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TOKYO FMの「未来授業」から始まる本当の授業「福祉とは何?」

2月、TOKYO FM、JFNの「未来授業」に出演したメルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者の引地達也さんが、マスコミが発する「福祉」に関する言葉と支援の現場で感じる現実のギャップについて、その思いを綴っています。大学生向けの番組であり、インパクトのある言葉を求める姿勢に理解を示しながらも、引地さんは自身の考える「本当の授業」はその先にあると語っています。

東京FMの「未来授業」で語る「学び」はマス化するのか

今月の4日間、TOKYO FMの番組「未来授業」で「障害がある子どもたちのための“大学”」をテーマに話をしている。プロデューサーから1時間程インタビューされ、それを7分間に編集したものを4回に分けて展開するもので、話をしている私としては細切れの印象だが、聴者の「分かりやすさ」「聴きやすさ」を考えれば、短縮された7分のほうが効果的かもしれない。

番組のキャッチコピーは「FMメディアが次の時代を担う大学生へ送るエール。未来を生き抜くヒントを大学生と一緒に探す番組」だから、若者を動かす短いセンテンスのインパクトのある言葉が重要なのだろう。

そのために、支援が必要な人の学びの場、として機能しているシャローム大学校は「障害者」に限定はしていないのだが、番組が設定したテーマには「障害者」が冒頭に来ているのは、やはり巷間の分かりやすさなのだと解釈している。

自分もマスコミにいた人間として、そのキャッチーな言葉で読者や視聴者を結び付けようという意図はよくわかる。それはマスメディアに従事する者の使命でもあるから、マス化できる言葉や映像を探し発見し発出していくのは当然の流れ。ただ現場で当事者とともにいるとその現実との乖離を感じてしまう瞬間も少なくない。

特に番組は私を「福祉のプロフェッショナル」と紹介していたのには、少し居心地の悪さを感じてしまった。私は確かに福祉サービスを提供する就労移行支援事業所等を運営しているので、その道については福祉業界の他者からアドバイスを求められるケースもあるが、私も分からない部分は他者に聞くから、自分をプロだと思ったことはない。

福祉サービスではない学びの場を先駆けて作っているのは、珍しい行動ではあるが、これは「福祉」の領域ではなく、もっと広い「共生」の中での行動のつもりなのだが、やはり要支援者への取組は「福祉」で括られたほうが分かりやすいということであろう。

TOKYO FMは、未来授業をこうも説明する。「真のグローバル化とは『均質化』を目指すものでは決してありません。多様な価値観=ダイバーシティを認め、新しい価値観を生み出していくには、自由自在の発想で既存の垣根や壁を乗り越えていくことが求められます。知性、感性、野性、若い世代の3つのセンスを刺激し、グローバル化の中で自らの立ち位置、足元を見つめながら、自らのこととして思考、ここを起点として自らイノベーションを起こすように触発する。大学の講義では決して体験できない特別授業」。

つまり「グローバル」の中で「ダイバーシティ」を認め「イノベーション」を起こす、とのフローを示しているのは、時代のトレンドのようで非常にスタイリッシュではある。

一方で現場に立つと「ノーマライゼーション」「ダイバーシティ」「インクルージョン」の実現には、それを心から欲する当事者たちがおり、その切実な声があるから、行動としてはわりと泥臭い対話の繰り返しとなる。このイメージと作業の間は結構ギャップがある。

前述の3つの言葉も社会では「福祉」なのかもしれないが、本当の授業はここから始まる。それは、「福祉とは何でしょうか?」という問いである。

さらに未来授業は自らを「日本や世界を舞台に第一線で活躍し、時代の礎を築いている『知の先達』による公開授業」により「彼らがこれまで培ってきた豊かな知見に基づき、専門領域に即した具体的なテーマのもと、大学生との対話型討論を通じて、『知的エンターテインメント』としての場を提供します」とある。

若者がその豊かな感受性で福祉という言葉を既存の領域や枠組みで語るのではなく、新しい社会におけるあらゆる人との関係性の中で、要支援者に対する行動を考え、普通の関わりあいを普通に考えられれば、未来授業は素敵な存在になるはず。

私が東日本大震災の風化を防ぐために被災者らへのインタビューをラジオ放送した時、番組のタイトルは「未来へのかけはし」だった。3月11日の震災の日も近づいてきたことも相まって、今年は「未来」を意識しながら自分の責任を果たしたいとの思いを強くする。

「未来授業」はこちらからインターネットで聴けますのでお気軽にどうぞ。
障害がある子どもたちのための“大学” | 未来授業 | これからの時代を生き抜くヒントを学ぶ特別授業

image by: shutterstock

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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