待

【朝日】は1面トップに2面の解説記事「時時刻刻」、4面関連記事、12面社説、13面は公文書問題に関する識者3人の意見。見出しから。

(1面)
首相、「桜」名簿の調査拒否
代表質問 IRは必要性強調

(2面)
首相 繰り返す 当てこする 核心かわす
「名簿は廃棄」守りの答弁
IR 疑惑よそに「家族で楽しめる」
2閣僚辞任 「捜査」理由に答えず

(4面)
合流破談しても 連携深化へ模索
立憲・枝野氏 「桜」・IR追及
国民・玉木氏 経済・貿易 提案
「桜」18年 招待急増
総裁選に利用か 野党追及

(12面・社説)
国会代表質問
信頼回復には程遠い

uttiiの眼

見出しに見えているのは、安倍首相の姿勢に対する強い批判。「首相、「桜」名簿の調査拒否」からは、本来拒否できないことを首相が拒否しているという非難のニュアンスが感じ取れる。

5面の社説。安倍氏に対する批判の要点は、「桜を見る会」にしても「IR汚職」、「2閣僚辞任」にしても、「自ら積極的に疑念を晴らそうという様子」が見られないこと、「後ろ向きの姿勢」ということに尽きる。

安倍氏のこうした姿勢に対する、メディアとしての《朝日》による批判は、残念ながらこれ以上には深まっていない。しかし、疑念がここまで具体的で深刻なものになっているのであれば、疑念は、最早、疑念を超えた別のものに転化していかざるを得ない、いや、そうあるべきだ。

国会を無視、愚弄して真相解明を阻もうとする安倍政権、民主主義の破壊者としての安倍政権の姿が見えているのに、有権者が審判を下すべきだというところまでは書き切れないのが《朝日》的な限界なのかなとも思う。しかし、それでも、社説を締め括るに当たり、事態を打開するためには野党の力の結集がどうしても必要だとして、次のようなコメントを書き付けている。

「両党(立憲民主党と国民民主党のこと…)は昨年来の合流交渉がまとまらず、当面は別々の党のまま国会の統一会派として連携することになった。あつれきを引きずることなく、結束して政権に対峙し、民主主義を立て直す役割を忘れてはならない」

両党に民主主義を立て直す役割が期待されているというのは、よく噛みしめるべき言葉だろう。

骨太の論戦を…ですか

【読売】は1面左肩と詳報9面、関連記事が3面と4面に。見出しから。

(1面)
首相「IR丁寧に進める」
衆院代表質問 秋元議員逮捕 陳謝

(3面) 野党「IR・桜」に照準
首相、従来の主張で「幕引き」
改憲論議 首相呼びかけ
前進は不透明
野党は将来展望を明確に示せ(社説)

(4面)
「共同会派 事実上の政党に」
野党合流先送りで
「結婚しなくていい」やじ 代表質問

uttiiの眼

安倍応援団としての《読売》は、この国会報道でも自らの役割に徹しているようだ。見出し1行目に「首相「IR丁寧に進める」」は「ニュースの安倍化」原則に適っているだけでなく、どうやっても「逃げ」を打つことしかできそうにない「桜」関連の問題ではなく、IRに関するところで発動されているのが特徴だ。

「前向き」が演出されているわけだが、自分に掛けられた法律違反その他の疑惑に全て頬被りしたうえでなら、誰だって前向きにでも何にでもなれるだろう。改めて、与党に膨大な議席を与えてしまったことの恐ろしさが身に染みるが、そのような「前向き」を真に受ける《読売》には呆れるほかない。

社説はなんと、野党への注文ときた。「半世紀ぶりに五輪が開催される節目だ。国の進路について、与野党は骨太の論戦を展開すべきだ」という言い方は、様々な不祥事を一括して過去に置き去りにし、無視して「未来」を語ろうというもの。これ以上無責任な言い分があろうか。

さすがに《読売》でも、「桜」の問題に触れないわけにはいかなかったようで、「行政への国民の信頼を揺るがしかねない」と批判してみせる。そして、「再発防止策の徹底が求められる」と使い古された言葉でコメントしているが、そもそも真相の解明を安倍政権が妨害・阻止しようとしている疑惑については一切触れてもいない。

肝心な点になぜ答えない

【毎日】は1面中央から。関連で2面の「検証」、5面社説、27面社会面に関連。見出しから。

(1面)
「桜」再調査を否定
首相 IR推進強調

(2面)
「桜」説明 ごまかしだらけ
首相答弁 法政大・上西教授が斬る
「ホテル側が…」連呼
「ご飯論法」から開き直り

(5面)
IR汚職 攻防幕開け
かわす首相、主張平行線
立・国 政府追及は共闘
代表質問 事前確認で配慮
「安保」柿返礼に「桜」餅
肝心な点になぜ答えない(社説)

(27面)
「桜」新資料と政府説明 ズレ
「政治家」枠 800人多い?
菅氏「大きく変わらない」

uttiiの眼

1面の見出し「「桜」再調査を否定」には《朝日》と同様、首相の答弁姿勢に対する非難の感覚が見えているが、それ以上に社説の「肝心な点になぜ答えない」に《毎日》の基本的なトーンが現れている。《毎日》の社説子が「肝心な点」と言っているのは、「桜」に関する疑惑であり、次のように説明されている。

「首相と妻昭恵氏の関係者を大量に招待して、税金を使った催しを私物化したのではないか。そして内閣府が無理な説明を重ねているのは首相を守るためではないか。これが疑惑の核心だ」と。

「疑惑」の中身を繰り返し説明し、生き生きとした言葉で表現することはメディアの基本的な仕事の一つだと思う。同じ表現を繰り返しているとエントロピーが小さくなってしまい、伝わらなくなってしまう。その意味で、《毎日》は良い仕事をしている。

首相の「ゼロ回答」

【東京】は1面下段から。関連で2面に記事。見出しから。

(1面)
「桜」招待客名簿 首相が調査拒否
衆院代表質問、野党追及

(2面)
首相「ゼロ回答」繰り返す
「桜」IR汚職…迫る野党
「結婚しなくていい」自民議員やじ
夫婦別姓質問中と玉木氏指摘

uttiiの眼

4紙の中で唯一、社説で代表質問を取り上げていないのが《東京》。それでも、1面記事の見出しには「首相が調査拒否」の文言がある。「拒否」という言葉を使うことで、《朝日》同様、首相の答弁姿勢に対する非難の感覚が伝わってくる。

さらに2面は「首相「ゼロ回答」」との見出しで、本会議前には「堂々と政策論争を行いたい」と言っていたのに、これまでの説明を繰り返し、調査や資料開示を拒否したと論難している。

image by: 首相官邸

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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