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中国の原発で放射性物質漏れ事故「仏企業が米政府にSOS」の深刻度

出力世界最大とも言われる中国広東省の台山原子力発電所1号機で今、異変が起きているようです。今回のメルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』ではジャーナリストの内田誠さんが、台山原発の事故を伝える東京新聞の記事を紹介するとともに、同新聞が事故を起こした「欧州加圧水型炉」についてこれまで取り上げた記事をチェック。その上で、今回の「不具合」を訴え出たのが台山原発の運転協力会社であるフランスの企業であることの重みを強調しています。ネット上では、この事故で自殺者が出ている可能性なども指摘されていますが、少しづつ事故の全容が明らかになりつつあります。

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中国の原発で事故?

きょうは《東京》から。

まだ扱いは小さいですが、中国の台山原子力発電所の事故について報じられています。世界初の「欧州加圧水型炉」でしたが、燃料棒の破損を中国当局も認めたとのことです。

そこで、「欧州加圧水型炉 OR EPR」で《東京》のデータベース内を検索すると、20件ヒットしたのですが、原発と関係のある記事はそのうちの5件でした。これらを対象にします。

【フォーカス・イン】

まずは今朝の《東京》3面記事の見出しから。

中国「燃料棒が破損」
台山原発 放射能漏れは否定

以下、記事の概要。中国広東省の台山原発1号機(出力175万キロワットで世界最大か)で放射性希ガスが放出された問題で、中国の生態環境省は、燃料棒の一部破損により、冷却材中の放射性物質の濃度が上昇したと発表。

同省によれば、破損したのは約6万本の燃料棒のうち5本前後で、許容値の0.25%以下なので想定の範囲内であり、周辺地域の放射線量に異常も見られないという。

一部報道では「中国当局が原発の運転停止を避けるため、放射線量の上限値を調整した疑いがある」とされているが、同省は「事実ではない」と否定。

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【サーチ&リサーチ】

* 最初は、2017年3月の「こちら特報部」。

2017年3月7日付
タイトル「こちら特報部 経営崖っぷち 仏原発アレバ(上) 累積赤字1兆円超」の記事中、次の記述。

「仏西部で07年から建設が始まった『フランス電力(EDF)』のフラマンビル原発3号機。電源を喪失しても自動的に原子炉が停止する最新型の「欧州加圧水型原子炉(EPR)」の工事をアレバが手がけてきた。この工事が遅れ、経費の増加がアレバにのしかかる」と。

* 続いてフランス政府のエネルギー政策に関する記事。

2018年11月28日付
タイトル「原発依存率50%に引き下げ 仏、10年先送り 2035年へ」との記事中、次の記述。

「マクロン氏は『私は脱原発で選ばれたわけではなく、50%に減らすことを約束して選ばれた」と明言し、25年の実現は『現実的ではなく不可能だ』と述べた。原発は『発電コストが安く、二酸化炭素が発生しない。有望な道筋だ』とも主張。電源を喪失しても自動的に原子炉が停止する最新型の『欧州加圧水型原子炉(EPR)』計画は、『将来のための選択肢』として堅持する方針を示した」

* 「安全」がウリのEPR。世界初の営業運転はフランスではなく、中国で…。

2018年12月15日付
タイトル「中国、新型炉が営業運転」。

「中国政府などは14日、広東省に建設した台山原発で、新型の『欧州加圧水型炉(EPR)」を採用した1号機が、実質的に営業運転を始めたと発表した。EPRの営業運転は世界初だという。フランスの技術を採用し、中仏の合弁企業が建設した」と。

2021年3月12日付
タイトル「東日本大震災10年 老朽原発 危うい未来」の記事中、フランスの状況に関する次の記述。

「米国に次ぐ原発大国フランスは、世界最多70%超の電源依存率を2035年までに50%へ減らす政策決定をしたが、この10年で廃炉になったのは2基のみ。残る56基の半数超が今後5年以内に運転開始から40年を迎える老朽炉だ。全基を運営する政府系のフランス電力(EDF)は、老朽炉を次世代型の欧州加圧水型炉(EPR)に置き換える構想を描いていた。だが、07年に始まった第1弾のフラマンビル原発3号機の建設は鋼材の品質問題などで長期化。総工費は124億ユーロ(約1兆5,850億円)と約4倍に膨らみ、稼働予定も12年から23年に延期された。老朽炉の運転延長に頼らざるを得なくなり、規制当局はあいまいだった40年超の運転許可条件を策定。先月から運用を始めた。この安全対策にも費用がかさむため、第2弾以降の建設計画は白紙化している」と。

* そして今回の“事故”の一報。

2021年6月15日付
タイトル「中国・広東の原発 放射性物質漏れか 仏メーカー訴え、米で報道」の記事中、次の記述。

「米CNNテレビは14日、中国広東省台山市の台山原発から放射性物質漏れが起き、周辺地域の放射線量が高まっていると、建設と運転に協力するフランスの原子炉製造会社『フラマトム』が訴えていると報じた。問題解決のためにバイデン米政権に技術協力を求めているという」。

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●uttiiの眼

今日の記事で、原発の運転停止を避けるために中国当局が放射線量の上限値を調整した疑いがあるとの報道を中国当局が否定したとあるのは、このCNNの放送のことだろう。中身はCNNが報じた云々ではなく、「建設と運転に協力するフランスの原子炉製造会社『フラマトム』」が訴えたということで、遙かに重みがある。もしかしたら会社の存亡に関わるようなことなのに、フラマトムが公表せざるを得なかったのだとしたら、実際にはどんなことが起きているのか。非常に心配だ。

確かに、福島で事故を起こしたものと比べれば、「欧州加圧水型炉(EPR)」は“安全”なのかもしれない。しかし、この「安全」は程度問題に過ぎない。原子炉がどんな形をしていようが、核による発電であれば、何万年も人が近付けないような高レベルの放射性廃棄物を必ず量産し続けるのであり、絶対的な危険が日々増大し続けている。脱原発以外に、人類が生き続ける道はない。

【あとがき】

以上、いかがでしたでしょうか。

台山原発、ちょっと嫌な感じですね。中国が情報を隠蔽しているのではないかという具体的な疑いが、今後強くなっていくような気がします。

image by: Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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