かつては「集合住宅でペットを飼うのは不可能」という考え方がある意味当たり前でしたが、それはもはや「古い常識」のようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、現在新築マンションのほとんどでペット飼育が許可されているという事実を紹介。その上で、ペット不可マンションをペット可にする議論が出ても良いのでは、という見方を記しています。
ペット飼育可、不可の分かれ目の竣工年は?
こんにちは!廣田信子です。
みなさんのマンションは、ペット飼育可ですか、不可ですか?
コロナ禍で、自宅で過ごすことが増え、犬や猫などのペット需要が高まっているといいます。遊びに行けずにストレスをためる子供の心を癒やすために、ペットを飼い始めたというお宅もあります。
Aさんは、ペットを飼ったことがなく、共働きで、昼間誰もいなくてペットがかわいそうだとこれまで、犬を飼いたがる子供たちを説得していたのですが、在宅勤務が増え、その理屈も通用しなくなったので…と犬を飼い始めました。今では、大人の方がペットに癒やされている、父親と娘の会話も増えたみたい…と、ペット効果を感じていると言います。
Aさんのマンションは築17年。最初から、ペット飼育可の規約だったので、飼うことに何の問題もありませんでした。マンションを購入するときは、ペットを飼うことを特に考えていなかったので、もし、ペット不可でも購入していたかも…。たまたまペット可のマンションでよかった。実は、子供同士が仲良しの隣のマンションのママ友Bさんがとっても困っているみたいで…と。
Bさんのマンションは築22年、外から見ると、同じような大型マンションですが、こちらは、最初から、ペット飼育不可なので、ペットを飼うことはできません。学校の友達同士でペットの話で盛り上がっているのに、ペット不可のマンション暮らすBさんの子供は、その話に入れず、寂しくてたまらないのです。何でペットを飼えないマンションを買ったの…と責められて、巣ごもりのイライラもあって、なんか親子げんかになることが多くて…と。
管理規約の説明をすると、規約を変えるように管理組合に言ってよ…と言われるし、ペットアレルギーの人がいるかもしれないから、ペット不可を可に変えるのは難しいのよ…と言ってもどこにペットアレルギーの人がいるの?お隣のマンションには絶対にペットアレルギーいないの?と理屈で迫ってきて…何か、自分も、状況は変わるのに、最初にどちらの規約だったかで、運命が決まってしまうって、何だか納得いかなくなってきた…とBさんは言っているのです。
Aさんは、Bさんに、ペットを飼ってよかったということはなかなか言えなくて、飼うと、やっぱりいろいろたいへんよ~なんて言っているけど、何だか気の毒で…と。
実は、AさんのマンションとBさんのマンションの竣工年度の差のあたりに、ペット飼育に関する管理規約の大逆転があるのです。
国土交通省のマンション総合調査によると、全体では、
- ペット飼育可が59.3%(サイズ等の条件付き可49.3%、全面可4.1%、規則なし3.9%)
- ペット飼育不可が40.3%
すでに、ペット可のマンションが6割になっているのです。マンションは基本ペットが飼えないという常識は、もう過去のものなのです。特に平成17(2005)年以降竣工のマンションでは、
- ペット飼育可が93.2%
- ペット飼育不可が4.2%
…と、9割以上がペット飼育可として売り出されているのです。どのへんから逆転があったかというと、平成7(1995)年~11(1999)年
- ペット飼育可が27.5%
- ペット飼育不可が63.7.%
平成12(2000)年~16(2004)年
- ペット飼育可が65.7%
- ペット飼育不可が30.6%
と大逆転していますので、このへんが、ペット飼育可か不可かの分かれ目になっているようです。この変化は、購入予定者の意向をくんでのことです。
今、ほとんどの新築マンションがペット可ですから、当然、その中にはペットアレルギーの方もいるはずです。そこで、共存ができているのであれば、その知見を活かして、ペット不可マンションをペット可にすることも、考えられるはずです。
そろそろ、最初に規約でどう決まっていたかで、何十年先までも縛ることになるのは、あまり合理的ではない…という議論が出てもいいのにな~。そんなことを思いました。
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