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現役世代は死ねというのか?日本を蝕む介護保険の“甘い汁”と政官民癒着の実態

さまざまな問題点が指摘されている介護保険制度ですが、未来に残すツケは途方もなく大きなものになってしまうようです。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では「Windows95を設計した日本人」として知られる世界的エンジニアの中島聡さんが、国民の潜在負担率が66%と異常な高ポイントを記録した記事を紹介しつつ、今後もこの数字が上がっていくのは確実と断言。その理由として、有権者の高齢化比率の上昇がもたらす「財政健全化より高齢者保護」という圧力を挙げるとともに、老人向けの施設が介護保険制度に特化したビジネスモデルを構築している現状から、同制度に根本的な欠陥があることは確実としています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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潜在負担率66%「軽すぎる重税国家」

財政赤字も将来は国民が負担しなければならないことを考えれば、それも加えた「国民の負担の合計」を国民所得で割った、潜在負担率という定義があることを、この記事を読んで初めて知ったので、紹介します。

財務省によると、分母に国民所得、分子に税負担と社会保障負担の合計値をおいて算出した国民負担率は、2021年度に44.3%になる見通しだ。国民負担率に将来世代の税負担になる財政赤字の比率を加えた潜在的国民負担率は、56.5%と見通している。けっこう高いと感じるが、この数字だけなら中程度のニュースだ。

 

目を注ぐべきは、同時に明らかになった20年度の実績見込みである。国民負担率は46.1%だが、潜在的負担率は66.5%と、法外に高い値が記されている。高負担国家の代名詞であるスウェーデンでさえ潜在的負担率は58%台止まりだ(18年実績)。むろんコロナ対策で、今は同国の負担率も上がっているかもしれない。だが18年の財政赤字比率がゼロという巧みな財政運営を考えると、コロナ対策費を借金でまかなったとしても国の財政の余裕は日本よりはるかに大きい。

この記事によると、日本政府も一時期はこの潜在負担率を重要な指標として捉えていたようですが、安倍政権以来、そんなことは忘れて、財政出動をし続けています。

少子高齢化による有権者の中で高齢者の比率が増えれば、財政の健全化よりも高齢者に対する社会保障を厚くする方向への圧力は高まる一方なので、今後も潜在負担率が増えるのは確実だと思います。

ちなみに、私の両親は日本で老人向けの施設に入って暮らしていますが、その手の施設はいまやどこも「介護保険制度から、いかに多くの収入を得るか」に最適化されたビジネスモデルを作っており、介護費の総額が10兆円を超えたのは当然のことだと思います。

このままでは、高齢化が進むにつれ、それが15兆円、20兆円と増えていくことは確実です。国は自己負担増(現在は10%)などでしのごうとしているようですが、老人向けの施設がこの制度に特化したビジネスモデルを作ってしまっている現状を見ただけで、制度に根本的な欠陥があることは明確だと思います。

しかし、日本では、ひとたびそんな「特定の制度に依存したエコシステム」が出来てしまうと、役人による天下りや政治資金により、政官民一体の癒着体質が出来てしまって固定化してしまう、という欠点があります。

米国の場合、政権が変わるたびにトップクラスの官僚が総入れ替えになるため、この手の癒着が起きにくいし、何か問題があるとなったら、官僚たちが議員たちから(参考人招致ではなく)証人喚問を受けるため、真実が明らかになりやすく、悪いことが出来ない仕組みになっています。

日本もそろそろ、「参考人招致」などという生やさしいやり方は廃止し、最初から(嘘をついたら偽証罪に問われる)証人喚問を全面的に活用すべきです。日本では、証人喚問は「悪い奴に嘘をつかせて牢屋に入れる」手法としてしか使われていませんが、証人喚問は「真実を明らかにするための道具」に過ぎないので、もっとごく普通に使うべきなのです。

34 years ago, a KGB defector chillingly predicted modern America

1984年に撮影された、元KGBの工作員が話したロシア(当時はソビエト)の対米戦略が、まさに今米国で起こっていることと繋がる、という興味深い話です。

この記事によると、その戦略は、ideological subversion(イデオロギーの転覆作戦)もしくはpsychological warfar(サイコロジカル軍事作戦)と呼ばれる武器を使わない情報戦で、米国民が持つ価値観を内部から破壊しようというものです。

2016年の大統領選に、Facebookなどを活用して、ロシアが大きな影響を与えたことは、既知の事実ですが、その背景に、この作戦があったと考えると納得出来ます。

今の米国は、トランプ政権が終わった後も、保守とリベラルの対立は深まったままで、(極右である)白人至上主義者たちによる乱射事件やアジア人への暴力、極左勢力による暴力的なデモと略奪が全米の各地で起こっています。

全てがロシアの情報戦による結果とは思いませんが、2016年の大統領選の期間に、両陣営にばら撒かれたフェイク・ニュースのために、多くの米国人が洗脳されたことは確かだし、トランプ氏が大統領就任中に行った発言が、溝を深めたことは間違いありません。

ちなみに、米国では、(元々は痛み止めの薬である)オピオイド系の薬の中毒者が大量に増えて大きな社会問題になっていますが、それを提供しているのが、メキシコの麻薬組織(Cartel)ですが、そこにこの薬を提供しているのは中国の麻薬組織だという情報もあります(「Two Chinese Nationals Charged with Operating Global Opioid and Drug Manufacturing Conspiracy Resulting in Deaths」)。

さすがにこちらの方は、中国共産党による戦略だとは思いませんが、結果だけ見ると、(米国のライバルである)ロシアと中国がフェイクニュースと麻薬で米国を内部崩壊させているとも言えるのです。「アヘン戦争」は、イギリス(もしくはイギリスの商人たち)による麻薬を活用した中国との貿易戦のことを指しますが、それと似たような攻撃が米国に対して行われていると見ることも出来るのです。

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image by: Shutterstock.com

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