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軍事衝突は不可避か。米中が「第二次太平洋戦争」準備開始の可能性

18日に行われた外相級会談でも激しい罵り合いを展開した米中ですが、もはや軍事衝突は避けられないのでしょうか。「そんな両国はすでに第2次太平洋戦争の準備を開始した」と断言するのは、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。津田さんはメルマガ『国際戦略コラム有料版』で今回、そう判断する根拠を記すとともに、戦時の際に日本は最前線となり、各地の基地や都市に中国の核ミサイルが降り注ぐと警告しています。

米中の新冷戦入りし熱戦に

18日にアラスカで米中外相級会談が行われたが、怒鳴り合いというすごい状況であった。今後の米中新冷戦とその後の熱戦を検討しよう。

アラスカで米中外相級会談が行われたが、紛糾したようである。米国のブリンケン国務長官は、中国にウイグルや香港での人権擁護を要求したが、反対に中国は内政干渉と取り合わなかった。

米国のサキ報道官は「戦略で大きな部分を占めるのは、対中関係に強い立場からアプローチすることだ」と述べたが、中国の趙立堅報道官は「米国側は中国を大いに失望させる発言や行動を選んだ」とした。米中が完全に敵対関係と見える会談になっている。

「厳しく、直接的な対話になると予期していたし、実際にそうなった」とサリバン米大統領補佐官は会談後に記者団に語った。

この外相級会談の影響は、広範囲に及ぶことになる。トランプ政権はディールとしての外交であったが、バイデン政権は人権など価値観外交になって、議論の余地がない。取引ではなく、絶対的な価値を言うので交渉の余地がない。

救いなのが、バイデン大統領が中国を名指しで批判していないことである。国務長官が対中強硬な態度で臨み、最後は大統領がまとめるという外交であると期待したいが、バイデン大統領は足腰も定まらないほど、弱っている。

カラマ・ハリス副大統領がほとんどを代行している状況である。この米政治体制が心もとない。米政府閣内の意見がまとまっているのかも不安になる。

そして、米国も中国も、第2次太平洋戦争の準備を開始した。中国の軍事費は23兆円にもなり、軍事費に計上していない軍事費も合わせると米国と同等レベルになっているとも言う。

中国軍幹部は、米中戦争になる予測理論である「トゥキディデスの罠」を公言している。米軍は第2次太平洋戦争が起きた時にどうなるのかのシミュレーションを行い、補給戦線を延ばした旧日本軍と同じ失敗をすると見ているようである。

中国は戦争を覚悟しているのか知らないが、台湾を中国の領土であり、そこに内政干渉するなと強硬に言い始めている。徐々に言う範囲が大きくなっている。

このため、米国は同盟国をまとめて、戦争に備え始めた。この一環として、英国、フランス、ドイツの軍艦もアジアに送り、日米豪印の「クワッド」と一緒に軍事訓練を行い、戦争準備を進めている。

戦争準備の一環として、中国なしでも困らない生産体制を整えつつある。中国を除いたサプライチェーンの確立である。このため、戦場になる台湾にあるTSMCの工場を米国に建てさせることで、戦争時でも半導体の補給ができるようにする。同様に戦場になる可能性がある日本企業の必要な工場も米国に招き入れるはずだ。

逆に、中国では、米テスラ車を軍人や政治家が使用することを禁止して、軍事機密や軍事施設の場所を特定されないようにするという。また、日本企業の工場を非常に良い条件で中国に招き入れようとしている。しかし、戦争時に工場を徴収できることになる。技術と人を敵対国日本から確保できる。

両国ともに、すべては、戦争に備えるためにである。このような解説をする説を見たことがないが、今の米国と中国が行っていることは、戦争準備、戦時体制構築である。

そして、日本国内でも、対中強硬路線の言動が多いが、日本は今後起こるであろう第2次太平洋戦争時には最前線に位置していることを考量していないことが恐ろしい。最初に中国の核ミサイルの票的になるのが、日本各地の基地や都市である。

このため、米国が中国と冷戦になることはいたし方ないが、熱戦になることは避ける思慮を米中に求める必要がある。

また、中国側の楊潔篪共産党政治局員も米中会談の冒頭で「日韓は中国の第2、第3の貿易相手国で、ASEANは今や最大の貿易相手国だ」と経済的な結びつきを誇示したが、冷戦であっても経済面での打撃はあることも考えておくことだ。

日本企業の中国進出は限定的にして、工場の進出は止めるべきである。進出している企業は撤退を視野に入れることである。今から中国市場に出ていく企業があるが、米中戦争前夜に出ていくことは無謀である。

それであっても、米中両国で協調できる地球温暖化対策などで両国トップ層が会談できる雰囲気を作ることが必要になる。そして、トップ会談で、合意できる範囲で合意して、雰囲気を和らげることである。

今の状態で米中がいがみ合うと、いつか熱戦になると心配になる。

このまま進むと、数年後、突如、中国が台湾・尖閣侵攻作戦とグアムへの攻撃を同時に行うことで戦争になる可能性がある。米国も中国も、お互いに第1次太平洋戦争を研究して、今後の戦争を予想している。中国は、日本の真珠湾攻撃と同時に行った南方侵略作戦を研究しているはず。

中国は、世界の経済力のある国を敵にして戦い、味方で期待できるのは、発展途上国とロシアしかないが、そのロシアも最終段階では、中国を裏切ることになる。中国の勝つチャンスはほぼないことをプーチンは見抜いている。やっても中立であろう。

今の中国の戦狼外交は、世界的にあまりにも多くの敵を作っているからだ。特にインドを敵にしたことは致命傷である。戦略分散になる第2戦線を作ってしまったことになる。このため、最終的には中国は負けるが、日本も戦場になるので、大きな痛手を受けることになる。

この大戦により、戦後、グレート・リセットになる。そのように見通すしかない世界的な経済社会状況にもなってきた。ダボス会議のグレート・リセットは、第2次太平洋戦争の戦後の社会経済体制のことであろう。

米国経済は、量的緩和で行きつく所まで行っても、貧富の格差は拡大し、経済の正常化もできない。このため、大戦争でリセットする必要になっている。

中国経済も金融崩壊に近いために、戦争が必要である。両大国ともにリセットのために、戦争が必要になっているようだ。

ということで、日本も突如の戦争に準備が必要である。それと、その戦争での生き残り策を練ることだ。

そして、政治家・自衛隊・学識者などの皆様に、日本が戦場にならないような戦略や戦術を研究してほしいものである。

さあ、どうなりますか?

image by: Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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