いつの世もあまねく人は「平等」を求め続けるものですが、では一体「何の」平等を欲しているのでしょうか。今回の無料メルマガ『成功者たちの習慣 VS. 普通のひとたちの習慣』では、国際ビジネスマンで心理カウンセラーの経験も持つただのひろしさんが、かつてモロッコのイチゴ農場を訪れた際に思うに至った「人が本当に求めている平等」について綴っています。
幸せな成功者は、みんなに平等!?
もうだいぶ前にはなりますが、わたしが初めてモロッコを訪問したときのお話です。
実はモロッコにはイチゴ農場と加工工場を見に行ったのですが、そこでは、イチゴはすべて手摘み、加工もほとんどが手作業で、しかもそれら手作業は、女性の仕事と決まっているようなんです。
聞いたら、モロッコでは(というか、アラブ系の国はみなそうらしいですが)、農場での肉体労働は女性の仕事。男性は基本的に指示するだけ。ということのようなんです。
畑で仕事をしている彼女たちの、一日中、腰を曲げてイチゴを摘む姿に、思わず手を合わせて、ありがとう!と心の中で叫んでしまいました。
とにかく、とーっても貴重なイチゴです。粗末には扱えませんよね。
因みに、イチゴを摘む仕事をしている女性のその当時の月収は、ほとんど毎日、朝8時頃から夕方5時くらいまで働いても、だいたい2万円くらい。そして、女性は、よほど地位の高い家のお嬢様でない限り、今でも高校以上にはほとんどいかせてもらえないそうです。
では、そんな彼女たちは、不幸そうな顔をしているか?ぶつぶつと不満を言いながら仕事をしているか?っていうと、決してそうではなく、どちらかと言うと、みんな笑顔が素敵で、とても幸せそうな顔をして働いているんです。
何故だと思います?
別に、それが当たり前。だからなのでしょうね。
そんな、男女差別が当たり前な(といっても彼・彼女たちは差別とは思ってないかもしれませんが…)、モロッコという国に、ベルギーの会社が入ってきて工場を建てました。それがそのときに訪問した工場です。
オフィスにはベルギー人男性4人と、現地採用のモロッコ人がやはり4人。そのうち、女性が2人。
女性のうちのひとりは、工場の現場で仕事している何百人という女性から、仕事のできる女性を特別に抜擢したのだそうです。彼女はすぐに事務の仕事をマスターして、今ではこの工場での事務仕事には欠くことのできない存在となっているようです。
そしてこのベルギーの会社、従業員全員の給料を公開しているのだそうです。もちろんここで働くベルギー本社からの出向者たちの給料も含めて。誰がいくらもらっているか、どのような地位のひとがいくらもらっているか、全部わかっちゃうんです。
そうなると、ひととの比較という概念が生まれてきて、給料の低いひとには不満、というものが生まれますよね。しかし、実力と努力次第で、自分もどのくらいの給料がもらえるようになるか、その情報を公開しているとも言えるのです。
もちろん、この会社は、全員に平等にどの立場にもなれるチャンスを与えています。
但し、平等であること、それがすべて素晴らしいことかというと、平等に扱おうとして、却って嫌がられることがあるそうです。当然、女性にもチャンスを与えよう、というのですから、男性には反発を食う制度ですよね。
では、女性にはすべて手放しで歓迎されているか?
西洋風の接し方に慣れていないモロッコの女性に対して、西洋風のやり方で接することは必ずしも心地の良いことではないようです。だから、こんだけやってあげているんだから、みんな感謝して当たり前!という考えだと、それは、“先進国のエゴ”、ということになってしまいます。
但し、モロッコにだって、いつか出世したい、と思う女性もいるはずです。もっと給料が欲しい!もっと平等に扱われたい!と思う女性だってたくさんいるでしょう。
だから、そんな女性たちにとって、この会社で働くことは、他の会社・ひとと比べて給料が高い、安い、ということよりも、チャンスがたくさんある、という点でものすごいモチベーションになっているはずなのです。
当時はまだ、工場長以外の主要なポジションには、ベルギーから、大学を出たばかりの男性を採用していたようです。全員男性だったのは、まだまだ、女性の上司だと抵抗を感じるモロッコ人男性が多いからだそうです。
そして何故、大学卒業後まもない若者だったのかというと、ベルギー人の給料も、モロッコ人に合わせて相当安く設定していたから、だったようです。若い人はお金よりも経験を欲しがっている、ということが分かっていたから、彼らはそれでも優秀な人材が集まることに自信を持っていたんですね。
さらに、ベルギー本社の考えは、安い給料で若者に海外で働いてもらう代わりに、その頃に経験したことをもとに、ある程度の知識・経験を積んだところで、どんどん新しい国での事業に参加させる、ということなのだそうです。
だから、当時、実際にモロッコで会った若者たちは、みな自信に満ち溢れ、笑顔がとても素敵な若者ばかりでした。
一方、モロッコで採用されたモロッコ人の若者にも、自分が望めば、ベルギー人に与えるのと同じ経験が可能なことを約束していました。
で、このベルギー本社の本当にすごいところは、モロッコ人を支配しようなんて考えもないし、モロッコ人を利用して自分たちだけが利益を上げよう、なんて考えもないし、こんだけやってあげているんだから、まさか会社を辞めたりはしないよね!なんて、考えもまったくないっていうところだと思うんです。
この会社のトップのひとたちのプライドは、世界一の冷凍フルーツの企業であること。自社で教育した世界中の人間はどこに行っても活躍できる、と胸を張って言えること。
世界レベルで、一流の会社・一流の人間でいる限り、そして、他の会社では味わえない貴重な経験が積める会社であり続ける限り、そういうチャンスを与えられる会社であり続ける限り、ほんとうに必要な人材は辞めていかないし、たとえこの会社を辞めて巣立っていった優秀な人材も、必ず自分たちにとってプラスな人材となって戻ってくる。彼らにはそういう自信があるんでしょうね。
ほんとうにひとが求めているのは、“平等に給料をもらうこと”ではなくって、“平等にチャンスをもらうこと”なのかもしれませんね。
今週も最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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