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明確なルールなし。「ふわっとしたコロナ対応」に翻弄される日本国民の不幸

高齢者へのワクチン接種を進めるにあたり、多くの自治体が公平性を重視してかネットや電話での先着順予約を選択したために、さまざまなトラブルが起こりました。厳格なルールがないために、役所に押しかける高齢者が出るのも当然と呆れるのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんです。例えばワクチン接種なら、事前に誕生月の奇数偶数で予約日や接種日を振り分けるだけでも、混乱はある程度軽減されたはずと、「何をやっても下手ばかり打っている」この1年のコロナ対策に改めて嘆息しています。

『のようなもの』のこと

コロナが日本中に蔓延してからというもの、1年以上に亘り何かと言えば「若者」と呼ばれる人たちばかりが悪者扱いされて来たように思う。いくら何でもこれは不当であろう。確かに数(=新規感染者数)だけ見ればそうである。しかしそれは所謂「若者」の方がより広い範囲をより活発に行動しなければならないからであって仕様のないことでもある。

学生なら学校(勉学の場)で誰かには会うし、20代30代40代なら会社(仕事の場)で誰かには会うものである。会ったからには「付き合い」を無視する訳にもいかない。人の世に生きている以上、何人とも関わらずにいられるものではない。一方、高齢者の場合は学校も会社もないから行動範囲もぐっと狭くなるし、その分交友関係もシンプルになる。数が少ないのはそのためだ。そういったことを一切無視して「ただただ若者が悪い」はいくら何でも不公平というものである。

つまり、より正確に、より公平に言うなら、高齢者の内にも学生や20代30代40代と同じ程度には不心得者は存在していて、それが目立たないのはたまたま前述の理由等があるからで別段高齢者に限り人格者が多いということではないのである。よくよく考えてみれば、20代が年を取れば30代になり、同様にして30代が40代に、40代が50代になって行く訳だから、とどのつまりそれが高齢者になったところで同世代における善人悪人の割合はそうは変わらないのである。とすれば、何かきっかけさえあれば高齢者も不埒な行動を取り得るということである。あまり見たくはないがそういうことになる。

ワクチンの投入がそれである。日本全国で大パニックではないか。もちろん当事者である高齢者にも言い分はあるであろう。実際、具体的には何の指示も指導も命令もない。ネットが分かる人はサイトに、そうでない人は電話受付に、そういうのが苦手でも動ける人なら直接現場に殺到するのは当たり前のことである。それでも、そういう状況であっても、きちんと弁えた人はどっしりと落ち着いているものである。我先にと何かに群がる時の人間ほど見苦しいものはない、と知っているからだ。どうせ行かねばならぬ道ならできれば自分もこんなふうな老人になりたいものである。

それにしても、この1年間の若者の振る舞いと言い、今回のワクチンの高齢者の行いと言い、平常時ならぬ緊急時においてはそれなりに厳格なルールが必要であるということの証左とは言えないか。「絶対に・・・はやってはいけない」と「不要不急の・・・はなるべく控えてください」とではそこに込められた言表主体の覚悟が全く違う。どうして前者のように強くはっきり言えぬのか。

ワクチンの件も、例えば接種日を奇数日と偶数日に分け、それに合わせて接種希望者も奇数月生まれは奇数日に偶数月生まれは偶数日に分けて接種を受けるというふうにはできないのだろうか。それでも該当人数が多過ぎるようなら奇数日生まれ・偶数日生まれ、さらには西暦奇数年生まれ・偶数年生まれ、といった条件で絞り込んで行けば良い。

こういった類の、誰でもはっきりと分かるようなルールもないままに、万事が万事ふわっとした「のようなもの」ばかりで来られるもんだから、メッセージの受け手であるこちらとしても「で、結局どうなんだ?」となるのは無理もないことなのである。その結果が、世代に関係なく規範的なあり方からもれるような行動へとつながるのである。

それにしても、対コロナのこの1年、何をやっても下手ばかり打っていると感じるのは自分だけだろうか。嘆息するばかりである。

image by: Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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