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日本人が知らない2022北京五輪の醜悪。森叩きの裏で蠢く本当の悪とは何か

日本では現在、東京オリ・パラ競技大会組織委員会の森喜朗会長の失言による辞任問題が大きな話題となっていますが、2022年に開催予定の「冬季北京五輪」のボイコットを呼びかけるチベット人の会見など、北京五輪に関する批判の声を見かけることはほとんどありません。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では著者で台湾出身の評論家・黄文雄さんが、チベット人やウイグル人を迫害する中国と北京五輪に対して多くの批判の声があがっている現実を紹介しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年2月10日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【中国】日本がちっとも報じない「冬季北京五輪」を糾弾する声

北京五輪ボイコットを 中国の少数民族迫害で在日チベット人ら会見

2月4日、在日のチベットやウイグル人らが東京で記者会見を開き、中国で行われているウイグルやチベット、モンゴル、香港人への弾圧の即時停止を訴え、状況が改善されない場合は国際オリンピック委員会(IOC)や各国は来年2月に開催される冬季北京オリンピックをボイコットすべきだと主張しました。

この2月4日は、前日の日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で森喜朗会長が「女性蔑視発言」を行ったということで謝罪・撤回会見を行った日でした。メディアはこぞって森氏の会見ばかりを報じましたが、この在日チベット人らの会見については、新聞は数紙が報じたものの、テレビなどはほとんどが無視していました。

2008年の北京オリンピックの際、長野市で聖火リレーが行われましたが、当初出発地として予定されていた善光寺は、チベット問題を理由に出発地となることを辞退しました。

善光寺は長野冬季五輪や1964年の東京五輪の聖火リレー出発地でもあったのですが、チベット問題を看過できないということで、勇気ある決断をしたわけです。

● 善光寺、北京五輪の聖火リレー出発地を辞退 チベット問題を理由に

2022年の北京オリンピックでは、さらに状況は悪化しています。

一方、テレビや新聞、国会などでは、毎日、森喜朗氏の発言について「オリンピックの精神に反する」と大々的に問題視、糾弾していますが、いまだ中国のウイグル弾圧を問題視し、「オリンピック精神に反する」と批判するメディアやコメンテイターを見たことがありません(スポーツライターの二宮清純氏がフジテレビの「プライムニュース」で、IOCがもっと中国に人権問題を問いただすべきだと発言していたと聞きましたが、それ一件くらいです)。

 

様々なメディアがこぞって森氏の「問題発言」を取り上げていますが、本当に正しいのはどの発言なのか、よくわかりません。マスコミの切り取り報道は今に始まったことではありませんので、気をつけなくてはなりません。

それについても、連日、森氏の言葉を糾弾するばかりか、森氏を擁護する発言すらも「問題発言」として、メディアでは評論家、野党政治家、元アスリートなどが批判の大合唱を繰り返しています。日本人の人権意識が高まってきた表れでしょうか。

そうだといいのですが、私はあまり期待していません。日本に半世紀以上暮らしている私はだいぶ慣れましたが、日本では人権平和を声高に叫び、政治家などの問題発言を糾弾する人に限って、別のもっとひどい人権問題について、一言も発しなくなることをよく見かけるからです。

典型なのは、中国によるチベット、ウイグルへの弾圧や、台湾への武力恫喝などです。私もこれら中国の人権弾圧について、日本国内で訴えてきましたが、人権派といわれるマスメディアや文化人、言論人ほど関心を示さないのです。

とくに政治家などが人権に関する失言を行ったときに、ここぞとばかり糾弾する人、日本の軍事力増強に反対する人ほど、その傾向が強いと思います。人権問題への意識が高いのかと思いきや、中国でのチベット問題やウイグル問題、中国の核武装などにはまったく関心を示さず無視する。

中国の脅威にさらされてきた外国人や少数民族が、そんな「偽善的」な日本人にがっかりすることも少なくありません。

新疆ウイグル自治区では100万人のウイグル人(「ウイグル族」という呼び方は、ウイグルの人々は嫌っています)が強制収容所に入れられ、思想改造や強制労働を強いられているとされていることは、すでに世界的な「常識」です。また、約10万人のウイグル人男女が不妊手術を強制させられていると報じられています。

ウイグル族ら10万人不妊手術 中国強制?5年で18倍

アメリカやカナダは、中国のウイグル弾圧を「ジェノサイド」と認定しました。中国がナチス・ドイツのユダヤ人弾圧と同じことをやっていると、公式に宣言したわけです。

テレビ局にしても、これだけ森発言を問題視するほど人権意識が高いのですから、中国の人権弾圧に抗議して、「北京オリンピックをいっさい放送しない」と宣言する放送局があってもいいはずです。それともやはり、金のためには人権などどうでもいいのでしょうか。

北京オリンピックのスポンサー企業も同罪です。

繰り返しになりますが、私は、日本の平和運動や人権活動というのは、非常にいかがわしいと思ってきました。というのも、自分と意見が合わない相手を批判するための単なる「道具」として平和や人権を利用しているだけで、本当に平和人権を尊重しているわけではないようだからです。

多くの反戦平和団体や人権団体は、日本で反戦平和を叫ぶものの、中国の核武装や軍事増強、人権弾圧に対してなにも言わないことです。日弁連などはその典型でしょう。完全にダブルスタンダードです。

とくに左翼の中にはそうしたダブルスタンダードが強いため、「日本の左翼は『中国の核はきれいな核だ』と思っている」と、保守派からよく揶揄されています。

今回、森喜朗氏1人の発言だけでもこれだけ人権問題として大きく取り上げたメディアや政治家などが、ジェノサイド認定されている中国の人権弾圧を論じず、何事もないかのように北京オリンピックに協賛し、莫大な放映権料を支払い、礼賛するということがあれば、完全なダブルスタンダードです。中国のカネや利権のために、ウイグル人やウイグル人女性の人権問題をなかったことにするということは、完全に良心の欠如です。

いま、正義ぶって森氏を糾弾している人たちのなかで、どれだけが中国の人権弾圧を批判するでしょうか。それとも中国についてはスルーするのでしょうか。私はじっと見ています。

台湾では、中国から渡ってきた国民党による「白色テロ」により、多くの台湾知識人が虐殺されました。世界一長い戒厳令が敷かれ、密告が奨励されました。そのなかで、仲間を裏切って密告するようなケースも多くありました。

悲しい話ですが、密告しなければ同罪となり自分や家族の命が危うくなるというなかでは、仕方なかった部分があるとは思います。また、現在の中国でも公の場で政権批判をすれば、あっという間に逮捕されてしまいます。

そのような環境にあれば、中国を糾弾するのは生命にかかわることですが、日本では中国批判をしても危害を与えられる心配はありません。にもかかわらず、森氏の発言を声高に批判しながら、中国の人権弾圧に声をあげないならば、結局、人権問題などどうでもいいと考えているということなのでしょう。

そういう人たちは、偽善者で変節漢であり、いざとなれば簡単に裏切ります。絶対に信用してはいけない人たちです。

もちろん、政治とスポーツは切り分けなくてはいけないという意見もあります。しかし、オリンピックを政治利用しているのは中国のほうです。習近平は、北京が世界で唯一、夏冬両方の大会を実施した都市となることを目論んでいます。

また、北京オリンピックの試合会場を視察し、準備が順調に進み、多くのウインタースポーツ種目が初導入され、世界の先進レベルに達したのは、「中国の制度の優位性を具現化するものだ」と語っています。つまり、「中国共産党独裁こそが世界でもっとも優れている制度だ」と宣伝しているわけです。

● 習主席、冬季五輪の技術革新を強調

北京オリンピックに協力するということは、意図するかどうかにかかわらず、この中国の独裁体制、ウイグルやチベットなど少数民族弾圧、香港の人権弾圧などを正当化することにつながってしまうわけです。それは1936年のナチスドイツ政権下のベルリンオリンピックの二の舞になるということです。

1年前のことを思い出してみれば、WHO(世界保健機構)のテドロス事務局長は、中国・武漢発の新型コロナウイルスについて危険性を軽視し、「貿易や渡航は抑制すべきではない」と発言し続け、中国の責任を追求するどころかその対応を礼賛し、さらには緊急事態宣言をなかなか宣言しなかったことで、世界に新型コロナウイルスの蔓延を招いてしまいました。
テドロス事務局長には、エチオピアの外相時代に中国から多額の資金援助を受けたために中国に頭が上がらないとも言われています。

● WHOが「中国寄り」と言われたワケ…世界を翻弄した「迷走」の数々

WHOを検証する独立委員会は1月18日、WHO執行理事会に提出する中間報告を発表し、中国とWHOの初動対応を批判しました。WHOが緊急事態宣言を避けたい中国の思惑に忖度して、宣言を見送ったと言われています。

● WHOを検証する独立委、中国のコロナ初動対応批判 WHO自体についても疑問視

北京オリンピックや中国での金儲けのために人権問題を蔑ろにすれば、WHOやテドロス氏と同じそしりを受けるでしょう。

森喜朗氏は謝罪撤回会見で記者からの質問に対して、「面白おかしくしたいから聞いてるんだろ?」と逆ギレしていましたが、北京オリンピックを問題視しないのならば、人権問題を政権批判に利用しているだけ、叩きやすい人物を袋叩きにして「面白おかしく」喜んでいるだけで、森氏の言ったことの正しさを証明することになってしまいます。

中国は日本に対しても核の恫喝を繰り返していますが、日本のマスメディアはほとんど知らないふりを決め込んで報じません。中国の官製メディアは沖縄を「日本のものではない」と公然と語っていますが、そうしたこともまったく報じないのです。その一方で、インターネットではそうした真実が伝えられているため、ますますメディアから国民が遊離していっています。

今後、多くの人に中国での人権弾圧の実態を知ってもらいたいと思うとともに、メディアや識者がどのように北京オリンピックを論じるか、誰が信用できない人物か、注意深く見守っていきたいと思います。


 


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image by: cowardlion / Shutterstock.com

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