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婚活アプリで出会った彼女は地雷ストーカー。なぜ男はレイプ冤罪の罠に嵌まったか

コロナ禍で先が見えない中、将来が不安な独身男女たちに利用されているのが「婚活アプリ」です。しかし、見ず知らずの相手との恋愛トラブルに発展する危険性を指摘するのは、無料メルマガ『10年後に後悔しない最強の離婚交渉術』の発行者で、開業から16年で相談2万件の実績を誇る行政書士の露木幸彦さん。露木さんは、実例として婚活アプリで知り合った女性とトラブルになった男性の事例を紹介しながら、結婚前に肉体関係をもつ「婚前交渉」の思わぬ落とし穴と、ストーカー気質の相手との危険性についても解説しています。

マッチングアプリで知り合った彼女がストーカーに豹変?

解除されたと思いきや、再び4都府県で緊急事態宣言が再発令される見通しとなり、新型コロナウイルスの感染拡大は、まだ予断を許さない状況です。外出制限や在宅勤務、そして旅行や集合の自粛により、引き続きステイホームを余儀なくされていますが、特に1人暮らしの独身男女は孤独な日々を強いられています。

話したい、頼りたい、一緒にいて欲しい……寂しければ寂しいほど「誰か」を求める傾向がありますが、先行きが見えない時代に流行るのは、いつも結婚ビジネス。コロナ禍の異常な生活が「いつまで続くのか」という不安は結婚願望を促進しますが、結婚とは人生の大きな節目です。

その「大きな決断」をコロナ禍というタイミングでおこなったがために、心身ともに深刻なダメージを負い、奈落の底に落ちたのは、今回の相談者・近藤拓也さん(33歳、仮名。介護職)です。

拓也さんいわく、コロナ感染を恐れた高齢者の家族がデイサービスの利用を敬遠。利用者数が前年比で8割も減少した月もあったといいます。デイサービスで働く拓也さんの基本給は18万円のままですが、いつも定時で退勤するため残業代(3万円)がゼロになり、苦しい生活を送っているのが現状です。

もしも、まとまった収入を稼いでいる女性と結婚できれば、家賃や生活費は折半だし、相手の収入にも頼れるため生活はだいぶ楽になるでしょう。そんな共働きを前提にした軽い気持ちで「婚活」を始めたのですが、その「軽い気持ち」がそもそもの間違いでした。

拓也さんが私宛にLINEを送ってきたのですが、私へLINEを送る際、「彼女に脅されて困っています」と、怯えるような様子でした。拓也さんに何があったのでしょうか?

拓也さんは昨年の4月中旬、婚活アプリに登録。具体的には、住所地や出身地、年収、業種、趣味、そして好みのタイプなどを登録。「コロナだから、直接は会えないんじゃ…」と最初は二の足を踏んでいた拓也さん。

そんな緊急事態宣言下の外出自粛中に登場したのが「リモート婚活」。これは男1人、女1人をオンラインで結び、画面上に相手の顔が表示され、スピーカーから相手の声が流れるという仕組み。だから合コンが苦手な拓也さんも安心して利用できたとのこと。今までの婚活アプリは文字が中心でしたが、リモート婚活は顔を見て、声を聞き、身振り手振りを交えることができるのが大きいです。相手との距離を縮め、信頼を得て、「直接会えたらいいな」と思わせる仕組みです。

拓也さんが知り合ったのは高橋摩耶さん(32歳、仮名。会社員)。画面越しの容姿はシルクのカーディガンに白のブラウス、黒いロングヘアー。とても清楚な印象だったと言います。さらに2人はどちらも犬派。「ゴールデンレトリバーより柴犬が好き」という趣味も一致しています。さらに彼女は「手料理を作ってあげたいなぁ」と甘えてくるのです。本気で結婚を考えている拓也さんにとって、相手が「遊び目的」では困ります。「将来のことはどう考えてる?」と尋ねると、彼女は「結婚はなるべく早い方がいいよ」と返してきたのでひと安心。「誕生日はいつかな? 一緒にお祝いしたいね」と誘うと、彼女の誕生日はちょうど月末だと言うのです。そして拓也さんは彼女とINEのIDを交換し、直接会う約束を取り付けました。

そして3回目のデート、拓也さんは「一緒に過ごそう」という言葉で誘ってホテルへ。彼女も首を縦に振ってくれました。

ところで、結婚する前の男女が肉体関係を結ぶことを「婚前交渉」といいます。一部には婚前交渉を嫌がる女性もいるので、男性は慎重に行動しなければなりませんが、拓也さんはどうだったのでしょうか?

密室に2人きりで入るのだから当然、彼女はそのつもりだろう。拓也さんはそう思っていました。拓也さんはいちいち「いい?」「平気?」「大丈夫?」と投げかけて彼女の反応を確認したりせず、また彼女も露骨に抵抗しなかったので、彼女がOKしているという前提で何も気にせずにコトを進めたのです。こうして2人は夜通しカラダを重ねたのですが、問題は翌日以降でした。

例えば、休日にホテルをデイユースで予約し、部屋で一緒に楽しんでいたときのこと。彼女はカバンから拓也さんのスマホを盗み出したようなのです。彼女は拓也さんの慌てる様子を「高みの見物」。その途中で、狼狽ぶりに飽きると「落ちてたよ」とスマホを返してくれたのですが、仕舞いには「やっぱり私がいなきゃダメなんでしょ!」とドヤ顔で言い放つ始末で、拓也さんは深いため息をついたそうです。

一方、平日はどうでしょうか? 彼女さんからひっきりなしにLINEが届くのですが、拓也さんは勤務中で「既読」にするのが精一杯。返事をせずにいると、彼女から「そんなんじゃ続かないよ!」と催促されるほど。テレビドラマなどで使われる「私と仕事、どっちが大事なの!」という常套句がありますが、拓也さんはまさか自分がそのフレーズで悩まされる日が来るなんて思いもしませんでした。カラダを許したことで拓也さんを我がモノにしたことで、気が緩んだのでしょうか。彼女の応対が一変し始めたのです。

挙句の果てには「私はレイプされたの!OKしていないんだから。警察に通報するわよ!!」と脅してきたのです。拓也さんに思わぬ落とし穴が待っていました。

「そもそもリモート婚活で知り合ったので、『男女の仲』だと思い込んでいました」

拓也さんはそう言いますが、レイプが成立するのは他人同士の場合です。恋人同士なら問題ありません。しかし、シャイな拓也さんは「好きです。付き合おう」と切り出したことはないのです。彼女が「交際はしていない」と翻意してきたら困ります。

そして「ホテルに行くことに同意した=性交渉に同意した」というのはあくまで拓也さんの目線です。もし彼女が「ホテルに行くことに同意したけれど、性交渉には同意していない」と言い出したら厄介です。

一般論として、もしカップルの行き先がラブホテルなら、性交渉ありきの密室なので「ラブホテルに行くことに同意したのに性交渉に及ぶつもりはなかった」と言うのは無理があります。その場合は拓也さんの意見に軍配が上がるでしょうが、残念ながら今回の行き先はシティホテル。必ずしも性交渉をだけをする部屋ではないので、ホテルに行く同意=性交渉をする同意」と結びつけるのは難しいのです。

とはいえ、拓也さんは腕力にものを言わせて、彼女をてごめにしたわけではありません。しかし、彼女が抵抗できるほどの力だったかどうか分かるのは彼女自身だけ。「怖くて何もできなかった」と口にした場合、どうなるでしょうか? 抵抗できない女性に対して、力ずくで押さえつけて肉体関係を迫ったことにされても不思議はありません。「彼女が露骨に嫌がれば、無理強いするつもりはなかったんです」と、拓也さんは弱った顔で言います。

しかし、彼女は本気で拓也さんを強姦魔に仕立てたいわけではなく、望んでいるのは交際の継続、そして結婚でしょう。そこで私は「彼女は近藤さんの気持ちを知りたいのでしょうが、ここまでこじれると何を言っても無駄でしょう」と助言しました。拓也さんの「不幸中の幸い」は、自宅や職場の住所を知られていないことです。拓也さんは散らかっている部屋を見られたくない一心で、彼女を自宅に上げませんでした。

もし、彼女が拓也さんの住所を知っていた場合、直接訪問したり、手紙を送ったり、裁判所に調停を申し立てたりする危険性があります。しかし、彼女が知っているのは拓也さんのLINEだけ。携帯番号やメールアドレスはもちろん、自宅の住所や勤務先の会社名を教えていません。私が「心を鬼にしてブロックしてみては?」と提案すると、拓也さんはスマホでLINEを開き、私の目の前で彼女のアカウントに「ブロック」ボタンを押したのです。

残念ながら、不特定多数の男女が集まる場にはストーカー気質の人間が混在しています。それは婚活アプリも例外ではありません。拓也さんの脇の甘さが招いた結果ですが、このような粘着質の人と結婚しても上手くいかないことは目に見えています。早いタイミングで「おかしい」と気付き、安易に妥協せず、彼女と別れたのは、今となってみれば正解だったのでしょう。

私の相談者(結婚期間0~3年で離婚した20~30代の男女)に対して、「はじめから問題がある人だった=性悪説」「結婚生活のなかでおかしくなった=性善説」のどちらに該当するかを聞き取りしたところ、前者は73%、後者は27%でした。 

「性善説」の場合、結婚期間の「途中で」、少しずつ2人の足並みがそろわなくなるのですが、どんな相手でも一定の確率で起こり得ることです。そのため相手選びの段階、婚活の最中に将来の危険を察知することはとても難しいのです。

一方で「性悪説」の場合、最初から問題を抱えた相手です。そのため、間違った相手を選ばないよう予備知識を得ることが大事です。

image by:Shutterstock.com

露木幸彦この著者の記事一覧

行政書士の露木幸彦が夫婦の離婚、不倫、未婚出産、婚活の法律、交渉術、会話技術を解説明石家さんまさん司会のホンマでっかTV,ブラマヨさん司会の世界のこわ~い女たち、小倉さん司会のとくダネ、バナナマン設楽さん司会のノンストップなどに登場。11冊の著書を持ち累計部数は
5万部を突破。日本経済新聞、朝日新聞電子版では連載を担当。開業から16年で相談2万件の実績。

注)離婚手続に関する一般的説明や経済的観点から必要な離婚条件に算定を超え、個別事情を踏まえた離婚手続や離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

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【著者】 露木幸彦 【発行周期】 ほぼ 月刊

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