ガザ地区の和平と復興を目的に、トランプ大統領が設立した「平和評議会」。しかしその実態は、想像の遥か上を行くものと言っても過言ではないようです。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、「平和評議会」の仕組みと資金の流れを検証。さらに日本が「様子見」を装いながらも巻き込まれていく構図と、その先に待ち受ける「危ういシナリオ」を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:平和を掲げる独裁者
「平和評議会」の噴飯。トランプという平和を掲げる独裁者
久しぶりに国内政治から離れますが…とは言っても日本も他人事じゃないので繋がってますが、ドナルド・トランプが真の世界の独裁者となるために設立した「平和評議会(Board of Peace)」が、いよいよ本格的に動き出しました。2月19日の初会合を前に、トランプがガザの復興に50億ドル以上(7,650億円以上)を搬出すると、15日付で自身のSNSに発表したのです。
皆さん、ご存知のように、トランプはベネズエラの石油資源を強奪するために「麻薬」を口実に一方的に空爆し、数多くの民間人を虐殺し、大統領夫妻を拉致しました。そして、グリーランドのレアメタルを強奪するために「防衛」を口実に売却を迫っています。そんなトランプがパレスチナのガザ地区を一大リゾートにしてカネ儲けをするために「平和」を口実に設立したのが「平和評議会」です。
トランプは、イスラエルとガザとの和平合意の第2段、暫定的な統治を行なう組織として「平和評議会」の設立を国連の安保理事会に提案しました。そして、昨年11月17日に設立が承認され、今年1月22日に発足式が行われました。しかし、これは、トランプが世界の独裁者となるための壮大な計画だったのです。
この評議会は「ガザの平和的復興」のための限定的な組織として提案されたのですから、本来なら「ガザの平和的復興」のためだけに活動し、復興が終われば組織は解散するのが筋です。しかしトランプは、評議会のすべての権限を自分に与えた上で、自分を「終身議長」に任命したのです。
あたしが何よりも呆れたのは、評議会の執行部が何かを議決したとしても、議長がその議決に不満なら、事後に拒否権を発動して白紙に戻せるという規定です。つまり、参加国すべてが賛成した議決でも反対した議決でも、トランプが気に入らなければ一瞬でひっくり返せるのです。
これじゃ「評議会」の意味などないし、単に「複数の国の代表が集まって議決した」という体裁を作るためだけの茶番劇団じゃないですか。その上、この茶番劇団の団長をつとめるトランプは、あと2年が過ぎてアメリカ大統領の任期が終わっても、死ぬまで「平和評議会」の議長であり続けるのです。一応、現時点では「2027年まで」と評議会の活動期間が決められていますが、こんなもんトランプの一存でいつまででも延長できるのです。
そして、そんなトランプが議長として真っ先に取り組んだのが「紛争の影響を受け、またはその脅威にさらされている地域において、安定を促進し、信頼できる合法的な統治を回復し、永続的な平和を確保することを目指す国際機関」という評議会の大前提である憲章の制定でした。これが何を意味するか分かりますか?ここには「ガザ」という言葉が入っていないだけでなく、具体的な記述が皆無なのです。
つまり、この憲章によって「平和評議会」は、ガザに限らず世界中の紛争に介入できるというスーパーウルトラ拡大解釈が可能になってしまうのです。もちろん国連安保理はトランプが勝手に決めたこの憲章を批判し、「平和評議会」が介入できるのは「ガザの平和的復興」だけだと釘を刺しましたが、トランプは国連安保理の警告など馬耳東風です。それに現実的に見ても、もしもトランプが軍事力を使ってガザ以外の紛争地に介入を始めたら、今の国連にそれを止める力などありません。
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「平和評議会を世界の警察に」というトランプの目論見
すでに国連は、イランへの空爆もベネズエラへの空爆も止められなかったし、毎度おなじみ「グテーレス事務総長は懸念を表明した」で終わりです。そのためトランプは、これほどの国際法違反を繰り返していながら身柄も拘束されずにやりたい放題。そして今度は、トランプのトランプによるトランプのための国際機関「平和評議会」を設立し、すべての権限を自分に与えたのです。
もともと国連安保理が大嫌いなトランプは、この「平和評議会」を国連安保理に変わる「世界の警察」にして、それを自分が牛耳ることで、世界を自分の支配下に置こうと目論んでいるのです。
ちなみに、この「平和評議会」に加盟するためには、どの国も10億ドル(約1,530億円)をトランプに上納しなければならないのです。この加盟金の使途はトランプに一任されているので、組織ではなくトランプ個人に上納したのと同じことです。その上、今回の「50億ドル以上(7,650億円以上)の搬出」にしても、加盟国がワリカンで支払わされるのですから、たまったもんじゃありません。
で、そんな「平和評議会」ですが、現在までにトランプから招待されて参加を表明した国は、アメリカ合衆国の他に、アラブ首長国連邦、アルバニア、アルゼンチン、アルメニア、アゼルバイジャン、インドネシア、イスラエル、ウズベキスタン、エジプト、カザフスタン、カタール、クウェート、コソボ、サウジアラビア、トルコ、バーレーン、パキスタン、パラグアイ、ハンガリー、ブルガリア、ベトナム、ベラルーシ、モロッコ、モンゴル、ヨルダンの計26国です。
一方、招待されたけど参加を拒否した国は、アイルランド、イギリス、イタリア、スウェーデン、スペイン、スロベニア、ドイツ、ノルウェー、フランスの9カ国で、カナダはトランプのほうから招待を取り下げました。そして、これら以外の多くの国々は、日本と同じく絶賛「様子見」中なのです。どうしてかと言うと、フランスのマクロン大統領が参加を拒否した場合、トランプはフランス産のワインとシャンパンに200%の関税を課すと脅したからです。
この一覧を見れば分かるように、ホイホイと参加を表明したのは、トランプ関税を食らったらヒトタマリもない弱小国と、トランプと同じ方向を向いている権威主義的な国が目立ちます。そして、ロシアは日本と同じく「様子見」のテイを取ってますが、ベラルーシが参加を表明してるのですから、水面下でトランプと繋がってるロシアも間違いなく同じ穴のムジナでしょう。
そして、先進国の大半は「拒否」か「様子見」ですが、ここに来て参加を拒否していたイタリアのジョルジャ・メローニ首相が14日、「オブザーバー参加」を表明したのです。やはりトランプ関税が恐くなったのでしょう。メローニ首相はこれまで、イタリアの憲法が「国際組織への参加は他国と平等な条件でのみ許可する」と定めているため、トランプ1人にすべての権限が集中した「平和評議会」は、この「平等な条件」に反するとして「拒否」の理由にして来ました。
しかし、EUからの参加がトランプの身内のハンガリーとブルガリアしかないとカッコが付かないため、トランプは参加を「拒否」したEUの国々に「オブザーバー参加」の打診をしたのです。そしてメローニ首相は「これならトランプの顔も立てられるし国内への言い訳にもなる」と判断して「渡りに舟」とばかりに飛び乗ったわけです。このメローニ首相の手のひら返しを受けて、イタリアの野党、民主党のエリー・シュレイン党首は「トランプに従属した!」と厳しく批判しましたが、もはやトランプに正面から逆らえる国などありません。
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3月19日に「平和評議会」への参加を命じられる日本
こうした流れの中、この日本はどんな塩梅かと言えば、表向きは「様子見」のテイを取りつつも、水面下では大久保武ガザ再建支援担当大使の派遣が決まっていて、どんなことがあってもトランプの機嫌だけは損ねないようにと用意周到です。そして、トランプからの直々の招待にデート気分で訪米した高市早苗首相が、3月19日の日米首脳会談で「平和評議会」への参加を命じられ、それを二つ返事で了解してピョンピョン跳ねてハシャギまわれば、トランプの計画もひとまず一段落となります。
その結果、日本は、トランプの計画通りに船出したトランプの個人的組織「平和評議会」に対して、加盟金という名目の10億ドルと、ガザへの搬出金という名目の分担金を数十億ドル、合計数千億円もの上納金を差し出すことになるのです。そして、また新たな権力を手に入れたトランプは、ガザのことなど二の次で、すぐにイランなどへ「平和評議会」として軍事介入し、この国際組織がガザ以外の紛争地にも介入できるのだという既成事実づくりに走るのです。
そうなった場合、今回の初会合に「オブザーバー参加」した国々はサッと身を引くことができますし、「ガザに限定して」と念を押した上で参加したEUもシレッと逃げることができます。しかし、トランプの命令で正式に参加した日本は、もはやトランプと一蓮托生なのです。
現時点の日本は、トランプ専用のATMとして言われるがままにカネを出し続けるだけで済みますが、もしも今後、スパイ防止法が導入されて国民の口が塞がれ、憲法が改悪されて自衛隊の位置づけが国軍に変われば、トランプの私兵に成り果てた米軍の下部組織として、自衛隊はイランへの空爆作戦やグリーンランドの強奪作戦にも駆り出されることになるかもしれないのです。
ま、それでも日本の有権者が選択した「日本の形」がこれなのですから、今さら何を言っても仕方ありません。あとのことは自民党と日本維新の会に投票した皆さんにお任せして、あたしは週末の競馬の予想にでも集中したいと思います。
(『きっこのメルマガ』2026年2月18日号より一部抜粋・文中敬称略)
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