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自称リベラルの欺瞞。コロナ失敗のドイツ礼賛、成功の台湾ガン無視

ドイツ連邦議会で新型コロナの感染拡大防止を涙ながらに訴えたメルケル首相の演説が世界的に高い評価を受け、多くの日本メディアも好意的に受け止めています。しかしこの流れに異を唱えるのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、コロナ対策に失敗し感情を爆発させただけのメルケル首相を礼賛する一方、コロナ封じ込めに成功し世界が評価する台湾の蔡英文総裁を無視する日本のメディアを強く批判しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年12月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【日本】コロナ対策に失敗したドイツを礼賛、成功した台湾を無視するリベラルの欺瞞

関口宏 国内のコロナ状況に「メルケルさんは涙が出んばかりに力説。これが日本はない」

ドイツのメルケル首相が12月9日に連邦議会で行った演説が、日本で話題になっています。涙ながらに感染拡大阻止を訴える姿は、日本でも大きく報じられ、メディアや一部の知識人はこぞって礼賛しました。

メルケルはこの演説において、「クリスマス前に多くの人と接触することで、祖父母と過ごす“最後”のクリスマスになってはならない」「心の底から申し訳なく思います。けれど、私たちが払う代償が、1日590人もの命だとしたら、それは到底容認できません」などと強く訴えたそうです。

メルケル首相、感情を露わにしてドイツ国民に訴える。「祖父母との最後のクリスマスにしないで」(新型コロナ)

こうしたメルケルの演説に対して、「サンデーモーニング」では、司会の関口宏氏が「メルケルさんは涙が出んばかりに力説。これが日本はない」と述べ、メルケル首相に比べて菅首相には危機感が足りないと暗に批判しました。

このところ、高級ステーキハウスでの会食や、ネット番組出演時の「ガースー」発言で「危機感がない」と批判されている菅首相ですが、リベラル勢はまたぞろ「ドイツに学べ」的な論調で政府批判を展開しようとしているようです。

しかし、メルケルも言うように、ドイツではコロナによる1日の死者数は590人にも達しています。同時期、日本での死者数は40人台。ドイツの人口は約8,000万人で日本の3分の2ですが、新型コロナによる死者数は10倍以上に達しているのです。

ドイツでは今年4月から外出時のマスク着用が義務付けられ、違反すれば6,000円以上の罰金(州によって異なる)、さらに再犯ともなれば数万円の罰金を支払わされます。しかも、罰金額が徐々に引き上げられてきているところからみて、あまり守られてこなかったことがわかります。

ドイツのマスク着用義務と罰金

メルケルが今年3月に行った演説も、かなり話題になりました。このときメルケルは、「明快な状況把握と対策についての説明」を行い、国民に対して冷静にソーシャルディスタンスの必要性を訴えたということで、評価を受けたのです。

ドイツ、メルケル首相のスピーチが評判を呼んでいます

ところが国民はソーシャルディスタンスを守らず、感染爆発を招いてしまったため、メルケルも「感情爆発」したというだけのことです。連邦制のドイツは州の権限が強く、メルケルの方針に従わないところも少なくありません。しかも、メルケルは2021年9月をもって政界引退を表明していますし、レームダック化している状態です。「涙ながらに訴える」ことしかできなかったというべきでしょう。このメルケル首相のどこに日本が学ぶところがあるというのでしょうか?

日本のリベラルは、「戦後処理」に関しても、よくドイツを引き合いに出して日本を批判します。いわく、「ドイツは戦後処理をきちんとしたから、ヨーロッパでの信頼を回復した。日本は戦後処理をしてこなかったから、アジアから不信感の目で見られている」というものです。

しかし、これはまったくの間違いです。たしかにドイツは西ドイツ時代、ユダヤ人虐殺などへの個人補償については、日本円で総額約6兆円を支払ってきました。しかし、それは主に600万人ものユダヤ人虐殺についてです。しかもナチス・ドイツのホロコーストは、戦争犯罪ではありません。戦争とは関係なく行われたものです。

そしてドイツはホロコースト以外の戦時賠償については完了していません。それは戦後、ドイツが東西に分裂してしまったこともあります。そもそも東西ドイツとも、講和条約や平和と呼べるものを連合国と結んでいませんでした。それが結ばれたのは、東西統合が現実になった1990年になってからです。ドイツ最終規定条約というもので、フランス、イギリス、アメリカ、ソ連との間で調印されました。

そもそも、第1次大戦のドイツに対する過酷な賠償がナチスを生んだという反省から1953年、西ドイツと米・英など西側の債権国19か国は、ロンドン債務協定を結び、ドイツが負っている借款を半減し、その総額145億マルクを1994年までに返済すると定めました。

ところが西ドイツは、協定を盾に、ドイツの再統一まで講和条約の締結と賠償支払いを凍結したのです。そして1990年、ドイツ最終規定条約が締結されると、英米仏ソはベルリンを含めて、ドイツにおいて保持してきた全ての権利を放棄、これによって賠償問題は消滅します。

また、西ドイツは西側12か国やユーゴスラビア、チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランドとの間で、戦争中の相手国国民請求に対する補償の一括支払いを行いましたが、共通しているのは、いずれも対象をナチス犯罪の被害者としている点です。

つまり、ナチス犯罪の被害者に対する「個人賠償」はしているものの、「国家賠償」はしていないのです。ドイツはドイツ人も「ナチス犯罪」の被害者として位置づけています。

ワイツゼッカー元大統領が行った「荒野の40年」という有名な演説でも、彼は「苦しめられ、虐げられ、辱められた国民が最後にもう一つありました。私たちドイツ国民です」と述べ、ドイツ国民をナチスの被害者だと規定しています。

だから、2013年4月には、ドイツに対して第2次世界大戦の賠償を求める動きがギリシャで起こりました。

ギリシャ、第2次大戦の賠償をドイツに要求へ

さらに近年はロシアからも、ドイツに戦時賠償を求める声が上がっています。しかし、ドイツはいかなる支払いも行わないことを宣言しています。この態度こそ、「日本は見習え」と言うべきでしょう。

一方、日本は終戦後、各国との個別の合意の上、当時の金額で1兆300億円という巨額を、国家賠償あるいは経済協力として、いちはやく関係各国に支払いました。どちらが「戦後処理」をきちんとしているかということは、言うまでもないでしょう。

話が少しずれましたが、新型コロナ対策で世界中から評価されているのは、メルケル首相ではなく、台湾の蔡英文総統のほうでしょう。ブルームバーグは「今年の50人」に蔡英文を選出しました。もちろん、新型コロナ対策が評価されたからです。ブルームバーグは蔡英文総統を「台湾のコロナクラッシャー」と紹介しました。また、アメリカの各州の州議会議員でつくる組織、米国立法交流協議会(ALEC)は3日、蔡英文総統に「国際的先駆者賞」を授与すると発表しています。

ブルームバーグ「今年の50人」に蔡英文総統 コロナ対応を評価/台湾

メルケル首相の発言は手放しで称賛する一方、日本のメディアではこうした報道はほとんどされていません。どう考えても日本が学ぶべきは、防疫に成功した台湾のほうでしょう。にもかかわらず台湾を無視する姿勢は、WHO同様、中国の息がかかっているとしか思えません。

現在、台湾のコロナ対策を紹介するドキュメンタリーが台米共同で制作されており、来年には日本を含む約30カ国・地域でディスカバリーチャンネルが放送する予定だそうです。

台湾のコロナ対策は「団結、適応、革新の集大成」=蔡総統

偏向した地上波や新聞などを見ていても、百害あって一利なし。有益な番組を選んで、きちんとした知識を身につけるべきです。


 

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image by: GYG Studio / Shutterstock.com、glen photo / Shutterstock.com

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