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トランプ大統領の悪あがき。元側近に露骨な「恩赦」を出す理由

感謝祭を前にした恒例行事、ホワイトハウスの庭での七面鳥恩赦式を開いたトランプ大統領。その裏で、フリン元大統領補佐官に恩赦を与えたと自身のツイッターで発表し、各メディアが報じています。メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、乱発される恩赦について、大統領特権が性善説に基づいている弱点を突いたものと酷評。成否は別として、最終的に自身への司法手続きを回避したいとの思惑も覗くと呆れています。

トランプ米大統領が元側近のフリン氏にも出した「恩赦」を新聞はどう報じてきたか?

きょうは《朝日》から。トランプ米大統領が元側近のフリン氏に恩赦を与えたというニュース。各紙、掲載していますが、ここから「恩赦」を検索してみると、《朝日》の新聞記事検索で20件ヒットしました。

まずは3面の記事。見出しと【セブンNEWS】第3項目の再掲から。

トランプ氏、元側近に恩赦
「ロシア疑惑」で訴追のフリン氏 民主党は批判
大統領選「覆さねば」

トランプ米大統領は、ロシア疑惑の捜査に関連して偽証罪に問われ、公判中だった元側近のフリン元大統領補佐官に恩赦を与えた。フリン氏はトランプ政権発足直前に駐米ロシア大使と協議をしていた件で、連邦捜査局に虚偽の説明をしたとして訴追されていた。

ホワイトハウスは声明を出し、フリン氏について「フリン氏は無実で、本来は恩赦を必要とすべきではない」としつつ、「2016年の大統領選を覆そうとした党派的な政府職員による組織的試みの犠牲者だったことを示す証拠が、複数の調査によって明らかになっている」と主張。一方、トランプ氏は支持者に向けて「この選挙は覆さなければならない」と述べたという。

偽証罪に問われているフリン氏は、公判でいったん罪を認めたものの、後に無罪主張に転じていた。裁判自体は、5月に司法省が訴追を放棄する異例の申し立てをしたが、裁判所が認めていなかったために継続中だった。今回の恩赦によって打ちきられることになるという。

この7月には、ロシア疑惑に関して実刑が確定していた腹心のロジャー・ストーン元選挙顧問の刑を免除するなど、トランプ氏は自らに近い人に恩赦を与えてきた。

●uttiiの眼

恩赦はさらに続く可能性がありそうだ。大統領が自らに掛けられた疑惑に関連して有罪になったり訴追されたりしている手下どもを、大統領権限を使って救出してやっているということだろう。なんと卑怯な人物かと思うが、大統領には少なくとも形式的には無制限の恩赦権限が与えられているようだから、「違法性」を問われることはないのだろう。

ただ、通例では、司法省が恩赦対象者のリストを推薦し、その中から恩赦を与える人を大統領が決定するらしい。そうした「手続き」を飛ばしての今回のような恩赦は、少なくとも「異例」であるようだ。

兎にも角にもこんなことができてしまうのは、「大統領たるもの、いくら何でもそんな恥ずかしいことはしないだろう」という性善説に基づいて制度がつくられており、その弱点を突かれてしまったということでもあろう。

トランプ氏自身はまだ選挙結果を覆す気でいるかのように見えるが、政権移行は既に始まっていて、いずれは認めざるを得ないところに追い込まれている。各州での裁判闘争もほとんど奏功していないようだから、12月14日の選挙人による直接投票を境に、本人も選挙結果を認め、諦めることになるだろう。

いや、既に諦めてはいるものの、大統領の地位を失った直後に動き出すかもしれない、自らに対する司法手続きをなんとか止めたいという狙いで、恩赦を出しているのかもしれない。それが彼にとって何か良い結果を生むのか否かは分からないが。

【サーチ&リサーチ】

「恩赦」に関する記事は米大統領絡みだけとは限らないが、《朝日》のサイト内20件のうち、最も古い2019年の記事は、丁度1年前、ホワイトハウスでの「七面鳥恩赦式」に関する以下のニュースだった。

2019年11月27日付
「トランプ氏は「ウクライナ疑惑」で弾劾(だんがい)調査を受けていることを引き合いに、七面鳥も議会から召喚されたなどとジョークを飛ばした」という。「民主党は私が七面鳥に優しすぎると非難している」とも。

*日本の恩赦に関しては、「再審請求中の袴田巌さんに特別恩赦適用を求める声」の他、以下のような記事があった。

*天皇即位に合わせて前年10月に実施された恩赦では「子どもへの性加害」を行ったものを除外しなかった。子どもの性被害者を支援するNPOが森雅子法相に対し、次回からは対象外にしてほしいとの要望を伝えた。

*「戦後、フィリピンに収監された日本人戦犯の赦免を求めて、同国の大統領に嘆願書を送り続けた安来市出身の画家、加納莞蕾(かんらい)」の紹介記事も。

●uttiiの眼

フリン氏については、5月に司法省に訴追を放棄させるという形で「救出」しようとしていたが、裁判所が認めなかったのでトランプ氏の企ては成功せず。公判が続いていたところ、トランプ氏としては仕方なく、「伝家の宝刀」を抜いて直接恩赦を与えることになったのだろう。いずれにしても呆れるほど露骨な行為と言わねばならない。

image by:Evan El-Amin / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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