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先見の明あり。菅首相「携帯料金引き下げ」が日本を救う深い訳

アベノミクスも未完に終わり、コロナ禍もあって浮上できずにいる日本経済。「安倍政権の継承」を明言する菅首相は、我が国を再成長させることができるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、「国家全体の経済成長を支える柱」として3つの技術を挙げ、その具体的な整備法を提案しています。

菅首相が考える「成長戦略」の中身とは?

菅首相になり、明確な説明がないが、焦点を絞った成長戦略を立てたようである。河野大臣や平井大臣の凄味が違う。どのような戦略を立てるべきかを検討する。

なぜ、安倍政権時代には、日本の成長戦略が機能しなかったのか。少子高齢化対策や農業輸出促進策、インバウンド推進などの総花的な政策を行ったが、メインは金融緩和策で、経済衰退を隠していたが、コロナで日本経済の衰退が明確になってしまった。

総花的な経済成長戦略が、大手を振るっていたが、それでは日本経済は衰退を免れないし、政策費や研究開発費を広範囲にバラまくだけで、有効な効果が出なかった。要するにバラまき政治だった。

このため、焦点を絞った改革が必要なのである。そして、そのためには権力の集中が必要になる。日本社会を衰退から発展に大きく転換させるためには、権力を集中させて、その指示のもとに予算をある分野に集中投下して基盤を作るしかない。

規制緩和や制度改革には既得権益者がいて、強い反対に会い、それを撥ねつける強い権力で、菅首相は対応してシステムを完成させてほしい。勿論、河野大臣や平井大臣の活躍が必要であるが、矢面に立たされるのは菅首相である。菅首相が一番大変なのだ。

産業育成政策が重要であると、このコラムでは述べていたが、やっと、その方向に政権が向かい始めた。

特にコロナ感染拡大で社会全体でのデジタル化が、世界的に見ても遅れていることを実感した。このデジタル化が世界の企業競争の中心にあるし、生産性向上の要であるが、その中心が遅れているので、企業全体も競争力をなくし、生産性を上げられずに労働者の賃金も上がらないし、日経平均株価も米国ナスダックほどには上がらなかった。

日本がデジタル化の進む米中に追い付くには、デジタル化の急速な整備が必要であり、そのデジタル化の整備とは、人工知能AIとクラウドコンピューティング、移動通信の5Gの3つの技術の整備が必要であり、これらを社会活動の基盤とすることにある。

AIを有効にするためには、大量のデータが必要であり、そのデータを集めるのがクラウドであり、大量データを迅速に集めるには高速通信の5Gや高速光ファイバー網である。

このため、NTTは、光ファイバー網と移動体通信4G・5G、データセンター(クラウド)の融合が必要になり、ドコモを完全子会社化した。今後NTT内子会社を、デジタル化整備に合わせて再編することになるとみる。そして、このインフラ整備とともに、技術開発と研究開発でも米中に追い付かないと、世界での競争には勝てない。この研究でもNTTが中心で行うしかない。

そして、膨大な処理が必要な自動運転操作などもクラウドで処理した結果を自動車に送るために、5Gが必要になる。ということで、総合的な整備が自動車の完全自動運転でも必要になる。

この分野でも、トヨタとNTTなどの主要企業が組んで研究開発するべきである。技術はすぐに陳腐化するので、その研究はインフラ整備とともに行う必要があるのだ。中国のように、研究開発では国家がサポートするしかない。

デジタル化を国家的に行うことが重要であるが、その基盤は、今までの省庁の縦割り行政に内閣府の串差しの横方向の分科会を作り、規制改革や行政改革などの制度見直すことである。

それとともに、デジタル庁で、マイナンバーを基にした全体統合政府システムができると、国民の情報が集約されるし、国民も便利になる。例えば、住民票の移動とともに、ガス・電気・郵便などの移転処理も一度にできることが必要であり、それらを統合したWEBの窓口を作ることである。それも、同じ情報を2度と入れなおさないようにすることである。

そして、そのシステムを使うためには国民は最低でもスマホが必要であり、その利用料金をなるべく低額にする必要がある。というように、すべては、デジタル化社会対応に必要なことであるのだ。

そのシステムで国民情報の集約で大規模なデータができ、かつ、そのデータを使ってAIを学習させると、いろいろな動向が見えて、的確な福祉・経済政策を計画立案できることになる。

それとともに、国民や企業はPCやスマホで、マイナンバーを元に、諸手続きを一括的に処理でき、事務効率が格段に向上してくる。官庁も手続きに人を割くことはなくなり、行政の効率化が促進する。

ということで、法人格にもマイナンバーを付与して、国民と統合したほうが良いかもしれない。今後、国民もフリーランスが増えてくると思われるので、企業と個人の差がなくなってくるとみられる。

こうすれば、国民・企業や官庁の効率化はもちろん、個人情報を含まない形で企業がデータを利用できるようにすると、いろいろな新しいサービスが構築でき、かつ、その効用を国民に提供できることになる。

というように、国家全体の経済成長を支える柱を作ることなのである。

AIは膨大なデータがないと、ただの箱であるが、国民の膨大な情報を解析できると、いろいろなことがわかり、AI自体の発展にもつながることになる。

ソニーのアイボをペットにしている友達がいるが、飼い方で犬の性格が変わり、本当の犬と同じような感じで、アイボの友達たちの犬の個性がすべて違うという。そして、ソニーは、犬の脳検査もできて、犬の性格もわかり、家でだれが一番好きかもわかるという。

ソニーのクラウドに犬の行動情報が送られて、そこで性格形成をAIで分析して、行動指示を犬に送り返しているという。性格はクラウドの処理で決まるようだ。

ソニーは、このアイボにより、AIの課題である感情分析を研究しているようである。性格をクラウドのAIに持たせられると、人間のようなロボットの構築にもつながることになる。家事や介護ロボットが個性や性格を持つことになる。

農業や今までの産業などの構造改革も必要であるが、産業の中心は、AIと情報を集めるクラウドで構成されるDX、デジタル化にあり、それを避けては、日本の成長はない。

もう1つ、この動きに合わせて、日銀は、日米欧が組んでデジタル通貨の実験を開始する。このデジタル通貨も決済手段として、DXには有効である。

やっと、日本もコロナ感染症拡大で、気が付いたようであるが、官庁の効率化だけではなく、日本全体の成長を助けるデジタル化を推進してほしいものである。逆に、それなしには、日本の成長はない。

もう1つは、財政健全化をどうするのかという問題が残っている。無駄な経費や組織の統廃合は必要である。政府の役割を減らすことも必要なのかもしれない。長期にわたる日銀の金融緩和を止める道筋をつけることも検討するべきである。

大統領選挙

トランプ大統領の劣勢で、残り1ケ月を切った。第2回目のバーチャル討論会もトランプ大統領の出席拒否でなくなり、第3回目の討論会も危うい。対面の集会を開くだけでは挽回が難しい。

現時点で、トランプ氏は全米の調査で平均9.7ポイント、バイデン氏に後れを取っている。激戦州では5~7ポイント程度の差を付けられているようだ。ファイブサーティエイトの予測モデルによれば、バイデン候補が勝利する確率は85.1%となっている。

しかし、直接投票する人が少なく、郵便投票が多いので11月3日の投票日に決まらない可能性と郵便投票を違法とするトランプ大統領の意見で、民主党は期日前投票をするように支持者に周知して戦略を変えたようである。

このため、1ケ月前なのに期日前投票を済ませた有権者がすでに660万人に上っているという。前回2016年大統領選の同じ時期の10倍以上だと。

2016年の選挙で、トランプ大統領の大逆転があったので、まだわからないが、どちらにしても米白人人口の25%が福音派であり、その支持度合が重要なキーポイントになっている。もし、福音派支持が強固でないなら、トリプル・ブルー(大統領と上下院ともに民主党)になる可能性も高い。

そして、大統領に残された挽回方法は、オクトーバー・サプライズしかないのが現状である。ここで、トランプ大統領は、ワクチンを認可して10月に提供するとしたが、現状では間に合わないことが明らかになっている。残すは、海外での紛争しかない。米国の行動で、相手国から手を出させて戦闘状態を作るのである。

特に台湾海峡や南シナ海、東シナ海な中国軍と米軍の衝突が考えられる。もう1つが、南コーカサス地域での戦闘にイランが絡み、中東戦争化する可能性である。特に福音派の支持を強固にするためには、聖書の黙示録に書かれているような中東戦争が必要なのである。

アルメニアとアゼルバイジャンの紛争

このため、アルメニアとアゼルバイジャンの係争地ナゴルノカラバフを巡る軍事衝突に、ロシアは危機感を感じて、ロシアのプーチン大統領が、両国に対して停戦協議を仲介、両国は停戦で合意した。

現地時間10日正午(日本時間同日午後5時)から戦闘を停止するという。ロシアは、トランプ大統領のオクトーバー・サプライズで起きる、旧ソ連領内での戦争を防止したようだ。

ナゴルノカラバフを巡っては1994年に停戦合意が成立したが、最近の約2週間続く激しい戦闘では数百人が死亡し、大きな被害が発生していた。特にアゼルバイジャンの方の被害が大きい。

トルコがアゼルバイジャンにトルコ族のシリア義勇兵を送り、イスラエルの兵器をアゼルバイジャンは買い、自国領土と主張するナゴルノカラバフ自治州周辺で大規模な軍事演習をした。

アゼンバイジャンは、バクー油田がある石油大国であるが、コロナの影響で原油価格の値下がりで、国民福祉が下がり国民に不満が出ていた。BTCパイプラインもアゼルバイジャンを通っているので、トルコの利害にも関係している。

ナゴルノカラバフはアルメニア人が多く、アルメニアが実効支配をしている。アルメニアとロシアは安全保障条約を結んでいるが、ロシアは中立的な立場である。

アルメニア人の多くはキリスト教の正教徒で、アゼルバイジャン人の多くはイスラム教シーア派だ。アルメニア系アメリカ人の米国ロビー団体がそれなりに米国政治に影響力を持っている。

一方、トルコはアゼルバジャンを支援している。イランもシーア派のアゼンバイジャンを支援するはずだが、現時点では中立である。勿論、現時点では米国も中立である。

停戦成立で、ロシアは、オクトーバー・サプライズを防止したことになる。

ということは、南シナ海で、米軍と中国軍の軍事衝突が起きる可能性が高くなるということになる。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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