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大人は聞いてくれない。コロナでストレス抱える子供達の心を守れ

新型コロナウイルスを巡る社会の反応は、子供たちの心に大きな影を落としているようです。とある調査によると、実に72%の子供に何らかのストレス反応が認められたとのこと。そんな状況を改善するため、大人たちは今、何をすべきなのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんが今回、自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で考察しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

ぼくたち子供を「ストレス」って言わないで!

「イライラしたり気に入らなかったりするのはわかるけど、もう少しだけ子供のことも考えて欲しい」

「『子供が家にいるのがストレス』って言ってるけど、親だけじゃなく子供も同じ。目の前で存在を否定されたらつらい」

「子供をばい菌扱いしないで!」

「大人はお酒を飲みに行けるのに、子供が遊ぶのはダメなの?」

実はこれ、国立生育医療研究センターが実施した「コロナストレス」に関する調査で、子供たちから寄せられた「大人に伝えたいこと」の一部です。調査は6月~7月に行われ、全国の子供(7歳~17歳)と保護者、あわせて6,772名が回答しました。

その結果、上記の回答に加え、

など、子供たちがかなりのストレスを感じていることがわかりました。

ストレス対処スキルを身につけてる大人でも、日常が失われ、会いたい人にも会えず、やりたいこともできず、「コロナ感染何名」「重傷者何名」「外出は自粛しましょう!」「三密は避けましょう!」とテレビやSNSで繰り返されるのは相当のストレスなのですから、子供にとってはなおさらのこと。

加えて、冒頭の言葉からわかるように、子供は大人が考える以上に、「大人たちの言動」に敏感なのです。

小中高一斉休校になってからは、「子供が家にいるのがストレス」「子供の食事を考えるだけでストレス」といったミニ特集は、テレビなどでも度々報じられていました。発信する側の一人として、…胸が痛い、といいますか。子供に申し訳ないといいましょうか。

とにもかくにも、子供たちは大人が考える以上にストレスを感じている。しかも、子供は「自分がストレスを感じている」と認識できないケースが多いので、この調査結果は極めて貴重な情報と言えるでしょう。

これまでも地震や豪雨など災害が起こるたびに「子供のストレス」は問題になってきました。阪神淡路大震災のときには、「子供のストレス症状は時間が経過してから顕著になる」という結果が得られ、PTSDなども注目されるようになりました。

また、今回のように「学校」が休校になったことで、親子関係のみならず子供同士の人間関係にも、さまざまな問題が生じてます。

ちょっとでも具合が悪いと、「コロナだ!」と騒ぎ立てられ、親が医療従事者というだけで「いじめ」の対象になる。そういった言動は「見ている」傍観者の子供たちにもストレスになります。

実際、私が関わっている不登校の子供たちをサポートする団体にも、「学校がおもしろくない」という声が多く寄せられていて、「学校に行く意味がわからない」「学校に行くのがめんどくさい」「勉強なら家でもできる」といった具合に、「学校に行く」という行為そのものにストレスを感じてる子供が増えてるのです。

そして、専門家は必ずいいます。「子供の不安に寄り添ってください」と。「コロナ感染の不安がいじめなどにつながるのだ」と。全くその通りだし、こういった見解に異論は1ミリもありません。

でも、その前に「大人たちの言動」も見つめ直して欲しいのです。件の調査で子供の32%が「コロナに感染したら秘密にしたい」と回答していますが、なぜ、秘密にしたいのか?答えは実にシンプル。大人社会で「コロナに感染した人たちへのバッシング」が行われているからです。

子供社会は大人社会の縮図です。

8月~9月は「子供の自殺」が多い時期です。悲しい思いをする子供を一人でも減らすために、「私」たち自身が無用な誹謗中傷を即座にやめるべきです。

奇しくも文科省が差別につながる言動を行ったり、同調したりしないよう呼びかける緊急のメッセージを、25日付で全国の教育委員会に発出しましたが、「私はどうか?」と、大人一人一人が自分の言動を是非とも振り返っていただきたいです。

みなさんの意見もお聞かせください。

image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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