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なぜ、おじさん向けの酒のつまみがこの店では女性に人気なのか?

お酒のつまみの定番といえば、珍味。どちらかと言えば年配男性が好むイメージが強いですが、若い女性向けに販売しているあるお店が人気を呼んでいます。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では、著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、珍味専門店「ホタルノヒカリ」のユニークなアイディア戦略を紹介しています。

珍味「ホタルノヒカリ」戦略

あなたの酒のつまみは何でしょうか。燻製、チーズ、サラミ、ナッツ、さきイカ、ビーフジャーキー。いっぱいありますね。いわゆる「珍味」というものです。

「珍味」は、コンビニの定番にもなっています。よく売れるからでしょう。コンビニの「珍味」は、量は少ないものの価格は100円台~300円台のものが多いでしょうか。スーパーで売られている珍味は300円~500円といったところ。

しかし、この「珍味」は、どう見てもおじさん向けの商品ですよね。ビールや酒を片手に、珍味を食べる姿が似合います。ところが、この「珍味」が、若い女性に売れている人気のお店のことを知りました。それは、2015年に誕生した「ホタルノヒカリ」です。

ギフト珍味・おつまみ専門店「ホタルノヒカリ」

1号店は「東京・虎の門」に出店。小さなお店です。その後、渋谷と大阪梅田にも直営店が出来ました。年商2,000万円から始まった売上は2019年は16,000万円。すごい伸び率です。どうして、こんなに伸びたのでしょう。このお店の戦略を知りたいとは思いませんか。

いろいろと調べてみた結果、分かりました。一番重要なポイントは、他の店で売っている「同じようなもの」を「同じようなものでなく」売っていることです。どういうことでしょう。

珍味は、スーパーでもコンビニでもどこでも同じような商品を売っています。ところが、「ホタルノヒカリ」にかかれば、一瞬のうちに「同じものではない」商品に変身してしまうのです。つまり、少しアイデアを加えれば、今までと同じ商品でも違った商品として販売できてしまう、ということがここから分かります。

どんなアイデアなのでしょう。この「ホタルノヒカリ」の加えたアイデアは、

でした。それぞれ、簡単に説明します。

ネーミングの妙

まず、商品のネーミングです。例えば、

という商品があります。この商品名をみただけでは、いったいどんな商品なのか、まるで分かりません。これだけでも、興味をそそられます。

では、これらはどんな商品につけられたネーミングでしょう。例えば、「ホタルノヒカリ」は、ホタルイカの丸干し。「午前0時のシンデレラ」は、焙り焼きした干しエイヒレ。「魅惑のRouge」は、ツブ貝の燻製。「ポセイドンの怒」は、カツオのジャーキーのことです。

それでも、商品とネーミングの関係が分かりません。どうしてこんなネーミングになったのでしょうか。実は、これらのネーミングは、勝手につけられたものではありません。ネーミングの由来があります。そう、このネーミングには物語があるのです。例えば、「小悪魔の悪戯」(甘エビの丸干し)は、エビの殻やヒゲ、足が、食べた口の中で「チクッ」と刺激するおいしさがあることから、この名前がつけられました。なるほど、ですね。

また、「秋の落し物」(秋鮭の燻製)の名前は、秋鮭の旨みをそのまま閉じ込めた恵みの秋がもたらす落とし物を頂きたい、ということで考えられました。「午前0時のシンデレラ」(干しエイヒレ)は、エイヒレを食べていたシンデレラがあまりの美味しさに終電を逃しちゃう!そうです。「魅惑のRouge」(ツブ貝の燻製)は、弾力あるツブ貝が魅力的な女性の唇そっくりなところからネーミングが決まりました。「ポセイドンの怒」(カツオのジャーキー)は、海の神ポセイドンの廻りをグルグル回遊するカツオがポセイドンの怒りの一撃でペッタンコになったとか。なかなか面白いですね。

こんな調子で、全ての商品にネーミングの由来があります。ここには何かの物語を感じさせるものがあるのです。素晴らしいとは思いませんか。きっと、お客様がこの商品を手にしたとき、このネーミングの由来だけで話が盛り上がることでしょう。ネーミングそのものが、酒の「つまみ」になってしまいます。

さらに、ポイントがあります。ネーミングだけで売れたわけではありません。パッケージデザインが、従来の珍味とは全く違っています。シンプルでおしゃれなデザインです。縦横15cm四方の半透明パッケージで統一されています。パッケージの中央に四角い透明シールを貼り、大きな文字の商品番号と、その上にホタルノヒカリのロゴ、下に商品名をプリントしたシンプルなものです。

考えましたね。全ての商品に使えるパッケージです。それに商品名を書いたシールを貼るだけで完成。商品ごとにパッケージを作る必要がありません。パッケージには商品番号が大きくプリントしてあるので、注文するのにも便利です。

ギフトセットで単価アップ

そして、次のポイントはギフトセットとギフトボックス。それぞれの商品は単価が安いので、購入単価を上げる必要があります。そのために、ギフトセットという「まとめ販売」を考えました。セット価格は3,000円前後。買いやすい価格です。これなら、客単価が上がるのではないでしょうか。

そのギフトセットも、どことなくネーミングがおしゃれです。「テキトー男のダンディーセット」「王様の週末セット」「福来ふく玉手箱セット」。さらには、日本酒、ビール、ワインそれぞれに合わせたセットも用意されています。お客様のニーズに合わせたセットの提案です。

また、そのギフトセットには、おしゃれなギフトボックスがついています。プレゼントをされた人には、それが「珍味」だとは分からないでしょう。その上、桐でできたギフトボックス(¥1,500)も用意されています。なかなか、にくいです。

つまり、ネーミングとパッケージとギフトセットで「同じもの」が「同じものでなくなって」しまいました。しかも、おじさんではなく若い女性に人気があります。さもありなん、です。

では、この「ホタルノヒカリ」の戦略は、あなたのお店でも活用出来ないものでしょうか。ポイントは、ストーリーのあるネーミングとおしゃれなパッケージです。

今、お店で販売している商品の中から選んで、メーカーさんに特別のネーミングにしてもらったり、特別のパッケージやギフトボックスを作ってもらってはいかがでしょう。きっと「同じような商品」が「同じではない商品」として販売できる気がするのです。

そして、この方法の素晴らしいことは、さしたる費用が掛からないということにあります。あなたがネーミングやストーリーを考えれば、費用は掛かりません。パッケージにしても、「ホタルノヒカリ」方式をとれば、費用はかさまないでしょう。

ただし、ここはあなたのセンスが必要です。お客様の興味を引くネーミングと、そのストーリーを考えなければいけません。パッケージデザインもセンスが必要です。ご自分でできなければ、外部の人に頼むという手もあります。

もう、メーカーさんや問屋さんが持ってくる商品を待っているだけではいけない時代になりました。「ホタルノヒカリ」のように、勇気をもってチャレンジしていきましょう。

今日のツボ■

image by: Shutterstock.com

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ワン・トゥー・ワンコンサルティング代表。スポーツ用品業界での経験と知識を生かし、業界に特化したコンサルティング活動を続ける。
スポーツ用品業界在籍33年の経営コンサルタントが、スポーツショップの業績向上法について熱く語ります。スポーツショップのために書かれた、日本初のメルマガです。ここには、あなたのお店がかかえている問題を解決するヒントがいっぱいです。

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【著者】 梅本泰則 【発行周期】 週刊

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