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五輪関係者が決して忘れてはならない、仕事を失った人々の“気持ち”

政府の感染症対策分科会の尾身茂会長が、東京オリンピックの強行開催に苦言を呈しても馬耳東風の政府と東京都、組織委員会。こういった状況に接し、政府や自治体により営業の自由を奪われている飲食業の経営者や従事者を慮るのは、メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんです。山崎さんは、「五輪のせい」で仕事や財産を失ったと思っている人たちがいることを強く訴え、今後反対派の数が減ったとしてもそれは期日が迫ることによる「あきらめ」の気持ちでしかないと強調しています。

気持ちのこと

コロナ下における経済の状況は所謂「ワニの口」型らしい。つまり概況として、各企業の業績は開いたワニの上あごのように右肩上がりとなるか、下あごのように右肩下がりとなるかの両極端という訳である。

しかし何より深刻なのはその下あごからもこぼれ落ちてしまっているような中小零細企業や個人事業主の状況である。中でも特に、飲食関係に従事する人たちの苦労はただごとではない。店をやること自体に制限が出されている以上、経営者としてはどうしようもないからだ。経営者の努力や商才に関係なく、国あるいは都道府県によって商売の機会を奪われたがために経営が行き詰っているということになれば、当然これは補償の対象となる筈である。この場合の補償とは、もちろん十分とまではいかないだろうが、少なくともその店を維持するのに必要最低限の額はなければ意味はない。

ふと想像してみるのである。自分がそういう(やるにやれず、引くに引けず、という)立場だったらどう感じるだろうか、と。まず先立つのは「自分たちは一体何のために税金を納めて来たのか」という国に対する不信感である。次いで現状を見て思うのは「オリンピックをやりたいがために自分たちの商売が制限されているのではないか」ということである。

つまり何をどうすればいいのか明示されないままその業種全体が吟味されることもなく総くくりでダメという訳だから目的は飲食業界自体を守ることではない。ならば飲食業界を犠牲にしてでも感染状況を一時的に改善し何とかオリンピックだけは開催しようという腹積もりではないか…こんなふうに考えても無理からぬことである。

一部の人だけに塗炭の苦しみを押し付けてまで開くオリンピックに意味はない。少なくとも自分のように心の狭い人間はとても「ウェルカム!」なんて笑顔では言えない。そもそも国民の大多数に支持されてこそ、その意義を持ち得る祭典ではないか。現時点でなお半数かそれ以上の人が中止か延期すべきと考えているのである。ごり押ししてまでやることではない。

一応釘を刺してはおくが、今後反対意見は表見的には少数派になるかもしれない。が、それは開催までの日数が少なくなって行くために生じる「あきらめ」であり、決して賛成などではない。

仕事も失い、財産も失った人がどういう気持ちでオリンピックを見ることになるのか、ちょっと想像するだけでも胸が痛い。何らかの決定権を有するオリンピック関係者には、こういう気持ちや痛みが確かに存在するということを片時も忘れないでいてもらいたい。

image by:StreetVJ / Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

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