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東京の水道水汚染 健康不安の根本原因は?環境省は米軍基地を調査せよ

今年初め、東京多摩地区の水道水から有機フッ素化合物が検出されたことが明らかになり、NPO法人が府中市と国分寺市で住民の血液検査を実施。この度、その影響が懸念される数値を公開しました。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者で、ジャーナリストの内田誠さんは、東京新聞のスクープを紹介し、有害物質「PFOS」関連の記事を検索。東京同様に汚染されているのが沖縄で、米軍基地が有害物質をたれ流している実態を暴き、地位協定を改定して調査に乗り出すべきと訴えています。

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飲料水に有毒な化合物混入問題を新聞はどう報じたか?

きょうは《東京》の番になります。社会面に、飲料水に有毒な化合物が入っていた問題について記事があります。これを取り上げましょう。問題の有害物質の名前を示す「PFOS」を、《東京》の過去記事検索に掛けると13件ヒットしました。

《東京》25面の記事。まずは見出しと【セブンNEWS】第7項目の再掲から。

府中2倍、国分寺1.5倍
有害物質の血中濃度 全国より高く
NPOが市民調査
浄水所2カ所、昨年まで指針値超

水道水の汚染が指摘された東京都府中市と国分寺市の住民を対象に、NPO法人が行った血液検査で、発がん性などが懸念される有害な有機フッ素化合物「PFOS」の血中濃度の平均値が、府中市で全国平均の2倍超、国分寺市で1.5倍だった。

「PFOS(ピーフォス)」とは有機フッ素化合物の1つで、「「PFOA(ピーフォア)」とともに1950年代から消火剤やフライパンのフッ素樹脂加工に使われ、現在は条約で製造、販売、使用が禁止されている。環境中で分解されにくく、地下水などを通じて体内に蓄積されやすい性質があるという。

調査を行ったのはNPO法人「ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議」で、19年の都による調査で有機フッ素化合物の値が指針値を超えた2カ所の浄水場からの配水区域内に5年以上居住する住民22人の血液を調べ、府中で2倍など、全国平均を上回る数値が明らかになったという。

「PFOS」は発がん性だけでなく、免疫や内分泌のかく乱など、様々な問題が指摘され、日本では既に2010年に似た構造の「PFOA」とともに全廃されている。今回の汚染源については、米軍横田基地の可能性が高いそうで、2010年から17年にかけて、PFOSを含む泡消火剤3千リットル以上が土壌に漏出したとされている。

●uttiiの眼

このNPO理事で環境科学が専門の中地重晴教授(熊本学園大)は、「今すぐに健康に影響が出るレベルではない。原因は米軍基地か工場か分からない」と言っている。ということは、米軍基地内の泡消火剤に「製造・販売・使用」が日本国内で禁止されている物質が含まれている可能性、あるいは近隣の工場が不法にPFOSを使用していた可能性があることになる。

横田基地のケースは英国人ジャーナリスト(過去の記事にも登場するジョン・ミッチェル氏)が内部資料をもとに報じたものだそうで、漏出があったのは、日本国内での使用が禁止された後、ということになりそうだ。持ち込ませてならないのは核兵器だけではない、ということか。

【サーチ&リサーチ】

最も古い記事は以下のもの。
2016年7月4日付
「沖縄県中部の米軍嘉手納基地で1998年から2015年に有害の消火剤や軽油、汚水などの流出事故が少なくとも415件あり、そのほとんどが日本側に伝えられていなかったことが分かった。在京の英国人ジャーナリスト、ジョン・ミッチェル氏が情報公開請求で米軍から入手した文書を基に分析した。那覇市などの水源となっている同基地に近い比謝川に有害物質が流出した事故もあった」というもの。

*この消火剤に含まれていた有害物質がピーフォスということになる。さらに…。

2017年11月17日付
「全国の在日米軍基地内で環境省が1978年度から毎年行っていた環境汚染調査が、2014年度以降中止されていることが分かった。環境省は中止を公表せず、本紙の取材に米側からの要請の有無も明らかにしていない。同省は「基地の外で周辺を調べた方が広範な影響を把握できると判断した」と説明するが、専門家や自治体は疑問視している」と。

*さらに2020年に入り…汚染問題は東京・多摩を皮切りに、各地で噴き出す。

2020年2月25日付
「…都が行った昨年(2019年)の調査で立川市と武蔵村山市にある井戸から」PFOS、PFOA両物質が検出されていたという。

*その2日後、自衛隊が、2018年に東富士演習場で行った消火訓練の際、PFOSを含む消火剤を使い、回収していなかったと発表。

*4月には、沖縄の米軍普天間飛行場で大量の消火剤、14万3830リットルの泡が外部に漏れ出す事故が起きる。

2020年4月15日付
「米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)から発がん性物質を含む「泡」が大量に流出した。泡は消火剤の一種で、10日に漏れ出し、川から風に飛ばされて市街地へと流れた。米軍も沖縄防衛局も回収は地元に任せ、宜野湾市消防が対応に追われた。泡の流出事故は昨年12月にもあり、度重なる不始末に怒りの声が上がっている」

*米軍は度重なる漏出事故にも回収を行わず、基地内調査も拒んだ。米国内では「規制が進む」が日本の基地内ではやりたい放題。

*6月、嘉手納基地内を流れる川から、PFOSとPFOAが検出される。

●uttiiの眼

多摩地域の汚染は、すべて米軍横田基地での消火剤漏出事故に由来する可能性が高そうだ。今回は府中と国分寺だが、過去、立川と武蔵村山で同様の問題が起きていた。さらに沖縄の米軍基地の野放図ぶりを見れば、この問題の背景にあるのは米軍基地問題そのものであり、地位協定の改定によって基地内の調査を実現し、有毒物質入りの泡消火剤の使用を禁じることができるかどうかに掛かっていると思われる。

※上記の内容には調査中のことがいくつかあり、環境省に問い合わせ中ですので、恐縮ですが結果については後日補うことにします。

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image by: Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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