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五輪中止と菅辞任。自民党に残された選挙で大敗しない唯一の手段

新型コロナ対策や東京オリンピック・パラリンピックを巡るさまざまな問題等、難題を抱えて政権運営に当たる菅首相。任期満了を迎える10月までに選挙を行う必要があるわけですが、自民党にとってはどのタイミングがベストなのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、さまざまな要素を勘案しつつ、その「最適解」を探っています。

自民党は解散総選挙をいつ行うのか?

今年の10月までには衆議院選挙を行う必要がある。しかし、いつ解散するのであろうか?自民党にとって最良の解を検討しよう。

前回、東京五輪ができるかという疑問を検討したが、次の疑問が自民党優位の状態で衆議院解散総選挙ができるかどうかである。

【関連】森会長の失言だけにあらず。東京五輪の開催が「絶望的」なワケ

もし、自民党が負けて大幅な議席減になると、政権が安定しなくなり、海外投資家が日本から逃げることになる。このため、自民党が負けても議席数があまり減らないようにする必要がある。大負けを防止することに全力を注いだ方がよいと思う。

このためには、日程と選挙できる条件が必要になるが、非常にタイトになっている。

東京都議会選挙は告示日6月25日、選挙日7月4日であり、この期間は公明党から自民党は衆議院選挙を自粛してほしいと要請されている。

東京五輪は7月23日から8月8日、パラリンピックは8月24日から9月5日までであり、この期間は衆議院選挙はできない。

衆議院議員の任期満了は、10月21日であり、そこまでに選挙をする必要がある。

ということは、今から6月中旬までと、9月中旬から10月初めまでの期間しかない。

コロナ緊急事態宣言中は、できないから3月中旬以降しかできない。4月から5月と9月中旬以降の日程的に2つしか可能性がない。

自民党優位になる条件は、五輪を開催できるめどが立ち、ワクチンの接種が順調で、皆が安心できる状態になることが必要である。最低でもワクチンの接種が必要である。

選挙前に、「コロナ復興増税」の話はできないはずが、財務省を中心に議論が漏れてきている。森会長の後任問題でも混乱している。状況的には非常に良くないことになっている。自民党の欠点が出てしまっている。難しい選挙になる。

もう1つが、選挙戦での活動でも密が発生するので、選挙戦前には65歳以上の人のワクチン接種が必要である。どこの選挙も65歳以上の暇なお年寄りが中心に選挙戦を戦っているからだ。野党も与党も、ここは変わりがない。

五輪開催でもワクチンの確保と接種を円滑にすることが必要であるが、世界的なコロナ・ワクチン争奪戦が起きていて、4月以降でないとまとまった量を確保できないようである。

65歳以上の人への接種でも2ケ月以上はかかるので、4月中旬から6月末までかかると、6月末までの日程はあり得ないことになる。

ファウチ米国立アレルギー感染症研究所長も、東京五輪・パラリンピックの開催に向けた新型コロナウイルス対策について「日本の人々、そして日本を訪れる多くの人々の安全を確保するガイドラインのようなもの」を作成すべきだと提言したが、ワクチンが不十分な状態での東京五輪ができるかどうかをガイドライン作成で検証してほしいということである。

このファウチ所長の前に、バイデン大統領も五輪ができるかどうかは、科学的な事実で検証してほしいというし、米国は五輪への選手派遣ができるかどうか決めていないと断言している。

もう1つ、悪いことに、次のコロナ4波は変異種が中心になる可能性が高い。アストラゼネカのワクチンは、南アの変異種には効果が限定的であると言われる。この対応のワクチンがいつ出てくるかも重要なポイントになる。

もう1つ、経済的な面から二階幹事長は、3月初めから再度GoToトラベルを行うというので、大都市で感染が確認されている変異種の全国的な蔓延も想定することが必要になる。次の4波は5月から始まり、6月に緊急事態宣言を出して、7月には収まるのであろう。

このような複数の条件をスケジュール表に書き込むと、五輪を中止して、選挙を8月、9月に行う方がよいのではないかと思える。

もし、五輪を開催すると、9月中旬から10月初めの一択になってくる。これは追い込まれ解散になるので、自民党は大負けの可能性が出てくるし、野党に突っ込まれて選挙になる可能性も出る。

ということは森会長の後任は、東京五輪中止を根回しできる人が必要になる。その観点からの人選をするべきだ。敗戦投手を選ぶことになるので、なかなか難しいことになる。政治的にも難しい役回りになる。川淵氏を蹴ったことで、人選がより難しいことになった。

会長人事は御手洗冨士夫名誉会長(キヤノン代表取締役会長)をトップに据えた「選考検討委員会」を設置し、後任候補者を選定するという。35人の理事の中から、10人弱の検討委員会メンバーを男女比をほぼ半々にして選ぶというが、橋本聖子大臣になる確率が高いようである。

ここまでゴタゴタが続いたことで、五輪開催を中止しても国民は納得できるはずだし、やっても、無観客での試合なら、観光業にもメリットがなく、開催中止の打撃は、それほど大きくない。

そして、五輪を中止したら、日程的なゆとりができるので、ワクチンの確保ができた時点で、選挙日を決められる自由度があるのでよいことになる。

五輪中止になると、菅首相は辞任の方向であり、選挙後速やかに辞任すると明言して、自民党の危機感を醸し出して戦うしかないように感じる。去年の11月に選挙をするべきであったと思うが手遅れである。

反対に野党からすると、日程的にタイトにする方がよく、五輪開催をごり押しした方がよいことになる。野党の皆さんは、五輪中止を騒ぐのではなく、五輪強行を主張した方がよいことになる。

このように攻守が逆転してくる可能性もあるようだ。

さあ、どうなりますか?

image by: 首相官邸

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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