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「仕事は見て覚えろ」がパワハラではなく合理的指導と言える理由

昭和の時代には「仕事は見て覚えろ」なんて言う大工さんや職人さんは多かったと聞きますが、たとえ毎日同じ仕事や作業を見ていたとしても、いざ「やってみろ」と言われた時にできるものなのでしょうか。今回の無料メルマガ『サラリーマンで年収1000万円を目指せ。』では著者の佐藤しょ~おんさんが、自身の経験をもとに「鞄持ち」という教育方法について解説しています。

見ているだけである程度のことは分かるようになる

昔の人は、仕事は見て覚えろと良く言ったモノですが、これはある意味、真理なんですよ。見て覚えられないような人は、レベルが低いので教える時間がムダだということでもあります。この考えが厳しいと感じる方は、ビジネススキル以前のところで問題があると思います。

つい先日の話ですが、家人が夕食を作っていたんですよ。私は配膳担当ということで、カトラリーやお箸、お皿などを準備するのがいつものルーティーンです。もう一つの仕事にサラダのドレッシングを作ることがあるんですが、これをやる時にはキッチンの調理をしているスペースに入るわけです。

そうすると、家人がどんな材料で、どんな手順で、何を作っているのか?を見ることになるわけですよ。私は自分が作るつもりはサラサラないんですが、何気なくボーッと見ているだけです。

ところがこれが何年か続くと、不思議なことに家人がやる次の工程がなんとなく予想できるようになるんです。先日はホワイトソースを使ったドリアを作っていたんですが、ご飯に混ぜるホワイトソースの量がちょっと少ないように感じたので、それを指摘したんですが、それがドンピシャでして、家人が

 ■ 毎日見ていてもそれがピンと来ない人もいるのよね

って言ったわけです。これが見て分からない人ですよ。何度も何度も見ていたら、次は醤油が必要だなとか、アンチョビがあった方が美味しいはずだとか、このお鍋はもう洗っても良いなとか、ここにはハーブが必要だなとか、言われなくてもピンと来るはずなんですよ。

それができないという人は、そういう目で物事を見ていないということです。そこが問題なんです。見ていると見えているは異なる動きなんです。物事を理解て自分のモノにするために必要なのは、「見る」という行為なんです。

「見る」は意識して、対象物を取り込むつもりで目に入れることを意味して、「見えている」はその意識がなくて、たまたま偶然対象物が目に飛び込んできたという意味です。両者は似ているようで全く違います。「見えている」には本人の意志が込められていませんから、意識の深いところに入らないで、時間の経過とともに消えてしまうんです。

これだと何年それを見ていても全く覚えられません。仕事に要求されるのは、「見えている」ではなくて意志を込めた「見る」なんです。

私は若い頃、お寿司屋さんで出前持ちの仕事を何年かやっていたんですが、ここでも大将(店主のことね)が寿司を握る様子を「見る」つもりで見ていたんです。もちろん私が寿司職人になるつもりは全くありません。ただ、いつもの仕事の延長のつもりで、凝視していたんですよ。

そうしたら、全く教わっていないのに、ネタの切り方や、酢飯の合わせ方、太巻きの握り方、巻き簀の使い方を覚えてしまったんですね。これは後にアメリカに行った時に非常に役に立ちました。現地で何度か、寿司パーティーみたいなのをやらされまして、そこで巻物を(鉄火巻きとかカッパ巻きね)を見よう見真似で、作れちゃったんですね。

見ているという行為は数年続けましたが、実際にシャリを取って、海苔に載せて、ネタを置いて、巻き簀で巻いて、形を整えて、最後に包丁で等分に切るという一連の行為をしたのは、その時が初めてだったんですが、

みたいなことを思い出して、やってみるとそれなりにちゃんとできるんですよ。

我々の仕事も同じで、上司や先輩、腕の良い職人がやっていることを、「見る」ことを続けたら、必ずどこかで、その仕事の全体像があなたの中にスッポリと収まるようになるんです。

実は、手を取って教えるという行為は、教えられる側がこのレベルになってからやるべきなんです。「見る」という行為を続けて、そのことの全体像がインストールされてから、「教える」のが職人の世界であって、これが正しいんです。

ここをショートカットして、マニュアルを作って促成栽培のように人に教えようとするから、プロが育たなくなるのです。

だから鞄持ちをさせるというのは、本当は理に適った教育方法なんですよ。鞄持ちをやらせて、何かにピンと来ないような人間はボンクラですから、そういう人におカネや時間を掛けて教育するのはムダなんですよ。厳しいようですが、そういうものなのです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤しょ~おん 【発行周期】 平日刊

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