国際社会の猛烈な反発を物ともせず、香港の自治権と言論の自由を奪った中国。習近平の中国共産党は、その先に何を見据えているのでしょうか?メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』を発行する黄文雄さん(評論家・台湾出身)は「中国には台湾併合を急がねばならぬ事情がある」と分析し、「台湾の次に狙われるのは沖縄」として、日本に対しても注意を呼びかけています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年8月12日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
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香港潰しの次に、中国は確実に「台湾」を狙う
● 中国、コロナでも北戴河会議を決行 長老不満も習主席、権力基盤に自信
香港での騒動の一方で、中国では恒例の北戴河会議が行われたようです。北戴河会議とは、例年夏に行われる、党の幹部や長老たちが河北省の北戴河に集まり、重要事項を協議する非公式会議のことです。
米中問題や香港問題、そして2022年の共産党大会での習近平の続投問題などが話しあわれたと言われています。
今年は新型コロナウイルスを理由に会議の開催が見送られると思われていましたが、これが開かれたということになれば、習近平が自身の権力基盤にかなりの自信があるということではないかと、産経新聞は報じています。
その一方で、香港では国家安全維持法の施行を強行し、西側諸国の反発も承知の上で、周庭氏らを逮捕しました。
その狙いは、台湾への脅しの意味があると思いますが、単なる脅しのみならず、いよいよ習近平は台湾統一へと乗り出そうとしているのだと思われます。香港の民主活動を抑え込めば、次は台湾です。2019年の香港デモの際、台湾では「今日の香港は明日の台湾だ」という言葉がさかんに言われました。
そして、その香港ではついに香港人の自治権も言論の自由も奪われました。そうなれば、次は台湾ということになるのは自明のことです。
李登輝元総統が逝去されたとき、中国国務院台湾事務弁公室の朱鳳蓮報道官は、「『台湾独立』は破滅への道だ。国家統一、民族復興という歴史の大勢はいかなる人物も勢力も阻めない!」とする短い談話を出し、台湾を牽制しました。
これまで中国側は台湾に、「一国二制度」を受け入れるように求めてきました。しかし、香港がこのような状況になった以上、中国が「一国二制度」を守るはずがありません。
5月末に行われた中国の全国人民代表大会(全人代)での李克強首相の政府活動報告では、昨年までの「平和統一」を目指すという表現から、「平和」が抜けて、「統一」を目指すという表現になりました。そしてこのときの全人代で、香港への国家安全維持法制定を決定したのです。
これまで、本メルマガで述べてきたように、習近平にはこれまで大した成果がありません。むしろ、米中対立を激化させ、台湾では独立派の蔡英文政権が2期目を迎え、武漢で新型コロナウイルスを発生させるなど、中国にとってマイナス面ばかりです。
その一方で習近平は、国家主席の任期を撤廃し、自らの名前を冠した思想を中国共産党の規約に盛り込むなど、自らに権力を集中させ、さらにはその力をいつまでも保ち続けようとしています。
しかし、建国の父である毛沢東、急速な経済発展を実現させたトウ小平の改革開放政策に比べて、習近平は何の功績もありません。
習近平には、台湾併合を急がなくてはならない事情がある
習近平は2022年の共産党大会で、総書記3期目を狙っていますが、そのためにも、台湾併合を急がなくてはならないわけです。何の功績もなくして、権力をいつまでも掌握していることは、長老をはじめ党内からも批判が噴出し、失脚につながる可能性があるからです。
中国は、香港立法会議員の任期を1年延期しました。これにより、香港での議会選挙が1年間延びました。いま香港で選挙を行えば、民主派による反中キャンペーンで香港が再び大混乱するという懸念からでしょう。だから国家安全維持法で民主派を締め付け、香港を大人しくさせている間に、台湾統一に集中しようと考えているのではないかと思います。
そうなると、台湾にとって今年、来年が大きな正念場になると見て間違いありません。すでに台湾では今年1月の総統選挙で蔡英文が再選し、あと4年は民進党政権が続きます。また、次の大きな選挙といえば2022年の統一地方選挙ですが、2018年の統一地方選挙では国民党が勝ちすぎたため、2022年は国民党が議席を減らすと見られています。
しかも、蔡英文は新型コロナ対策の封じ込めに成功したため支持率も高く、これが急速に低下することも考えにくいでしょう。
中国お得意のフェイクニュースで選挙をかき乱すことも、民進党政権を追い落とすことも、しばらくはできないとなれば、軍事侵攻など強硬手段に打って出る可能性も否定できません。香港の状況を見れば、もはや中国は国際社会からの非難などを気にしている余裕もないようです。
もちろんそうなれば、アメリカとの軍事的対立が激化するでしょう。高雄市では親中派の韓国瑜がリコールされたことで、これまで実現しなかったアメリカ海軍軍艦の高雄市寄港が現実のものとなる可能性が高まっています。
台湾の次は「沖縄」。日本は人民解放軍を撃退できるか
台湾国防部は2018年に「中共軍事力報告書」を発表しましたが、そこでは、中国は2020年までに全面的な侵攻作戦能力の完備を目指しているという見方を示しました。そして、中国が武力侵攻する可能性があるのは、「台湾による独立の宣言、台湾内部の動乱、核兵器の保有、中国との平和的統一を目指す対話の遅延、外国勢力による台湾への政治介入、外国軍の台湾駐留などが起きた際だ」と分析しています。
● 中国、台湾侵攻準備を2020年までに整える方針=国防部報告
アメリカの台湾支援やアメリカ軍艦の台湾寄港などは、外国勢力による台湾への政治介入や外国軍の台湾駐留にあたるとして、中国が軍事行動に出る可能性があるということです。
台湾軍も、今年7月16日に、中国軍の侵攻を想定した軍事演習を行いました。台湾周辺において、最近、中国軍の活動が活発化しており、中国空軍機の飛行や空母遼寧などの艦隊の台湾周辺航行などが相次いでいます。
もっとも、アメリカと軍事対立するには、カネ(軍事予算)がかかりすぎるというネックもあります。新型コロナ問題で中国には約2億人の失業者が生まれ、6億人の極貧層がいます。
そして、中国が仮に台湾を制圧したとしても、台湾人は香港以上に抵抗するでしょう。統一したとしても、それを維持することが難しいはずです。
その一方、台湾は戦後75年にもわたって、中国人であることに誇りを持つよう洗脳教育が行われ、中国からのスパイも多く潜んでいます。ですから、これからも対中の備えが欠かせないのです。
香港の次は台湾、その次に中国は沖縄を狙っています。香港問題だけではなく、中国がその次に何を狙っているのかということについて、日本人はもっと注意すべきだと思います。
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