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軽んじられるコロナ分科会。政府が「第2波」と言いたくない理由

東京都の新型コロナウイルス感染者が4日、3日ぶりで300人を超え、8月としては3日目で早くも1000人を超えました。沖縄をはじめ、各地でも過去最高の感染者数を記録するなど、増加の波はとどまることを知りません。しかし、政府はなぜか「第2波」という言葉を使おうとしないのですが、その理由は何なのでしょうか。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんが、新聞各紙の報道を分析。さまざまな角度から「第2波」発生の可能性を炙り出しています。

コロナ「第2波」を新聞各紙はどう報じたか?

【ラインナップ】

◆1面トップの見出しから……。
《朝日》…被災住宅 半壊も再建支援
《読売》…日銀 起業支援延長を検討
《毎日》…コロナ感染4万人超
《東京》…お盆帰省 政府ちぐはぐ

◆解説面の見出しから……。
《朝日》…豪雨 防災行動計画の先進地襲う
《読売》…有人飛行 「民」が推力
《毎日》…対中包囲網 困惑と思惑
《東京》…対中政策 非難の応酬

【プロフィール】

■「第2波」と言わない訳■《朝日》
■マスク至上主義?■《読売》
■子どものストレス■《毎日》
■もう従っていられない■《東京》

「第2波」と言わない訳

【朝日】は1面の定番コラム「天声人語」。新型コロナを巡る「言葉」について興味深い考察。

日本に古来よりある「言霊」の考え方。政府が設けた「専門家会議」の名には力強さがあったという。これが廃止されて、その役割を継いだのが「分科会」。メンバーは重なるものの、軽くなったような気がすると。

菅官房長官はこの「分科会」に対して「帰省に関する注意事項について専門家の意見を伺う」と言っているらしいが、これでは「帰省の是非は議論してくれるな」と言っているかのようだと。専門家の議論が観光促進策と矛盾するのを恐れているのではないかというのが人語子の想像。「Go To」事業に慎重だった「分科会」は結局無視された。

知事たちが口にするようになった「第2波」。政府の高官はなぜかその呼び名を避けている。「言葉を封じているうちは手を打たなくてすむとでも、考えているかのように」。

●uttiiの眼

なるほど、「専門家会議」の名称を廃して「分科会」と呼び名を変えたのは、まさに軽んじるためであろう。人語子が言うように、実際に「分科会」は軽んじられている。しかし、尊重されている「分科会」の意見もある。

無症状者に対するPCR検査に後ろ向きの専門家の意見については、政府は墨守している。その方が、無為無策を正当化できるからであろう。都合の良い意見だけをつまみ食い的に“採用”する政府。これでは感染の拡大を抑え込むことは出来そうにない。

ただ、専門家の意見をうまく引き出して政策に生かすのは並大抵のことではない。「ご意見拝聴」ではなく、政治家や官僚は、専門家の見方にロジカルにチャレンジし、その意見に基づく政策が実施可能か否かをギリギリのところまで突き詰めるような知的な作業が必要と思われる。

マスク至上主義?

【読売】も1面の定番コラム「編集手帳」から。真夏のマスクについて。

全国各地で真夏日となった昨日、手帳子は「十数分歩く間にマスクのなかが汗まみれになった」という。また、杖をつきながら歩道を歩く高齢男性を見掛けた手帳子は、男性が立ち止まっては鼻の部分を下げて深呼吸をしている様子に、「マスク着用があたかも外出の際の義務であるかのような風潮を考えてしまう」と言う。

●uttiiの眼

手帳子が目撃した高齢男性は、「人通りはまばらなのに、駅までの道でマスクを外すことはなかった」と。熱中症を警戒しなければならない状況で、マスクを着用し続ける必要などないのだということを、もっとアナウンスしないと、熱中症のリスクが高まってしまうように思う。

日本に限らず、マスク着用への同調圧力は強く、航空機内でマスク着用を巡って殴り合いの喧嘩も海外では起こっているようだから、熱中症の危険は理解していても、同調圧力だけでマスクを外せなくなっている人もおおいのだろう。

同調圧力の強い社会を一気に変えることは不可能と思われ、何か言いうるとすれば、「寛容の精神」でことに対処するようにしようと呼び掛けるぐらいのことか。

マスクをしていない人には、何か、私には理解できない事情があるのだろうと考えて、少なくとも自身に影響がない範囲ではとりあえず「許容する」という考え方であれば、もう少し穏やかな社会になるのだろうに。

子どものストレス

【毎日】は5面の社説1本目を取り上げる。タイトルを以下に。
コロナ下の夏休み
子のストレスに目配りを

新型コロナの影響で、各地で夏休み期間が大幅に短縮されている。国立成育医療研究センターの小中高生へのアンケート調査によれば、「コロナのことを考えると嫌な気持ちになる」とか「最近集中できない」などの回答が3割から4割に達し、ストレス症状が示されたという。自傷行為や、家族やペットへの暴力などは約1割、小学生に多かったという。

●uttiiの眼

総じてストレスが高くなっているのはその通りだろう。突然の休校措置、再開後も感染対策を取りつつの授業、家族共々自粛を強いられて、休日にもストレス発散が難しい状況に、日本中の子どもが置かれた訳なので、影響は避けようがない。

《毎日》社説氏の処方箋は、「子どもらの不安を大人が受け止め。和らげることが大事だ」というもの。

「身近な公園や河川敷で一緒に自然観察」、
「親のお気に入りの図書を子どもに薦めるのもいい」などと言っている。

一方で「子どもが1人でゲームにのめり込むケース」は心配だとして否定的。なんだか、随分古典的な家族像を前提に「対策」を考えているらしいことがバレバレで、これでは現代の子どもたちはかえってストレスが溜まる一方になりそうで、心配だ。親子関係も千差万別。一緒に虫取りをしたい子どももいるだろうし、親が好きな本を自分も読んでみたいと思う子どももいるかもしれない。

しかし、共通の処方箋などはないと知るべきで、敢えてあるとすれば、以前よりも子どものことに関心を持つ、子どもの言い分に耳を傾けてやる、その努力をすること…それ以上の表現は頭に浮かばない。

もう従っていられない

【東京】は24面に、あらたな時短要請が行われた東京都内の繁華街の様子を報じている。見出しから。

都内 時短要請スタート
「従い続けるのは困難」
店舗の対応まちまち

都が酒類を提供する飲食店とカラオケ店に対し、午後10時までの時短営業を要請していることを巡っては、
外食大手の多くが時短営業に応じているのに対して、感染予防の効果に疑問があるとして応じないチェーンもあるという。

都は要請に全面的に応じた中小の事業者に対しては協力金20万円を払うが、家賃や人件費の負担をカバーできる金額ではなく、これまで以上に飲食業界とカラオケ業界の経営悪化に拍車が掛かる恐れがあるという。カラオケチェーンの運営会社は「雇用を守らなければならず、従い続けるのは厳しい」と言っている。

●uttiiの眼

政府や都の施策はいつもそうだが、自粛したり要請に応じたりする側から見れば、結局のところ「見通しが立たない」状態に置かれることになる。このことが最大の問題。

イタチごっこのような状態から抜け出すための方策こそが必要なのだが、その有力な選択肢と思しきPCR検査の拡大(「誰でもいつでも何度でも」)に、なぜかこの政権は消極的で、一向に取り組もうとしない。

image by : Ned Snowman / shutterstock

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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