今や独力で日本経済を牽引していると言っても過言ではない『鬼滅の刃』ですが、その魅力のひとつに「読者の心を動かす数々の名文句」が挙げられています。今回の無料メルマガ『システマティックな「ま、いっか」家事術』で著者の真井花さんが注目したのは、作中頻出する「頑張ったなあ」という台詞。真井さんはその理由を解説するとともに、私たちにも実生活で口に出してみることを勧めています。
「鬼滅の刃」時透無一郎を救った言葉から学ぶこと
さて、本日は名セリフのお話。
ちょっとは下火になってきた(?)『鬼滅の刃』ブーム。みなさんは映画を観に行きましたか?マンガは読みましたか?みなさんの推しは誰でしょうか?私は、実弥推しです♪
このマンガについて、いろいろ寸評が出ています。私もコメントしたいところがたくさんあるんですが、そのうちのひとつが
- セリフ
です。まあ、名文句集がすでに発売されているくらいだからみんなグッとくるセリフがあるんでしょう。
で、気がついたんです、作中同じようなセリフが何度も出てくるんですよね。
登場人物に時透無一郎(ときとう・むいちろう)という天才剣士がいます。双子の兄が鬼に殺されているのですが、無一郎はこの兄が大好き。強敵を倒して死んだとき、迎えに来てくれたのは、この兄でした。
で、言うんですよ。この兄が無一郎に向かって
- 頑張ったなあ
と。このセリフ、実は結構あちこちに出てくるんですよね。
特に名文句ではなく、言われるシーンによって感動するタイプのセリフですよね。この頑張ったなあ、どういうシーンで言われるのかといえば
- 本人の努力を認めてあげるとき
です。頑張りなさい、とは似ているけど、決定的に違いますよね。頑張りなさいは
- 本人の努力がまだ不足しているとき
に言う言葉です。語尾が違うだけなんだけど、あまりにも決定的な違いだわ。一方はねぎらいなのに、他方は励まし。もっと言えば
- 一方は現状肯定なのに、他方は現状否定
全然違いますね。
この言葉が、あのマンガに頻繁に出てくるのは、意味のないことではないと思うんです。ジャンプ掲載のマンガらしく、『鬼滅の刃』は主人公たちがイッパイ努力をする話です。
で、その努力を見ている人、分かってくれる人がいるんですよね。無一郎のお兄さんみたいに。自分にとって、大切な人にこのセリフを言ってもらえると、報われちゃうんでしょうね。
で、どうやら、このセリフが必要な人たちが現実社会にもわんさかいるみたいなんです。
『鬼滅の刃』の時透少年のセリフ
- 頑張ったね
のお話でしたね。鬼滅の刃がヒットした理由はたくさんあるでしょうが、このマンガに登場する名セリフもそのひとつでしょう。『鬼滅の刃』に良く出てくるセリフが「頑張ったね」なんです。
日本では、「頑張ってね」はたくさん言い合うけど、「頑張ったね」を言うことはほとんどありません。そのせいなのか、みんな
- 自分は頑張ったことを認めて欲しい
と思っているように感じます。とりわけ
- じーちゃん・ばーちゃん世代
です。妙な家事スキルや方法論を展開するおばーちゃんっていませんか。いつの話なのソレ的なヤツ。以前は私もそれを言ってくる理由が分からなかったんですが、次第に
- 頑張ったねって認めて欲しいのかな
と思うようになりました。さすがに彼女たちも、そのやり方が今でも通用するとは思っていないようなんですよね。それにも関わらず言ってきたり押しつけてきたりするのは、スキルや知識として伝えようとしているのではなく、それにヒモ着いている
- 自分たちの感情に注目してほしい
んだと思うんです。
- 今より辛い状況で
- 便利な家電もなくて
- 家族も非協力的で
- 人数も多くて
- 自分ではおカネを稼げなくて
辛くても、苦しくても、そこにしがみつく以外に生きていく道がなくひたすら頑張ってきたんです。こういうことを
- 頑張ったね
- 大変だったね
といって認めてほしいんだと思うんですよ。だから、多分ばんばん吐き出させたら、スッキリして憑きものが落ちたようになるんじゃないかなあ。
赦しが足りないと言ったのは、『アーミッシュの赦し』でしたが、日本人に足りないのは、
- ねぎらい と いたわり
なんだと思います。
まあ、もっとも、これが分かっていてなお、頑張ったね・大変だったねと言ってあげられるかというと、また別問題なんですよね。その本人のパーソナリティもあるし、長い付き合いの歴史の中でこちらもイヤな思いをしていると、到底ねぎらう気持ちになれないんですよ。まあ、難しいところですね。ヒソヒソ。
今年は、頑張ってねの代わりに頑張ったねと言ってみませんか。意外と人間関係もあなたも変わるかもしれませんよ。
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