リモートワークや週休3~4日制など、「働き方の多様化」に関する話題が多い昨今ですが、世界ではすでに海外を旅しながら仕事をする人たちが多くいるようです。その際に利用されている「ジョバティカル」というエストニア発の求人サイトをご存知でしょうか。日本人利用者も少なくないこのサイトのサービスについて、メルマガ『理央 周 の 売れる仕組み創造ラボ 【Marketing Report】』著者の理央さんが紹介。海外で働きたい人たちが困っていることの解決に注力した点が「顧客価値」となっていると解説しています。
競争が激しいジョブ市場で、ジョバティカルはなぜ、成功したのか?
新型コロナウイルスの影響で、働き方が変わる、という話題が、このところ多く見受けられます。通勤が制限され、リモートワークになるとか、働くという意味のワークと、旅行するという意味のバーケーションとを合わせて、旅行先で働く、という意味での、ワーケーションも話題になっています。
一方で、先行きが不透明なので、雇用を控える企業もあるようです。就職活動中の学生たちも、オンラインで面接が行われたり、インターンシップなどの研修が、オンラインで実施されたりしています。戸惑っている学生も多いし、就職先の候補を探すこともままならない、という感じです。
働き方の多様化を汲み取ったジョバティカル
そんな中で、ジョバティカルという企業が、なかなか面白いことをやっています。ジョバティカルは、海外で募集されている、短期の仕事を見つけることができる求人サイトです。
通常海外で仕事をしようとすると、就業許可や移民局への申請などして、その後も確認、連絡などがあるため、労働許可が下りるまでに、数カ月かかるのが普通です。
それを企業と応募者の情報をあらかじめ登録しておき、その面倒な手続きを代行。3~5日で労働許可が出る、ということが可能ということです。これにより、学生やフリーランスの人たちにとっては、旅行しながら働く、という選択肢も出てくるのです。
実際にジョバティカルを利用した人たちの、ブログなどを調べてみると、仕事をして、現地に住んで初めて現地の文化がわかる、とか、語学だけではなく、技術も学ぶことができて、とても役に立ったなど、好意的な内容がおおく投稿されています。
ジョバティカルが生まれた背景
この会社は、IT大国と言われるエストニアの会社とのこと。エストニアは、人口が約130万人のコンパクトな国で、その分、早くから様々なことをIT化しています。役所にある住民のデータなども早くからデジタル化しているなど、今で言うところのデジタルトランスフォーメーションも進んでいる国です。
このような環境で育ったためか、この会社の創業者は、「旅」と「働く」は同時にできる、ということを実現したくて、会社を起こしたそうです。
日経新聞によると、2014年に立ち上げたこの求人情報サイトは、「外国を旅しながら働きたい」という好奇心を引き寄せ、世界53カ国の若者らが国境を越えて就職したとのこと。6年でこの実績には目を見張ります。
中でも転機になったのは、立ち上げた後に、「求人サイトよりも手続きの支援に集中すべきではないか」と気付いたことだそうです。求人サイトは世の中に数多くありますが、海外での就労においての手続きを支援する、というのは、確かにあまりありません。
なぜ、ジョバティカルは成功したのか?
ビジネスをやる上で、差別化は大事ですが、差別化とは「他社と違うことをやる」のではなく、「顧客から見て他社より価値がある」と見られることです。
その意味で、海外就労の手続きという煩雑な悩みを支援するのは、他の求人サイトがやってくれないことで、働く側から見ると、ジョバティカルにしよう、ということになりますよね。
このように、顧客層が困っていることを見つけて、いち早く実施するという、目の付け所が、起業には大事です。特に、スタートアップ会社の初期、また、次のステージに行くタイミングで、必要な考え方ですよね。
マーケティングで本来すべきこと
さて、ここでジョバティカルがなぜ成功をしたのか、もう少し掘り下げてみましょう。
IT先進国にあるから、技術を駆使したから、というわけではありません。顧客のニーズに気づき、すぐに実践したからです。その顧客のニーズには3種類あります。ニーズという必要性、ウオンツという欲求、デマンドという需要。
このケースで考えると、就職したい、というニーズがあり、海外で働きたい、というウオンツがあります。でも、ビザなどが面倒、というデマンドを持つ層に、ジョバティカルは気づき、即時に手を打ったのです。
単なる職業紹介は、世界中どこにでもあります。ITの進化と浸透で、ギグワーカー、ピクセルワーカーと呼ばれる、時間単位での働き方も、一般的になってきました。その時流もとらえての、このジョバティカル、これから注目していきたい企業です。
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