MAG2 NEWS MENU

未納がこんなにも多いのに障害年金も老齢年金も貰える場合がある

かつて国会議員の年金未納が問題となったことがありましたが、厚生労働省によると、平成 30 年度末の公的年金加入者数は 6,745 万人で、このうち未納者数が138 万人ほどいるそうです。年金保険料を未納にし続けている人は年金を請求する権利が発生しません。しかし、そういう人の身に万が一が起こった場合、障害年金は本当に請求できないのでしょうか。 無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では、著者のhirokiさんが言うには、そういう場合は「応急処理を案内する」とのこと。その応急処置の内容とは? 今回もhirokiさんが事例を挙げて詳しく解説しています。

こんなに未納だらけだったのにどうして障害年金やら老齢の年金も支給されたのか(ついでに大切な周知)

自分が大きな傷病を負ったり、死亡した場合の給付として障害年金や遺族年金という強力な保障があります。だだし年金は保険なので、そういう保険事故が起きる前に事前にちゃんと一定の保険料を納めてきたか、もしくは免除期間があるかどうかが条件となります。あまり未納が多い人は万が一が起こっても、それらの年金を請求する権利が発生しない。未納にするのは避けろというのはそういう意味の事が多い。

ただし、老齢の年金は保険料を納めた期間+免除期間+カラ期間≧10年あればとりあえずは貰える。貰えるけどもあくまで加入した期間に応じた年金での計算になり、厚生年金や共済からの厚生年金であれば過去の給与に比例した年金になる。加入期間が短い場合はそれ相当に少ない年金になってしまう。

さて、じゃあ未納が多い人は万が一が起こっても諦めるしかないのかというと、そうとも限らない。もう、絶望的に未納が多い人で、保険事故が起こってない人には応急処置を案内する。というわけで今回はそういう場合の基礎を見ていきましょう。万が一というのは遺族年金よりも障害を負った時のほうがどっちかというと重要。

1.昭和36年9月30日生まれの男性(令和2年中に59歳になる人。今は58歳)

(令和2年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!
絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。

20歳になる昭和56年9月から昭和61年3月までの55ヶ月間は昼間大学生(大学院にも行く)だったが、昼間大学生は国民年金には強制加入ではなく、加入は任意だった。学生は支払い能力が低いという判断から、強制加入除外だったが任意加入しなければ、その期間はカラ期間として老齢の年金を貰うための最低10年の期間には組み込む(平成3年4月からは学生も強制加入)。

昭和61年4月から平成3年3月までの60ヶ月間は厚生年金に加入する。この期間の平均給与(平均標準報酬月額)は26万円とします。

バブルが崩壊して会社が倒産し、平成3年4月からは非正規雇用者として国民年金に加入して毎月の国民年金保険料を支払う事になる。しかしそんな余裕もなく、ひたすら未納にし続けた。平成3年4月から令和2年2月までの347ヶ月間を未納とする。

ヘビースモーカーであり、いつ頃からか呼吸がしづらくてすぐ息切れをするようになったが、放置していた。

その後、知人から教えてもらったが、重い病気になった場合は障害年金が出る場合がある事を知るも、過去の年金記録の未納は3分の1以下でなければならないと言われた。自分はずーっと年金保険料は支払ってきてないから関係ない話だと思っていた。しかし、自分の健康に不安が出始めて令和2年7月に一応市役所に年金相談を受けに行った。

そうすると、せめて直近1年は未納は無くしましょうという事で、とりあえず国民年金保険料免除申請(その後は全額免除となる)を案内された。その結果、直近2年1ヵ月と令和3年6月までの期間が全額免除となった。

今の免除制度は1度の申請で最大で直近2年と翌年6月まで承認される(その年の6月までに申請した場合は、その年の6月まで。前年所得等による)。令和2年7月に申請したから、直近2年1ヶ月の平成30年6月から令和3年6月までの37ヶ月間が全額免除となった。令和3年7月から60歳前月の令和3年8月までの2ヵ月も継続申請により、全額免除となったとします。60歳以降は国民年金には加入義務は無くなる。

受給できる障害年金は?

さて、呼吸のしずらさに我慢できなくなり、年明けの令和3年1月23日に病院に行き(初診日)、数日後にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と診断される。通院する事になるが、外出もままならなくなって状態は悪化してしまったから障害年金を請求したいと思っていた。障害年金は原則として初診日から1年6ヵ月経過した日(令和4年7月23日。障害認定日という)以降に請求可能。なお、自分では請求する事が難しかったため、家族が代わりに請求した。

この男性は過去の未納が347ヵ月もありますが障害年金は請求できるのかというと、可能だった。なぜなら初診日の属する月(令和3年1月)の前々月までの直近1年(令和元年12月から令和2年11月)に未納が無かったから。


※ 注意

免除制度は遡って適用されますが、初診日以降に免除申請していたらこの直近1年は認められない。保険というのは、万が一が起こってから保険料納付しても意味が無いのと同じで、初診日後の免除申請も後出しジャンケンになるから認められない。


よって、障害認定日時点の診断書(障害認定日から3ヵ月以内の現症を書いてもらう)の障害等級が2級と認定され、国民年金から障害基礎年金2級781,700円(令和2年度満額。月額65,141円)の支給が決定。

過去に厚生年金に加入してた期間がありますが、なぜ国民年金からの支給のみかというと、初診日が国民年金加入中だったから。障害年金は初診日時点に加入していた年金制度で変わる。

障害認定月である令和4年7月の翌月である8月分から障害基礎年金が指定の口座に振り込まれるようになった。

受給できる老齢年金は?

さて、その後は65歳になって自分の老齢の年金が貰える年齢になるわけですが、この男性は貰えるのか。

年金記録をまとめると学生時代の55ヶ月間のカラ期間、60ヵ月の厚年期間、39ヵ月の全額免除期間(老齢基礎年金の2分の1に反映)があります。老齢の年金は、厚年の保険料納付済み60ヵ月+免除期間39ヵ月+カラ期間55ヵ月≧10年と満たしてるので貰える。ちなみにカラ期間は期間を満たすだけで、年金額には反映されない。

あれ?どうして老齢基礎年金は国民年金からの給付なのに、厚年期間の60ヵ月を含めてるの?って思いますよね。20歳から60歳までの期間は厚年加入しようが共済に加入しようが、同時に国民年金に加入してるから。よって、老齢の年金としては総額は老齢厚生年金111,150円+老齢基礎年金129,469円=240,619円(月額20,051円)が支給される。

ところで、障害基礎年金2級の781,700円を貰ってましたよね。さっきの老齢の年金と障害基礎年金は同時に貰えるのかというと、老齢厚生年金との併給はできる(平成18年4月から可能になった)。有利な年金の貰い方としては、障害基礎年金2級781,700円+老齢厚生年金111,150円=892,850円を選ぶといいですね。

あと、障害基礎年金受給者は令和元年10月から、障害年金生活者支援給付金月額5,000円(1級は6,250円)も支給されるようになっている。よって障害基礎年金2級781,700円+障害年金生活者支援給付金年額60,000円+老齢厚生年金111,150円=952,850円(月額79,404円)となる。

※ 追記

障害年金は1~5年間隔で診断書の提出が必要。その診断書の内容で等級に該当しなくなった場合は障害年金が停止される事になる。もし、2級から3級に落ちたとなると障害基礎年金は0円となる。まあ…この男性の病気は治るのは厳しい病気だから、等級が下がる可能性は低いとは思います^^; 認定医の判断で一生障害年金支給になる場合もある(永久認定という)。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座 』

【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け