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芸人キンタロー。が保育園を叩き大炎上。謝罪のプロが指摘した最大のリスク

保育園に預けた1歳の娘がケガをしたとブログで公表し、怒りをぶちまけたその言動が「傲慢だ」「自分は悪く無いと言いたいだけ」と批判され、SNSなどで炎上しているモノマネ芸人のキンタロー。さん(39)。今回の炎上騒動の原因はどこにあったのでしょうか? 「謝罪のプロ」として知られ、コンプライアンス研修の講師も務める増沢隆太さんは、キンタロー。謝罪騒動について「キケンな炎上要素が満載」と分析。まぐまぐのコンテンツプラットフォーム「mine」内で、今回の騒動を検証しています。

キンタロー。さん謝罪騒動がキケンな訳

お笑い芸人キンタロー。さんが、ご自分の子供が保育園で怪我をしたことをブログで掲載し、批判を呼んでいます。相変わらず絶えることない謝罪芸能人ですが、キンタロー。さんの場合、キケンな炎上要素が満載で危惧されます。

キンタロー。さんの騒動と立ち位置

ちゃっきり娘の春美姉さんのように、歴史的にもビジュアル的に優れた芸人さんはいますが(なんで例がちゃっきり娘? 昭和の人でも知らないのに!)、キンタロー。さんはビジュアルを逆手に取り、当時絶頂だったAKB前田さんをパロった芸で人気を得ました。その後もダンスなど努力やまじめさが評価され、好感度はどんどん上がっていったと考えられます。結婚後はお子さんもでき、芸能活動を継続していますが、実は今回それが原因でトラブルとなりました。

保育園に預けた子供が怪我をしてしまい、そのことをブログで「どうしてもっと注意してくれなかったのか」と批判したというニュースがネットに流れ、一気に加熱した状況です。ネットニュースにこのような可燃材料が投下されますと一気に炎上するリスクが高まります。ブログなど見ていない、ネットニュース見出しだけで批判する人が連なり、大炎上に成長する恐れがあります。

特にキケンなのはキンタロー。さんが好感度タレントという立ち位置に来てしまったことです。AKBモノマネ時代はキワモノ的あつかいだったのが、その後のシフトチェンジでどんどん上がった好感度が、今回最大のリスクとなりました。

子犬をかわいがる不良

よくいうコワモテ人物がちょっと良いことをすると急に良い人感が強調されるの法則があります。バリバリのツッパリ(古語。昔不良学生をそう呼んだ)が子犬をかわいがったり、お婆さんの手を引いて横断歩道を渡ったりすると、「実は良いやつ」感が強調されるというものです。

当然ですが良い行いは誰がやっても良い行いであって、その価値はかわりません。しかし本来やらなそうな人物が行うことで希少価値が強化され、より良い印象になっているだけです。品行方正で日頃から良い行いをしている青年が、たまたま横断歩道でお年寄りを手助けしても当然すぎて何とも思われなくなるという錯覚のような現象といえるでしょう。

つまり「落差」があることで印象は強化され、評価や価値が変わってくることになります。

炎上係数と好感度

炎上事件は良くも悪くもベッキーさんが代表と思いますが、その炎上対処を間違った点ではアンジャッシュ渡部さん同様に自己責任の面があります。しかし現実にはその火種だったのは「好感度」でしょう。元気で爽やかなイメージ、全世代男女問わず好かれるキャラクターだった人が、実はとんでもない行為をしたことで、炎上係数はマックスになりました。

【関連】謝罪のプロが分析。アンジャッシュ渡部イケメン&美人妻のリスク

渡部さんも同様に、グルメ、文化人、美人アイドルの夫という本来ポジティブな芸能界ポジションが、炎上係数をこれまた極大化したといえます。お笑いの世界でも「クズ芸人」というジャンルができてきました。ギャンブルや借金、浮気など、人としてダメな部分を自ら認め、それを開示することで共感や自分もダメだけど下にはしたがいる安心感を与えてくれる存在なのだと思います。

スキャンダルも犯罪もダメなことは初めからわかっています。しかし犯罪が歴史上絶対になくならない、恐らくこの先どの未来でも犯罪は起こり続けるのは、われわれ人間が犯罪を犯す存在だからだと思います。これを「起こしてはならない」と言ったところでなくなる訳がありません。

犯罪は謝罪で何とかなる問題ではありませんが、不倫問題など謝罪騒動は犯罪ではなくイメージの毀損であり、起こした後の対処でダメージを最小化できるものだと思っています。あくまで最小化であって、ゼロやプラスに転じることなど絶対に考えてはなりません。

コーポレートコミュニケーション

企業ではPR戦略を専門に管轄する部門を設ける例があります。芸能人もビジネスとしてブログやSNSをやっている以上、危機管理装置を設けたコーポレートビジネスコミュニケーションという体制が欠かせないと思います。

恐らくキンタロー。さんのブログは正真正銘本人が書いているのでしょう。しかしコーポレートコミュニケーションの専門家でもない芸能人にその管理は無理です。企業ブログやSNSでも、担当者に丸投げ放置のようなことをしていれば、いつか炎上するリスクが放置されていることになります。

そうならないようなコーポレートコミュニケーションの手法はいくらでもある訳で、あらゆるスキャンダル、謝罪騒動に共通していえるのは「プロダクションが何をやってたのか?」です。渡部さん会見の失敗を事務所社長がインタビューに答えていましたが、すべて事前にわかることを何一つ対応していなかったことが明らかになりました。これでは何のための所属事務所なのでしょうか。

炎上すればビジネスは停止、あるいはマイナスになる可能性のある巨大リスクです。それを戦略広報の素人である芸能人に投げっぱなしというのはリスク管理上考えられない暴挙だと思います。キンタロー。さんの事件は、その好感度ゆえにさらなる炎上のリスクを負っています。芸能人として好感度を上げることに伴うリスク管理について、コンプライアンス研修ではおよそ追いつかない、経営リスクをビジネスの専門家であるプロダクションが管理しなければなりません。素人のタレントさんにできることではないでしょう。

image by: 松竹芸能オフィシャルプロフィール

増沢隆太

増沢隆太

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「謝罪のプロ」として著名人記者会見のたびにテレビ、ラジオ、新聞でコメントしまくるコミュニケーションのプロ。ロンドン大学大学院では戦争研究を行い、帰国後外資系企業数社でブランドマーケティングを担当した。その後、人事コンサル会社勤務を最後に独立し、人事・経営コンサルタントとして活躍。現在は講演、企業研修、大学生向け講座などで全国を回るほか、東京工業大学の特任教授も務めた。

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