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豪雨救済よりGoToキャンペーン。あくまで「人命軽視」の安倍政権

各地に甚大な被害をもたらし、多くの人命を奪った「令和2年7月豪雨」。毎年のように繰り返される豪雨被害による悲劇ですが、防止する手立てはないものなのでしょうか。メルマガ『きっこのメルマガ』を発行する人気ブロガーのきっこさんは今回、現時点では治水対策を講じるしか対抗策がないとした上で、口先だけで「国土強靭化」を繰り返すも積極的に動こうとはしない安倍首相を厳しく非難しています。

令和2年7月豪雨

「令和2年7月豪雨」と命名された7月3日からの豪雨災害によって、九州地方や中部地方など広範囲に甚大な被害が発生しました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。また、災害現場で救援救護活動を行なっている方々、ボランティアの方々に敬意を表し、心よりの感謝を申し上げます。

今回の豪雨災害は、停滞していた梅雨前線に向かって、東シナ海から暖かく湿った風が流れ込んで大気が不安定な状態となり、積乱雲が次々と発生する「線状降水帯」が生じたためと言われています。4日に南九州を襲った豪雨では熊本から鹿児島へ掛けて、6日午後から北九州を襲った豪雨では福岡、佐賀、長崎の3県をまたがるように、「線状降水帯」が気象レーダーに映っていました。

「線状降水帯」とは、雨を降らせる積乱雲が次々と発生して連なる長さ50~300キロ、幅20~50キロの細長い帯状の領域で、ほぼ同じ場所に何時間も停滞するため、特定地域に甚大な被害が生じてしまうのです。この「線状降水帯」という言葉は、多くの犠牲者が出た2014年8月の広島県の豪雨による土砂災害以降、頻繁に用いられるようになりましたが、これは日本発の気象用語のため、英語でも「Senjo-kousuitai」と表記されています。

この「線状降水帯」という言葉が良く使われるようになる前は、こちらは正式な気象用語ではありませんが、「ゲリラ豪雨」という言葉が頻繁に使われていました。何の告知もなく突然行なうバンドの「ゲリラライブ」のように、何の前触れもなく突然降り出す集中豪雨のことでしたが「戦争を連想する」などの批判から、今では使われなくなりました。

1つの積乱雲は、だいたい1時間ほどで消えてしまうため、単独の積乱雲によって発生する「ゲリラ豪雨」は、狭いエリアに一時的に大雨を降らせますが、1時間ほどで雨は上がります。しかし「線状降水帯」は複数の積乱雲が連なって発生し、1つが消えても次の積乱雲が次々と生まれるため、長時間にわたって大雨が降り続くのです。現在、日本国内で発生している豪雨災害の約6割は、この「線状降水帯」が原因だと言われています。

これまで、日本の洪水や土砂崩れなどの災害は台風によるものが多く、こうした「ゲリラ豪雨」や「線状降水帯」による災害は、地球温暖化によって近年になってから増加して来たと言われています。気象庁の過去100年の全国の降水量のデータを見てみると、年間の豪雨の発生日数が、現在は100年前の1.5倍近くも増加しているのです。

今回、甚大な被害が出てしまった九州を見てみると、昨年2019年だけでも、6月28日から7月4日にかけての九州南部豪雨、7月20日から21日にかけての九州北部豪雨、8月27から28日にかけての九州北部豪雨と、3回も発生しています。これらはすべて「線状降水帯」による豪雨であり、最近の言葉で言うと「命を守るための行動を」というフレーズがテレビやラジオで繰り返されました。

今回、あたしが何よりも胸を痛めたのは、2016年4月の熊本地震の被災地が、豪雨災害でも被災してしまったことです。熊本地震の発生から、すでに4年も経っているため、何の接点もない人たちにとっては、もう「過去の出来事」かもしれません。しかし、あたしは友人が熊本地震で被災したため、今も現在進行形の災害であり、復興なかばなのです。

今年4月、熊本県の益城町では震災から4年目の慰霊祭が行われましたが、県の造成工事に時間が掛かっていたため、この時点でも仮設住宅で不便な仮住まいを余儀なくされている被災者が1,296世帯、3,122人もいました。そして、先月末、ようやく益城町の中心部の造成工事が終わり、6月30日からこの地域に住んでいた地権者への土地の引き渡しが行なわれる予定でした。「これでようやく元の場所に家を建てられる」「やっと仮設住宅から出られる」と、多くの被災者が喜びました。

しかし、今回の豪雨で、益城町を流れる岩戸川が決壊したため、周囲の水田には大量の泥水とゴミが流れ込み、川沿いの道路はアスファルトが剥がれてしまいました。田植えを終えたばかりの広大な水田が、あっと言う間に泥水とゴミで埋め尽くされてしまったのです。岩戸川が決壊した場所は、奇しくも4年前の熊本地震で堤防が崩れ、復旧工事を行なった場所でした。

すぐ近くに住む男性によると、この場所は去年の豪雨でも決壊したそうです。そこまで分かっていたのに、どうして県は予算を付けて堤防を高くしたり浚渫工事をしたりできなかったのでしょうか。幸いにも、この地域では犠牲者は出ませんでしたが、熊本、福岡、大分の3県で12日までに身元が発表された犠牲者57人のうち、少なくとも約75%にあたる43人が氾濫した川沿いの地区に住んでおり、死因が「溺死」だったと報告されました。つまり、行政が適切な治水対策を講じていれば、助かった人たちなのです。

大きな災害で被災した人たちが、まだ復興の途中だというのに、新たな災害に襲われてしまう。まだ自宅を再建できずに仮設住宅で暮らしている人たちがたくさんいるのに、また新たな災害に襲われてしまう。これほど残酷なことはありません。そして、これは熊本に限ったことではないのです。

ちょうど2年前の2018年7月に発生した西日本豪雨による土砂災害では、多くの犠牲者が出てしまいましたが、それだけでなく、土砂崩れや洪水によって自宅を失った被災者が数多く出てしまいました。特に被害の大きかった岡山、広島、愛媛の3県では、一部で自宅再建や災害公営住宅への入居が進む一方で、未だに不便な仮設住宅での生活を余儀なくされている被災者が、この6月末の時点で1,774世帯、4,069人もいるのです。

災害直後のピーク時と比べれば、仮設住宅で暮らす世帯数は4割ほどに減少しました。しかし、生活再建の見通しが立たないまま仮設暮らしが長期化すると、東日本大震災の被災者のように「災害関連死」が増えてしまうのです。災害では一命を取り留めたのに、その後の仮設暮らしで体調を崩して亡くなってしまったり、将来に希望が持てなくなって自死を選んでしまうなんて、本当に気の毒です。

この西日本豪雨では、災害による直接死は224人でしたが、災害後に仮設住宅で亡くなり「災害関連死」と認定された人が、この2年間に74人もいます。しかし、今も仮設住宅で暮らしている被災者が4,000人以上もいるのですから、この「災害関連死」の人数は今後も増えて行くでしょう。そして、復興なかばでの新たな被災が、この「災害関連死」に拍車をかけてしまうのです。

近年の豪雨災害の原因の6割を占める「線状降水帯」は、それぞれの規模が小さいため、気象庁によると「予測は極めて困難」だそうです。つまり、現時点では治水対策を講じるしか対抗策がないのです。しかし、安倍晋三首相は、口先で「地方創生」だ「国土強靭化」だと繰り返すだけで、決して積極的には動きません。それは、この人にとって地方の災害など、所詮は他人事だからです。

2014年の広島の豪雨災害の時は、ゴルフを優先して対策を後回しにした安倍首相。2018年の西日本豪雨災害の時は、「赤坂自民亭」で宴会に興じていた安倍首相。こうした過去の対応を見ていれば、この人の本質が分かります。「Go To キャンペーン」に1兆7,000億円、米国製の欠陥戦闘機に2兆円、リニア新幹線に3兆円も税金をバラ撒くのなら、その前に公共事業として全国の治水対策を進めてほしい。これが一納税者としてのあたしの要望です。(『きっこのメルマガ』2020年7月15日号より一部抜粋)

image by: Twitter(@西村やすとし #経済再生)

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