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「ワクチン打った?」中国在住邦人が現地で突きつけられる踏み絵

世界に先駆け新型コロナウイルスの制圧にほぼ成功した中国ですが、ここに来て広東省などで感染者が確認され、29日には広東市の中央部にロックダウンが導入される事態となっています。今回の無料メルマガ『出たっきり邦人【アジア編】』では、半年以上ぶりに感染者が出たという同省深セン市在住の日本人著者Mochiさんが、現地の様子を詳細にレポート。そこで行われていたのは、日本とは比較にならないほど徹底した感染拡散防止策でした。

『華南の風』中国・深セン【9】コロナ再び

1台1台の携帯電話の移動履歴を把握するというこの国ならではの管理をしている中国。プライバシーのプの字も無い徹底ぶりもあって半年以上も市中感染が出ていなかった深センでとうとう感染者が出ました。

東部にあるコンテナターミナルでの作業者です。恐らく外国船から下ろした積荷かなにかについていたのでしょう。一人が見つかったので関係者全員PCR検査となったのですが、そこで3人の同僚が陽性となりました。報道ではウィルス株が99.9%同じということです。今度は彼らの移動履歴と住んでいるマンションが特定され、ロックダウン。入ることは出来ても出ることは出来ません。その棟の住人は全員PCR検査ということになりました。

その結果はまだ出ていませんが、うちのスタッフの近所だそうで、いつ他の棟も同じ状態になるかわからないため、PCは必ず毎日持ち帰り、在宅ワークが出来るよう備えることにしました。

オフィス、レストランではマスクを外す生活に慣れ切っていたので、また去年の2月状態になってしまうのかとうんざりしています。これまではワクチンを打つ人はそれほど多くなく、オフィスでも取引先でも半々という感じでしたが、今朝通勤途中にある診療所では200mくらいのワクチン接種行列が出来ていました。この辺はすごく分かりやすい(笑)。

私は取引先訪問のたびに「打ったか?」、「打つつもりある?」と聞かれます。一つは「あなたも副作用が心配?」という同意を求めている場合と「あなたは中国のワクチンを信用してる?」という踏み絵の場合の2パターンで、後者の場合は答え方によっては相手が気を悪くするので「アレルギー体質だから心配なんです」と答えるようにしています。非中国語のニュースで中国製ワクチンの効果があまり高くないと知っている私はできれば打たずに引っ張ってどこかでファイザーのワクチンを打ちたいと思っているのです。

深センで感染者が出たのと同じタイミングで隣の広州でも感染者が出ました。働いてもいない、行動範囲も狭いであろう76歳の女性が感染したことに驚きと不安の声が上がっており、翌日に隣の区に住む17歳の高校生が陽性発覚。どこまで広がるか広州の取引先も不安な様子。こんな状況ですから向こう2週間のアポイントがきれいさっぱりキャンセルになりました。

広州で感染者が出たことでこんなことがありました。うちのスタッフのご両親が孫の顔を見に先週福建省から広州に来ていたのですが、一昨日突然保健所から携帯に電話があり、「先週広州に行かれましたよね?体調はどうですか?」と聞かれました。「特に問題はない」と答えたのですが「広州で感染者が出たのはご存じですか?PCR検査受けましたか?」と聞かれ、「そうですね。明日にでも受けに行きます」と答えたそうです。すると「大丈夫です。ご自宅から動かないでください。迎えに行きます」と。そして十数分後に救急車が自宅前に止まりそのまま病院へ連れて行かれて検査を受けたそうです。陰性だったので「しばらくはあちこち出歩かないように」と言われ帰宅したとのこと。

こんなことを人口14億人の中国でやっているとは…。

中国の新幹線は身分証が無いと買えないので誰がいつどこ行きに乗ったかがすぐにトレースできるのです。これは犯罪解決や防止にすごく役立っているそうですが、こんなところにも効いているようです。

そしてもう一つはわが同僚。先々週に成都から広州に出張(2泊)したのですが、広州での感染者発見日から14日遡った期間内だったため、とっくの昔に成都に戻っていた彼の「移動履歴」が緑から赤に変わってしまいました。最近は緩くなっていますが、空港や病院、役所などの公的機関は住所に紐づいている「健康コード」と携帯電話の基地局のデータから表示される過去14日間の「移動履歴」の両方が緑でないと中に入れません。赤は「要検査」で黄は「検査結果待ち」です。このままでは行動が制限されてしまうので一昨日早速検査に行ったそうです。結果が陰性で本当に良かったです。工場で一人出ると生産停止、工場徹底消毒、全員PCR検査、対策実施で役所の監査で合格にならないと再操業できないので、営業的に非常に大きなダメージを受けてしまうところでした。

今回も徹底的なスクリーニングで抑え込んでくれることを期待しています。

著者/Mochi(「『華南の風』中国・深セン」連載)

image by: Maria Passer / Shutterstock.com

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【著者】 アジア6カ国の在留邦人メンバー 【発行周期】 週刊

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