先日掲載の「1位は本厚木『住みたい街ランキング』異変に見るコロナ時代の住宅選び」では、コロナ禍が住居選択意識を大きく変えた事実を紹介した、マンション管理士の廣田信子さん。では実際、賃貸物件を扱う現場ではどのような変化が起きているのでしょうか。今回廣田さんは無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、都内の不動産業者から直接聞いたという切実な現状を紹介しています。
賃貸市場の変動の兆候、本番はこれから!
こんにちは!廣田信子です。
前回(「1位は本厚木『住みたい街ランキング』異変に見るコロナ時代の住宅選び」)は、首都圏居住者が居住したいと思う地域が、都心から郊外に移る傾向がある…という話でしたが、現場は、もっと切実なようです。
都内に店舗を持って、賃貸物件の仲介をしている不動産会社の方から今の実情を聞きました。
大学・専門学校に通うために地方から上京し、都内に部屋を借りている学生の解約が増えている。大学は、ほとんどがオンライン授業。後期からは通えるのでは…と我慢して借りていたが、後期からもオンライン授業と分かって、実家に帰ることにしたことによる解約だ…と。
大学の7割は、後期からもオンライン授業のみ…といいます。家賃を払い続けて、大学キャンパスにも通えず、アルバイトもままならないのですから、我慢にも限界があるということでしょう。中には、4月の新入学生を中心に、大学をやめる決断をした人も…。
独身の社会人も、仕事が減少して収入が激減、又は仕事を失って、部屋を解約するケースが増えている…と。もう都心で仕事を探すことをあきらめて地方に帰る人もいますが、コロナ禍では、高い家賃を払って都心に住んでも、便利さや人とのつながりを享受できないので、首都圏内に実家がある人が、実家に戻るケースが増えている…といいます。
そして、今、賃貸物件は、一旦、空き室になると、なかなか次の借り手が見つかりません。大家さんには、空き室が長引くより、フリーレント、家賃の値下げで、早く借り手を探した方がいい…とアドバイスしている…といいます。まだ、顕著には表れていないけど、家賃相場は確実に下がるだろう…と。
物件を探す条件では…リモートワーク、オンライン授業が進み、インターネット環境が不可欠になっています。何でもスマホで済ませるという訳にはいかず、ネット環境が充実(家賃にネット代込等)の物件が選ばれるようになっているといいます。
さらに、家の中で過ごす時間が多くなり、換気も必要とされるので、エアコンの性能も、選ばれる際のポイントになるといいます。この夏は、猛暑の中、家の中にいることが多いので、エアコンの使用が増え、故障が多くて、賃貸管理会社は対応に追われた…と。エアコンが古いと、故障の確率が高くなり、電気代も高いので、エアコンを新しくすることも、次の入居者を確保するためのプラス要素になる…と。
この状況ですから、店舗や事務所の解約も増えている…といいます。ぎりぎりの経営で何とか持ちこたえているところが限界にきて解約するのは、これからが本番になる。一旦、解約になると、次の借り手を探すのは住宅以上にたいへんなので、解約防止のために、家賃の値下げ、支払い猶予に応じるよう、大家さんには強く進言している…と。
銀行から借入をして次々マンションを購入し、節税対策をしながら大家業をしているマンションオーナーの中には、空室が続いたり、家賃の値下げをせざるを得ないことで銀行への返済が厳しくなる方も出てくるのでは…。
そして、それが、管理費等の滞納にもつながります。もともと投資用の分譲マンションだけでなく、居住用マンションで賃貸されている住戸も多いですから、賃貸市場の動向は、マンション管理の現場にも影響を与えます。
コロナ禍は、不動産市場にかつてない大きな変動をもたらすのは間違いなく、それが具体的に表れてくるのは、まさに、これから…なのです。
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