好きな人にとってはたまらない「大根おろし」ですが、自分でおろすとなると少々面倒な上、毎回同じクオリティの味を出すのは容易ではないのが悩みのタネ。そんな悩みを職人技で解消し、利用者に感動すらもたらしている企業が注目を集めています。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では著者でMBAホルダーの青山烈士さんが、そんな人気のおろし器を世に出したメーカーの戦略・戦術を詳細に分析しています。
プロセスと結果
今号は、人気のおろし器を分析します。
● アーネスト株式会社が展開しているおろし器「楽楽おろしてみま専科」
大根おろしが面倒だと思っている方をターゲットに独自の「独自の目立て」に支えられた「食材を早くラクにおろせる」「ふわふわにおろせる」等の強みで差別化しています。
おろし器としては高価格帯ですが、利用者が感動するほどの、プロセス(簡単)と結果(おろしの仕上がり)を示すことで顧客から支持されてます。
■分析のポイント
「楽楽おろしてみま専科」というネーミングにも表れていますが、食材をカンタンにおろすことができるという価値を前面に出した商品です。カンタンにおろせるというのは、調理におけるプロセスの価値です。一方で結果も重要です。どんなにカンタンにおろせたとしても自分が望む形・味にならなければ、顧客にとっては嬉しさ半分ということになってしまいますからね。
つまり、何が大事かというとプロセスと結果の両方なんですね。どんなに結果がすばらしくても出来上がるまでに1日かかるおろし器やものすごい力がいるようなおろし器では、ほとんどの方が購入に躊躇するでしょう。また、どんなにカンタンなプロセスであっても甘いふわふわの大根おろしが食べたい方、辛い物が苦手な方は、シャキシャキの辛い大根おろしが出来上がるおろし器は買いません。
おろし器も多種多様なものがあり、カンタンにおろせることを訴求している商品もある中で、アーネストの売り方のうまさは、結果も訴求していることです。「楽楽おろしてみま専科」でおろした結果、出来上がるふわふわな大根おろしは食べてみたいなと思わせますし、辛い大根おろしが苦手な方、辛い大根おろししか食べたことがない方にとっては非常に魅力的に映ります。
あの「ふわふわ」という結果を出すためにあの形状になったのかそれともカンタンにおろすことを追求した結果としてあの形状になったのか、どちらが先かわかりませんが、プロセスも魅力的、結果も魅力的だからこそ、おろし器としては高価格帯でありながらも「楽楽おろしてみま専科」が人気商品となっているわけです。
今後、「楽楽おろしてみま専科」が、どのように拡がっていくのか注目していきたいです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):おろし器
- 競合(お客様の選択肢):おろし器を作っているメーカーなど
■強み
1.食材を早くラクにおろすことができる
- 力を入れなくてもおろせる。疲れない
- 時短できる
- 食べる直前にササっとおろせる
→おろしたてが食べられる - お手入れもラク
2.ふわふわで甘い大根おろしが出来上がる
- 食感がふわふわで、口溶けも滑らかで美味しい
- 水切り付きなので、ふわふわのままお皿に乗せられる
- 大根以外にも生姜やニンジン、トマト、チーズ、リンゴなど、様々な食材にも使える
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
- 職人が手作業で刃の目をひと目づつ「本目立て」をしているので切れ味抜群。食材を潰さない
- おろす目が重ならないように配列した新製法(特許出願中)でとてもスムーズにおろすことができる
上記のような、技術や製法などが強みを支えています。
■顧客ターゲット
- 大根おろしが面倒だと思っている方
- 家で大根おろしをよくする方
- ふわふわの大根おろしが好きな方
- 大根おろしを提供している料亭
◆戦術分析
■売り物、売り値
おろし器
<主な商品ラインナップ>
- 「楽楽おろしてみま専科 極み」
本体サイズ:幅12.5×奥行30×高さ8.5 cm(セット時)
重量:530g
価格:5,000円(税抜き) - 「ふわっとおろしてみま専科」
本体サイズ:幅10.5×奥行20.5×高さ5.5 cm
重量:280g
価格:4,000円(税抜き)
■売り方
- 楽天ランキング1位を獲得(おろし器ランキング)
- YouTubeで動画配信
- TV、新聞などのメディアで紹介されている
■売り場
- ネット:Yahoo!ショップ、楽天ショップなど
- リアル:キッチン用品を扱う店舗など
※ 売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
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