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人類を幸せにする最終手段は「冬眠」。人工冬眠で不老不死も可能に?

人間の体には驚くべき能力や特徴が備わっていますが、長い間多くの科学者たちから抱いている疑問のひとつに、「人間は冬眠できるのか? 」というものがあります。もし人間が冬眠できるようになれば、世界は劇的に変化するはずです。そんな中、驚くべき論文が発表されたと語るのは、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で健康社会学者の河合薫さん。河井さんが論文の内容を紹介しながら、「人工冬眠」実現の可能性に迫ります。

あなたも「人工冬眠」してみませんか?

今回はいつもの社会問題ではなく、少々ゆるめの話題です。

先日、「おお!!遂に!!」と狂喜乱舞する論文が、英科学雑誌「nature」(電子版)で発表されました。原著論文のタイトルは「A discrete neuronal circuit induces a hibernation-like state in rodents」。邦訳は「哺乳類の“冬眠ボタン”の特定」で、実験を行なったのは筑波大学の桜井武教授らの研究グループです。

内容は一言でいうと「人間が冬眠する時代が到来するかもしれない」というもので、これが実現すれば、医療の治療で活用できたり、火星への有人探査が可能になると期待されています。


image by : shutterstock

“冬眠ボタン”は、神経細胞集団(Q神経)と呼ばれ、体温と代謝を制御する機能を持ちます。Q神経は脳の視床下部に存在し、Q神経を人為的に刺激するとマウスの代謝を大きくかつ可逆的に低下させることが可能で、その低代謝な状態を研究グループは「QIH」と名付けました。

 QIHでは、冬眠と同様に体温の設定温度が低下。一方体温は大きく低下しているにもかかわらず代謝は適切に制御されていました。これらの特徴は冬眠中の冬眠動物においてのみ報告されていることから、QIHは冬眠によく似た状態だと結論づけたそうです。

また、QIH経験群と未経験群を用いて、マウスの運動能力・記憶力などを計測した結果、両群に差はみられず、脳・心臓・筋肉など諸臓器の組織観察においても差がみられませんでした。さらに、QIHを同一個体で 繰り返し行うことも可能でマウスより約10倍大きいラットにおいてもQIHでの低代謝が確認できたそうです。

研究グループによれば、人を含めた他の哺乳類にも同様の神経回路が存在し、機能する可能性があり、人間のような冬眠をしない動物でも冬眠状態を経験できる可能性があるとのこと。つまり、「人工冬眠」が実現できるかもしれないのです。

冬眠で実現する医療革命と夢のライフスタイル

そもそも人類の祖先は氷河期を生き延びてきたため、「厳冬に耐えるシステムが人間には組み込まれているのではないか」という議論は世界中で古くからありました。実際、極低温状態での生存例は世界で報告されています。

2012年2月、スウェーデン北部の林道で約2カ月間、食料なしで雪に埋もれた車の中にいたという男性が通行人に発見されました。報道によれば男性の体温は31度前後。まさに冬眠状態だったといいます。

日本でも2006年に六甲山で遭難した男性が24日後に救出され、体温は22度の低体温でした。当初、男性は「焼き肉のたれで生き延びた」などと報じられていましたが、実際には遭難から2日後に意識を失い、発見されるまで水すら飲んでいなかった。発見されたとき男性は浅い呼吸をしており、「まるで冬眠しているようだった」そうです。

もし、人間でも冬眠ボタンを押すことができれば、組織の酸素要求量を大きく下げることが可能となり、重症患者の搬送に役立ったり、寝たきり老人の筋萎縮の治療など、 さまざまな医療現場で応用が期待できます。将来的には、人類の宇宙進出に大きく貢献できる技術になるかもしれないのです。

個人的には…かねてから夢だった「冬眠」ができるようになれば、大嫌いな冬は冬眠し、夏に働くという夢のライフスタイルが手に入るかも!と喜んでいます(笑)。あるいは今回のコロナのような感染症対策でも、冬眠できれば無理なく接触が減らせますよね。

いずれにせよ、冬眠現象の本質は、通常では耐えられないような低体温・低代謝になぜ長期間耐えることができるのか、という点にあるとのこと。それが明らかになれば、体内で「部分的冬眠」を作れるかもしれないのです。

医学や科学の発展には、恐さも付きまといますが、いい形で役立つことを願うばかりです。冬眠ライフスタイルも…究極の生産性向上ですよね?(笑)

みなさんの意見もお聞かせください。

image by : shutterstock

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
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