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【書評】若者のせい?日本の人口が凄い速度で減っている理由

世界でも稀に見る速度で人口が減り始めている、現代の日本。少子化対策もうまく機能しているとはいえず、高齢化にも歯止めがかかりません。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』では編集長の柴田忠男さんが、この事態を踏まえたうえで、日本の人口減少を「止めなくてもよい」と考える一冊の本を取り上げています。

偏屈BOOK案内:可谷珪一『日本は小国になるが、それは絶望ではない

日本は小国になるが、それは絶望ではない

可谷珪一 著/KADOKAWA

稀に見る超絶ヘタな表紙カバーデザイン。二つの書体が大小縦横でびっしり入りまじって、統一感なし。そのくせ帯には著者のポートレート入り。この猥雑な表紙カバーでは、とうてい中身を期待できない。だいいち手に取る気になれない。本文は普通の組版で、なかなか読ませる内容なんだからもったいない。

日本は経済大国であった。GDPは中国にこそ抜かれたものの、2019年時点でも世界第3位をキープしていたのは、1億2,000万人という人口の多さによるところが大きい。ところが、日本は世界でもまれに見る速度で人口が減り始めており、1億人を割る時期は2049年、2100年にはなんと4,900万人。戦慄を覚える予測だ。

少子化対策を充実させなければならないのだが、これを実現するのは難しい。人口動態というのは50年、100年スパンで動くものであり、もはやタイミングを逸している。今起こっているのは「人口減少と高齢化の同時進行」である。何らかの手段で人為的に出生率を上げたと仮定すると、増加を続ける老人に加え、子供の数も増えるから、子育て世代は想像を絶する負担がかかる。

いま想定以上に出生率が低下しているのは、若年層が子どもをつくるのを望まなくなったのではなく、日本人の経済力の低下で、平均的な所得の人にとって、もはや子どもを育てるのが容易ではなくなったからだ。いま子どもを持てるのは高額所得者だけだ。高齢者の比率が減少し、現役世代の負担が低下するタイミングにならない限り、いくら少子化対策を実施しても子どもは増えない。

そんなタイミング、来ないだろう。今後、出生率が高まり、人口が増加に転じる可能性はゼロである。日本の人口の減少は100%の確率で起こる。日本は人口減少問題に加え、産業競争力の低下という問題に直面しており、国力の低下が続いている。日本はもはや製造業の盛んな輸出立国ではなく、消費で国を動かす国にシフトしている。これは歴史の必然であり、逆らう必要はない。

「つまり今の日本は、製造業による輸出主導型経済から、個人消費や政府支出を軸にしたコンパクトな消費主導型経済にシフトしている」「消費そのものが拡大することで所得が増え、さらに消費を拡大させるというメカニズムが働かない限り、経済成長は実現しない」ということだ。それにつけても、ずっといい思いを続けてきたうえ、後の心配もしないわたしの世代はずるい。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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