これまで政権批判を交わすために「反日」を利用してきたとも言われる韓国当局ですが、近年は八方塞がりの外交関係を「用日」、すなわち日本をうまく利用して切り抜けようとする動きもあるようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、韓国で強まる東京オリンピックを外交に利用しようという目論見を紹介。さらに彼らのゴネ得体質を表す諺を挙げ、「韓国に甘い顔を見せるのは禁物」と注意を喚起しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年12月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【韓国】外交問題を「用日」で乗り越えようとする韓国に警戒せよ
● 中国の「限韓令」解除に道筋立たず、思惑外れた韓国…習近平氏の訪韓見送りへ
2017年、韓国が朴槿恵政権の時代、在韓米軍にTHAAD(最終段階高校土地域防衛)を配備することを決定しましたが、これに反発した中国が韓国に対してさまざまな圧力をかけました。
韓流タレントの中国メディアへの出演禁止、中国人団体旅行の韓国訪問中止、さらには中国に進出した韓国の大手スーパー・ロッテマートに対して、消防設備の不備などを理由とした営業停止命令が出されるといった嫌がらせが相次ぎ、ロッテマートなどは中国でのスーパー事業を断念し、店舗売却せざるを得なくなりました。
こうした中国の韓国叩きは「限韓令」と呼ばれており、当時、私もこのメルマガで、中国ビジネスの危険性について警鐘を鳴らしました。
【関連】瀕死の韓国経済に大打撃。THAAD配備に対する中国の容赦ない仕返し
そしてそれから約4年近くの年月が経ちましたが、まだこの「限韓令」は続いています。韓国のゲームやドラマの中国への流入禁止は維持されているのです。
文在寅政権は、北朝鮮に擦り寄り、中国に対しても秋波を送り続けてきました。それでも中国は圧力を弱めません。むしろ、媚びれば媚びるほど、足元を見られて、さらに嫌がらせがエスカレートするのです。そのことは、「事大一心」に努めてきた朝鮮半島が、いかに中華王朝から虐げられてきたかということからも明らかです。
たとえば、衛氏朝鮮を滅ぼした前漢の武帝は、朝鮮半島に漢四郡を置き、以来、朝鮮半島は400年にわたり間接統治されました。高麗朝はモンゴル帝国により蹂躙され、その支配下に置かれました。
李氏朝鮮は当初、明の属国となり、「朝鮮」という国号まで決めてもらいましたが、明に代わって満州人の清王朝が中華世界の主宰者となると、再び国土を蹂躙され、従属を誓わせられました。清の2代目皇帝ホンタイジは、李氏朝鮮の王である仁祖を降伏させ、三跪九叩頭の礼で清皇帝への忠誠を誓わせましたが、それを記念して建立されたのが、現在もソウル郊外の三田渡にある「大清皇帝功徳碑」です。
以後、朝鮮国王は、満州人の使節が来ると、みずから高官を従えて迎恩門まで歓迎に赴き敬意を表し、宴会を催し、芸を披露して接待しなければなりませんでした。太子は慕華館で勅使に酌の礼をするのが最大の役目だったのです。
もちろんこれは、現在行われているような、国賓を出迎えるため空港に儀仗隊を整列させるといった儀礼とはまったく異なる性質のものです。
しかし、これだけ天朝に尽くした朝鮮ですが、逆に朝鮮の朝貢使節が北京詣でをする際は、朝臣が出迎えの礼を受けるどころか、諸侯の礼さえ受けられない粗末な待遇でした。宿泊先も迎賓館などではなく、百官と同じ粗末な宿です。
そもそも、中国の属邦のなかでも朝鮮の地位はもっとも低く、下国のなかの下国でした。天朝の朝賀の席では、千官が赤色の礼服を着ていたのに対し、朝鮮の使臣だけは黒色の丸首の衣だったのです。
また、琉球の使臣は駕篭に乗って宮廷に入るのに対し、朝鮮の使臣は駕篭に乗ることを禁じられていたと、尹昕の『渓陰漫筆』にも書かれています。そして、李朝時代の臣民は琉球以下の扱いを受けていたと嘆いていました。だから韓国がいくら中国のご機嫌をとっても、扱いが良くなることはありえないのです。
しかも、現在の中国の文化人ですら、南の韓国も北の朝鮮も、吉林省延辺の朝鮮族自治州のように、実質的にいまなお中国の属国、あるいは中国の一部とさえ考えている人が少なくありません。過去の宗属意識が抜けていないのです。習近平ですら、2017年4月にトランプ大統領と会談した際、「朝鮮半島はかつて中国の一部だった」と発言しています。
加えて、そもそも中国ではすべてが政治ですから、自由市場や自由経済、自由貿易というものはありません。経済も貿易も株式市場も、政治や外交の道具でしかありません。気に食わない相手には平気で経済的な嫌がらせを行う。それが中国なのです。
先日、アリババグループの総帥であるジャック・マーが中国当局に批判的な発言をしたことにより、電子決済サービスの関連企業「アント」が予定していた上海・香港への上場が延期となるという事態もありました。
● 焦点:舌禍が招いたアント上場延期、ジャック・マー氏の大誤算
中国を経済活動の相手にするということは、自由な発言も許されず、また、外交的にも中国の機嫌を損ねないようにしないといけないという、まさに従属関係や叩頭外交を強いられるということでもあるのです。
とはいえ、歴史の一時、小中華と大中華が逆転したこともありました。たとえば1919年に北京で起こった五四運動は、李氏朝鮮の三一運動を模倣したものでした。また、2000年代、韓国系企業がこぞって中国山東省に進出したことがありました。このとき韓国勢の鼻息は荒く、中国を下に見ていたものでした。私はこれも小中華と大中華の逆転現象だと見ています。とはいえ、それも今は昔の話です。
韓国は、習近平の訪韓を心待ちにしており、それを機会に限韓令を解いてもらおうという心づもりですが、中国側は米韓関係の分断を目論んでか、訪韓については後ろ向きです。
また、日中韓首脳会談も、日韓関係が最悪状態ですから開催予定が進まず、膠着状態に陥っています。
そこで文在寅政権が期待しているのが東京オリンピックです。これまで韓国与党の議員の中には、「放射能五輪」などと揶揄して東京オリンピックに否定的な見方も少なくありませんでした。
ところが中韓関係や南北関係が行き詰まり、さらに日韓関係も最悪という現状から、なんとか抜け出すために東京オリンピックを利用しようという動きが強まっているのです。
韓国では「用日」という言葉があります。これはつまり、日本を韓国のために「うまく利用する」ことを意味します。この言葉は2014年後ごろから韓国で使われだした言葉です。
2014年1月の中央日報が、1880年に清国の外交官が示した、「親中国、結日本、連米国」という言葉をもとに、これからの韓国が取るべき外交方針を「親米、連中、用日」と表現したことがきっかけでした。
● 韓国メディアが使い始めた「用日」 苦しい経済…断末魔の“悲鳴”か
中国もアメリカとの関係が悪くなると日本に擦り寄り、日本が甘い顔をすると侮ります。尖閣周辺海域への連日の侵入がそれを示しています。大中華も小中華も、甘い日本につけ込む気が満々です。
日本としては、貿易や経済を政治や外交と絡めてくる中国を警戒するとともに、「用日」で起死回生の大逆転を狙う韓国にも断固とした姿勢を見せる必要があります。
中華の国には、甘い顔をしては絶対に駄目なのです。日韓関係がこれほど悪化したのも、「日本はゴネれば折れる」と韓国側に思わせてしまったからです。韓国には「泣く子は餅を一つ多くもらえる」ということわざがあり、ゴネたものが得をするという意味だそうですが、まさに韓国の気風を表しています。
そして日本はこれまで、泣きわめく韓国に対して余計な餅を与え続けてきました。だから韓国で「用日」などという言葉が生まれるのです。日本は余計な餅を与えることで、韓国が泣き止んでくれると期待しますが、味をしめてもっと泣き叫ばれるのがオチです。約束を守るどころか、「泣き叫べば無理が通る」と思われるだけなのです。
先日、王毅外相の尖閣発言に対して茂木外務大臣が反論しなかったことが大きな問題となっていますが、大中華・小中華には断固とした姿勢を見せることがきわめて重要なのです。
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