トヨタ自動車が、佐藤恒治氏からウーブン・バイ・トヨタ元CFOの近健太氏への社長交代を発表しました。就任からわずか3年で社長交代という異例の短さに注目が集まっています。一見すると「サラリーマン社長のたらい回し」にも映るこの人事ですが、EVシフトで出遅れ、TeslaやBYDに生産技術でも追い越されつつある今、その裏には大きな戦略転換が隠れているかもしれません。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、著者で著名エンジニア・投資家の中島聡さんが、この社長交代劇の真意を読み解き、トヨタが「自動車会社」から「社会インフラ企業」へと変貌する可能性を考察しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです
プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。
トヨタ、わずか3年での社長交代
トヨタ自動車が、社長交代を発表しました(トヨタ電撃社長交代! なぜ? 「3年で体制変更」の理由は? 佐藤氏から近氏に! 2人が語る今後とは…セリカはどうなる?)。佐藤恒治氏が社長に就任してからわずか3年という、トヨタとしては短い期間での社長交代なのが注目を集めています。
新社長は財務畑で、ウーブン・バイ・トヨタのCFOをしたこともある近健太氏だそうです。佐藤恒治氏は、トヨタの社長に加えて、自工会会長や経団連副会長を務めて来ましたが、後者、および自工会会長や経団連副会長として、政府・業界との調整に専念するためにも、社長は別の人に任せた方が良いという、取締役会の判断だったそうです。
第一印象はネガティブだった
このニュースを見た私の第一印象は、
- 典型的なサラリーマン社長から別のサラリーマン社長への交代だ
- 技術で勝負するはずのトヨタ自動車が、財務畑の人をトップに置いては、ビジョンも語れないし、優秀な技術者も採用できない
- 高市政権との連携も、時代遅れな護送船団方式ではうまく行くはずがない
- ソフトやAIに弱いままでは、トヨタ自動車は次の時代のリーダーにはなれない
というネガティブなものでした。
しかし、EVシフトで大きく出遅れ、トヨタ自動車が誇る生産技術に関しても、TeslaやBYDに追い越されつつある今、このまま、単なる「自動車会社」として生き残るのは難しい、と取締役会が判断した、とも解釈できます。
この記事の著者・中島聡さんのメルマガ
そう考えると、
- トヨタは「自動車会社」から、人型ロボットや不動産開発も含めた次世代モビリティ社会のインフラ企業になる
- ソフトやAIや半導体は、外部から必要なものを調達する
- 日本政府と協力して、電気自動車やロボットに必要な部品や素材のサプライチェーンを日本に構築する
と思いっきり「ウーブン・シティ戦略」に振り切った戦略転換をする必要があり、その戦略の実行には、佐藤恒治氏が政府や業界との連携に専念し、近健太氏がそれに必要な組織変更と財務体制の強化に努める、という戦略も悪くないのかも知れないと思えて来ました。
トヨタは本当に「自動車会社」であり続けるのか。それとも、社会インフラ企業へと変わるのか。今回の人事は、その分岐点に見えます。
(本記事は『週刊 Life is beautiful』2026年2月17日号を一部抜粋したものです。「私の目に止まった記事(中島氏によるニュース解説)」、読者質問コーナーなどメルマガ全文はご購読のうえお楽しみください。初月無料です )
image by: MAG2NEWS