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歴史の捏造。「台湾鉄道の父」が日本人では困る国の隠したい真実

かつて台湾を統治していた時代、国の威信をかけて現地のインフラ整備を行った日本。鉄道敷設もその例に漏れず、「台湾鉄道の父」として、とある日本人の名が語り継がれていることは周知の事実となっています。ところがここに来て、「姑息な動き」が起きているとするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』に、その動きの内容と仕掛けた人物の正体を記しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年7月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【台湾】「台湾鉄道の父」を日本人から中国人に変えようとする姑息な動き

台湾における「鉄道の父」は…日本人? 台湾で議論ぼっ発=台湾報道

台湾の「鉄道の父」は日本人ではなく中国人だとの主張をしている人がいるとのニュースです。ひとまず、「鉄道の父」は誰なのかを脇に置き、今さらこんな退屈な議論をしているのは誰なのかを予想してみましょう。聡明な読者の皆さんなら、すぐにお分かりになるでしょう。

ニュースソースを辿れば、この議論を広め、日本人と台湾人の固い絆に水を差そうとしている人物が誰なのかがわかります。以下、レコードチャイナが配信しているニュースを一部引用します。

中国メディアの環球網は13日、台湾博物館にある「台湾鉄道の父」の説明文に対し、国民党の蔡正元(ツァイ・ジョンユアン)氏が皮肉を込めた投稿をしたと報じた。

 

記事は、台湾・中時電子報の報道を引用。問題視されたのは正式な対外営業が始まったばかりの鉄道部パークにある説明文で、中時電子報によると、「台湾鉄道の父」とされたのが台湾近代史に詳しい人が思い浮かべる台湾の劉銘伝(リウ・ミンチュアン)ではなく日本人の長谷川謹介だったことがある見学者に驚きを与えたそうだ。

「台湾鉄道の父」がいつの間にか日本人に?国民党議員が皮肉の投稿―台湾

皆さんの予想通りです。言い出しっぺは、国民党の蔡正元でした。この記事は、以下のような言葉で結ばれています。

蔡氏がこの件について12日にフェイスブックに「台湾独立派は日本人を拝まなければどうやって生きていくというのだろう」という趣旨の投稿をしたことを伝えた。

「台湾鉄道の父」がいつの間にか日本人に?国民党議員が皮肉の投稿―台湾

明らかに挑発していますね。念のため鉄道事業について触れますが、清国から派遣された劉銘伝は確かに北部の一部に鉄道敷設を試みました。しかし、資金繰り、材料集め、地形調査など、様々な局面で行き詰まり、劉銘伝がつくった鉄道はとても実用性があるとは言えないものでした。特に資金が逼迫していたことは大きく、劉銘伝が作った鉄道設備は粗悪なものでした。

清の康熙帝は、父の順治帝の後を継いで満蒙八旗軍が征服した地と中華世界の両方を支配しました。やがて、1673年に起こった三藩の乱を平定して、鄭成功一族が支配していた台湾をも手に入れました。

以来、清王朝は200年以上も台湾を支配していましたが、清末の回乱(イスラム教徒の反乱)以後は、海禁と山禁を解き、劉銘伝を初代台湾巡撫として派遣しました。劉は、台湾で様々な事業に手をつけましたが、特に鉄道はオモチャのようだと言われました。木造の橋は水に流され、役人の汚職が横行しました。日本統治時代になって、はじめて当時の最新技術を用いての鉄道敷設が実現したのです。

記事によれば、『劉銘伝氏は1885年から1891年にかけて、台湾の最高地方統治官として台湾巡撫を務めた人物であり、同時に台湾初の鉄道を建設した人物だと紹介。そして台湾初の鉄道は1887年から建設が始まった』とのこと。

その後、日清戦争が1894年にはじまり、1895年の下関条約で台湾は日本に割譲されました。その後、台湾総督府民政長官だった後藤新平により1899年、長谷川謹介が台湾鉄道敷設部技師長に任命されました。

日本は、台湾統治を内地と同様に扱い、台湾でのインフラ整備には日本政府が内地の資金を投入しました。鉄道事業も、重要事項の一つとして、長谷川の指揮のもと、地形調査から鉄道敷設まで徹底して行われ、台湾縦貫線を完成させました。南北台湾を結ぶ通称「海線」と「山線」の完成は、台湾島内の物流と人流を劇的に変えたのです。

このような事実から、「台湾の鉄道の父」は誰なのかという議論をあえてするなら、答えは明白です。もちろん長谷川謹介です。近代化を成し遂げるには、持続性と資本と技術が絶対不可欠です。台湾の初代巡撫の劉銘伝の近代化政策は、後任者にすべて否定されるほど稚拙なものでした。また、持続性も資本も技術もありませんでした。あったのは中華思想だけです。

一方で、日本人の文化風土については「道」が一大特色です。江戸時代の道は東海道五十三次が有名です。道路が発達していたことから参勤交代が実現しました。参勤交代は近代日本をつくったという研究論文を読んだことがあります。

日本統治時代以前の台湾も「道」はありませんでした。港が物流の拠点だったため、栄えたのは港町とその付近だけでした。これは台湾だけでなく、かつての東南アジア全体の特徴です。台湾の道路網のほとんどは日本時代につくられました。

鉄道も同様です。日本文化は道を作る文化でもあるのです。日本は、満州を接収したときも、台湾と同様に道路をつくりインフラを整備しました。それによって現地の人々は多くの恩恵を受けたはずですが、今では日本帝国主義の爪痕として語られています。

長谷川謹介の銅像は、現在、台中公園にあります。台湾の縦貫鉄道が完成した当時、記念として作られたものであり、決して民進党政権が作ったものではありません。国民党系の議員は、八田与一の銅像を破壊したことがありました。長谷川の銅像も標的にならないとは限りません。

それはともかく、蔡正元氏の議論は、真剣に反論するのもバカらしいものです。そもそも国民党の蔡正元氏は、こそこそと裏でよからぬことをしているような人物です。2020年1月には、オーストラリアに政治亡命した中国共産党の元スパイの男性が、1月の台湾総統選挙の際に、国民党に有利な行動をしろと蔡正元に脅されたといった発言をしています。

国民党幹部に“中国の元スパイ”脅迫疑惑 「世界的醜聞」=民進党

ただ今回、蔡正元のバカ騒ぎのおかげで、2020年7月7日にオープンした国立台湾博物館の「鉄道部園区」に注目が集まったことは、せめてものプラスでしょう。日本時代の建物を修復してオープンしたこの園区は、台湾鉄道の歴史が凝縮された素晴らしい施設です。歴代の鉄道車輛の展示もあります。

台湾の鉄道ファンの聖地となるとも言われています。場所は台北市大同区で、交通も便利。鉄道園区の入場料金は100元(台湾博物館4館共通券は130元)です。コロナが終息した後に、ぜひお出かけ下さい。一見の価値ありです。

「台湾博物館鉄道部園区」オープン。旧台湾総督府鉄道部の本庁舎


 

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image by: 國立臺灣博物館 - Home | Facebook

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