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【書評】SNSに蔓延する「正義中毒者」はどうして生まれるのか?

「他人のことが許せない」という人は世の中に多くいますが、ツイッターやフェイスブックなどのSNSでも、すぐに「正義」を振りかざして炎上させる「正義中毒」は後を絶ちません。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、「自分は絶対に正しい」と信じて他人の言動を許せなくなってしまうメカニズムを脳科学者が解き明かしている一冊です。

偏屈BOOK案内:中野信子『人は、なぜ他人を許せないのか』

人は、なぜ他人を許せないのか

中野信子 著/アスコム

著者は脳科学者、医学博士、認知科学者、45歳、美人、表紙に堂々登場。奥付の対向ページのに著者紹介で、大変な学歴に加え「科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある」「テレビコメンテーターとしても活躍中」だそうです。「サイコパス」っての読んだ記憶がある。

なぜ人が人を許せなくなってしまうのか、脳科学の観点から考察する。いきなり結論。そもそも人間の脳は、誰かと対立することが自然であり、対立するようにできている。自分と他人とを比較して、優秀だとか愚かだとか考えても、自らの基準を無理にあてはめているだけに過ぎない。したがって、誰かをバカだとか、頭が良いなどと定義すること自体、無意味。肩の力を抜きなさい。

長い時間をかけて徐々に人を許せなくなる事例もある。愛し合って結婚したはずの夫婦が、「性格の不一致」を理由に離婚していく。そもそも性格が完全に一致する人間など、絶対に存在しない。脳科学的には、実は惹かれる理由も「互いが不一致だから」こそなのである。合わないことこそが楽しかったはずだ。

それなのに、結婚すると不一致を憎むようになってしまうのは「皮肉にも、恋人だった頃より互いの距離感が近くなってしまうことが、かなり有力な理由と考えられます。遠くから見ているときは、不一致が尊敬や愛情の対象なのに、近寄ってみると、急に目を背けたくなるような部分があったことに気づいてしまうから」である。夫のリタイア後に、互いに見逃していた不一致が浮上する。

一芸に秀でた天才たちにも、さまざまな短所や問題点が隠れていて、観衆とある程度の距離があって、見せたいところだけを見せているから、天才に見えていただけだといえる。この関係性は富士山のありようとよく似ている。遠くからみると美麗そのものだが、実際に登ってみると、多すぎる登山客、ごみの散乱など、あまり見たくなかった光景が広がっている。

社会的なルールに関する取り決めの代表例は民主主義である。ここに人間ならではの興味深い現象が生じる。いわゆる「保守」対「リベラル」の分裂であり、実は脳の性質の差異が起こしているのではないか、というジョナサン・ハイトの説がある。「リベラル」は新奇探索性(リスクを冒してまで新しい物事に挑戦する性質)が高く、善意や倫理観に親和性が高い判断をするのが「保守」。

という仮定で、ハイトは「リベラルが保守に勝つことは、科学的に不可能であろう」と示唆している。しかし日本におけるリベラルと保守は、必ずしも政党としての政策とは一致しないため、どんな集団を支持し、投票するとリベラルなのか、あるいは保守なのかをクリアにしにくい。分析が難しい国なのだ。

アメリカには、支持政党は遺伝子で決まっているというデータがある。民主党支持者=リベラルに親和性を持つか、共和党支持者=保守に親和性を持つかには、生まれつきの遺伝子的な要素が関与している、ということである。100%ではなく、あくまで統計的な有意差があることを示す。これは本当である。日本には鵺のような政党があるが、アメリカはスッキリしていていいな。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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