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アクセルとブレーキの踏み間違い?首相官邸の迷走は危険運転状態

東京都を中心に再発した新型コロナウイルスの感染の波は全国へと拡がり、ついには1日の感染者数も過去最高を更新する事態となりました。経済活動を進めながら感染抑止も行なう政策は理解できても、実際には目指す方向には進んでおらず、「危険運転」の状態と車の運転に譬えるのは、メルマガ『8人ばなし』の著者、山崎勝義さんです。アクセルとブレーキを操るドライバーであるところの首相官邸が、命を預かっているという自覚も責任感もない素人ドライバーでは、任せられないし大惨事は免れないと警告しています。

アクセルとブレーキのこと

「アクセル」と「ブレーキ」。普段運転をしない人にとっても、このひと月ですっかり聞き慣れたワードとなってしまった。一応説明しておくと車の運転において「アクセル」は加速、「ブレーキ」は制動を意味する。ツーペダル式の車の場合、通常アクセルは右側にあり右足で操作し、ブレーキはその左側にありこれも右足で操作する。

両方右足で操作する訳だから当然両方同時には踏めない。この操作ルールは相反する入力を同時に車にしないためにある。ただし、このルールを敢えて破り、左足ブレーキ、右足アクセル、と同時に踏んだ場合はブレーキ(即ち、制動)が優先される。安全のためである。

コロナ禍の今「アクセル」は経済活動、「ブレーキ」は自粛要請のことであるが、この操作がどうにもうまくない。まるで初めてハンドルを握る教習所1日目の人のようにガチャガチャである。こうなるからには何か大問題があるに違いない。それを考えてみようと思う。

そもそもアクセルとブレーキは独立機構である。この、1つの入力に対し1つの出力という明確さが操作系を分かり易くしているのである。今、国のコロナ対策の基本方針を決めているのは、専門家会議を“発展的に解消”したことで生まれた分科会である。これが頗るまずい。アクセル・ブレーキ混合機構だからである。そのメンバーを見ても分かるように、医師、科学者、経済学者、マスコミ代表、法曹、知事等々、まさにごった煮である。諮問機関がこれでは施策が迷走するのも当然と言えば当然である。

ここで誤解の無いように断っておくが、広く意見を聞くことには大賛成である。ただ聞き方、もっと正確に言えば聞かれる側のあり方が問題なのである。先に分科会のことを称してごった煮と言った。ごった煮なら、それを美味いとするも不味いとするも食べる者(=行政担当者)次第である。今さらだが彼らの味覚は到底信用できるものではない。

本来のアクセルとブレーキがそうであるように、ここはその役割を完全に分けるべきなのである。つまり、アクセルとしての「経済再生会議」、ブレーキとしての「新型コロナ対策会議」といった、二本立ての諮問機関で行くべきなのである。この時大事なのはアクセル会議、ブレーキ会議ともに情報公開である。議事録をきちんと残し、それぞれの会議で何がどう議論されたか国民に明らかにすることである。そして、その両会議の答申を受けた行政担当者である官邸がドライバーとしての自覚と意志を持って加速か制動かを決める。これがまっとうなやり方というものであろう。

然るに現状はどうかと言うと、会議の内容もよく分からなければ、担当大臣の会見も一昨日、昨日、今日と何の違いがあるのかもよく分からない。それなのに感染者はリアルな数字として日々増加している。改めて今までのことを振り返ってみても、その施策が一体誰の責任なのかよく分からない(ただし功績に関しては主張することを忘れない)。それどころか責任感すらどこからも感じられないのは自分だけだろうか。

せっかくの比喩なのでこのまま車で続けさせてもらうと、今の日本はさながらつづら折れの山道をブレーキとアクセルを駆使して上る自動車である。コーナーを前にブレーキングが遅れれば転落事故、それを恐れてアクセレレーションを躊躇えば失速、エンスト、ガス欠、というふうに一瞬の油断が大惨事につながる、そんな状況である。

そんな状況にもかかわらず、ド素人同然のドライバーが運転する車に乗せられているとしたら堪ったものではない。「『Go To キャンペーン』の結果、感染が全国に拡がったらそれはもう人災である」どこかの自治体の首長がこのようなことを言った。合わせて言っておく。「全ての自動車事故は人災である」。

image by: Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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