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大勢で一斉授業が落ちこぼれを出す。導入すべき「画期的」指導法

長きに渡り問題視されてきたもののなかなか改善されない、公立学校における大人数学級での一斉授業。当然ながら児童や生徒個々の学力に見合った指導は不可能で、落ちこぼれてしまう子供を多数出しているのも現実です。そんな現状を改善するため、今こそITの力を使うべし、とするのは世界的エンジニアの中島聡さん。中島さんは今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で、ある「妙手」を提案しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

私の目に止まった記事

公立の数学の授業を見て感じた「悲惨さ」の正体

「1学級最大40人の児童・生徒の集団に対して、1人の先生が一斉授業を行う」というスタイルの問題点を指摘した記事ですが、これは特に新しい話ではなく、以前から指摘され続けています。

理解力の高い子供達のレベルに合わせると大半の子供達がついてこられなくなるため、学力が「中位の下」か「下位の上」くらいのところに焦点を当てて進めるしかないが、それは学力が高い子供達にとっては時間の無駄でしかないし、それでもついてこられない子供達は、たくさんいます。

特に、理数系の授業は積み重ねなので、低学年のうちに授業についていけなくなった子供達は、それ以降、「何を話しているのか分からない授業」が続くことになるため、彼らにとっても授業は時間の無駄でしかないのです。

小学校の時に、クラスに数学のテストが(100点満点で)5点ぐらいしかとれない子がいたことを覚えています。今考えると、最初の掛け算あたりでつまづいてしまったまま、授業についていけなくなってしまったのだろうと思いますが、一斉授業のシステムのままでは、彼のような子供達は、そのまま放置されてしまうのです。

そう考えると、今こそITの力を使って個別指導を行うべきだと思います。私が以前から提案しているのは反転授業flipped classroom)という指導方法にITを組み合わせたものです。

反転授業とは、家では前もって用意された講義のビデオを観て勉強し、教室では演習問題を解きながら先生から指導を受けるというものです。子供達の理解度に応じて見るべき講義を決められるので、「授業についていけなくなってしまう」ことがなくなるのです。さらに、講義のビデオは複数の学校で共通のものが使えるので、教師は「講義の準備」をする時間から解放され、逆に個別指導により多くの時間が避けるようになります。

今の時代、適切なソフトウェアを作れば、「演習問題を解きながら先生から指導を受ける」という部分もかなり自動化出来るので、ある程度学力のある子供たちの指導はソフトウェアに任せてしまい、教師は学力の低い子供達により多くの時間が割けるようになります。

講義のビデオに関しては、Khan Academyがとても良い参考になります。Khan AcademyはSalman Khanという人がたった一人で Youtube上で始めたビデオ教材ですが、反転授業に十分使えるクオリティです。

Khan Academyについてもっと知りたい方は、「Let’s use video to reinvent education」という TED スピーチを観ることをお勧めします。

私の目に止まった記事2

Tesla stock tops $1,500 to end at record – MarketWatch

このメルマガでも何度も取り上げているTeslaの株価がさらに高騰し、ついに1,500ドルを突破した、という報道です。Teslaが、第二四半期の決算を発表するのは、7月22日ですが、そこで黒字決算だった場合、S&P500indexに組み込まれる可能性が高いため、それに先んじた株の購入が進んだと見られています。

S&P500はダウ平均や日経平均のような単なる指標でしかありませんが、S&P500に入っている株しか買えない(もしくは、S&P500に入っている株を買わなければならない)ファンドが数多くあるため、そこに入ると買いが確実に入るのです。

私が11月末の「米国株式セミナー」で、「GAFAを継ぐもの」の筆頭としてTeslaの話をした時は330ドルだったので、そこから4.6倍になりました。「株式セミナー」で講演をしたのは、あれが初めてだったので、ビギナーズ・ラックだとも言えます。

株価は人々の思惑で大きく上下するので、「どのタイミングで売る・買うべきか」を判断するのはとても難しいのですが、「大きな流れ」のようなものはちゃんと情報さえ集めていれば読むことはそれほど難しくありません。

私の場合、自動車メーカーにソフトウェアを提供するビジネスを長年していたので、既存の自動車メーカーの強さや弱さが良く見えています。

その観点から言うと、自動車業界全体にCASE(Connected、Autonomous、Sharing、Electric)と呼ばれる大きな変化が訪れていますが、既存の自動車メーカーのスピードは非常に遅く、TeslaのようなITが得意な企業に、大きなチャンスが生まれているのです。

これは、マクロ的に言えば、自動車業界全体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)なのです。

書籍小売ビジネスのDXがBordersや紀伊国屋書店によって起こされずに、新規参入企業であるAmazonによって起こされたのと全く同じ理由で、トヨタ自動車やGM自身がDXを起こすことが出来ず、新規参入企業であるTeslaに起こされてしまっているのです。

私が関わっていた車載機のプロジェクトの場合、2年毎のモデルチェンジに合わせてハードウェアやソフトウェアの選定が始まるのですが、開発期間を考慮すると、その車載機を積んだ自動車が市場に出る4年前にCPUの選定をしなければならないのです。

日進月歩のCPUの世界では、4年間はとんでもない長さで、そんなペースで仕事をしていたら、Teslaに敵うわけがないのです。

ちなみに、まだ注目している人は少ないのですが、Teslaの蓄電池ビジネスにも私は大きな期待を抱いています。今後、風力、太陽光、地熱、小規模水力などの再生可能エネルギーを活用した発電が増えると、需給のバランスが崩れて電源網が不安定化します(九州電力が夏場の太陽光パネルからの電力を全部使えないのは、これが理由です)。

この問題に対する唯一の答えが、電源網に直結した大規模蓄電池で、Teslaはその技術においても、実績においても世界の先端を走っているのです。

image by: Shutterstock.com

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マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。IT業界から日本の原発問題まで、感情論を排した冷静な筆致で綴られるメルマガは必読。

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【著者】 中島聡 【月額】 初月無料!月額880円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日(年末年始を除く) 発行予定

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